3 / 10
3.
しおりを挟む
フリージアはずっとここにいる。
何も覚えていない。赤ちゃんのときから、今まで、お母さん、と呼んでる人に面倒を見てもらってきた。だが、彼女が実の母というわけではない。
娼館で働くことはあまりいいことではないのはわかる。けれど、フリージアは他に生き方を知らない。
ナティは自分とはちがう生き方ができるように思えて、いろいろ教えていこうと思っていた。
「まずは見た目ね」
フリージアは、ナティを自分の前に座らせてその容姿をじっくり観察した。
「ちょっと立って」
次は立ってる姿をしっかり目に収めた。
ナティは穴が開くほど見つめられて、恥ずかしかった。
フリージアは見れば見るほど美しい人だ。
あまりに差があって、比べる対象にすらならない。
「そうねぇ。お肌のお手入れからしましょう。食べ物や飲み物も気をつけて、
髪も良くお手入れしましょう」
そう言われてから1週間。特に変化はないように思ったが、その間もフリージアの特訓は続いていた。
歩き方、立ち方、振り向き方、ともかくすべての動きをフリージアは矯正していく。ナティは泣きながら、必死にフリージアについていった。
「そうよ。生まれ持った顔は変えられない。でも、所作はちがう。美しい動きは本物の美しさにつながるわ」
ナティはフリージアにすべてを預け、信じ、言われる通りになんとか体を動かし続けた。
2週間目、ナティは鏡に映る醜い自分の顔をじっと見つめた。
フリージアに笑顔と泣き顔を練習してみなさいと言われている。
笑顔は醜さをカバーできるか、
泣き顔は醜さを増やさないようにできるか、特訓だ。
どちらも惨敗だった。
フリージアはいきなりはできないのよ、と優しく頭を撫でてくれた。
ナティは挫けなかった。
美しい所作を必死に心がけた。
「あら、いい感じね。ちゃんとしたお嬢様みたいよ」
ナティは最初はお嬢様だったが、このような教育は受けていなかった。
だいぶ綺麗に動けるようになると、
フリージアは次はねぇ、と優しい口調で言い始めた。
「何語から勉強しようかしら。やっぱり大陸語かなぁ。最低5カ国語。あとは帳簿とか事務的なこともね」
ナティは驚いてしばし固まった。
何も覚えていない。赤ちゃんのときから、今まで、お母さん、と呼んでる人に面倒を見てもらってきた。だが、彼女が実の母というわけではない。
娼館で働くことはあまりいいことではないのはわかる。けれど、フリージアは他に生き方を知らない。
ナティは自分とはちがう生き方ができるように思えて、いろいろ教えていこうと思っていた。
「まずは見た目ね」
フリージアは、ナティを自分の前に座らせてその容姿をじっくり観察した。
「ちょっと立って」
次は立ってる姿をしっかり目に収めた。
ナティは穴が開くほど見つめられて、恥ずかしかった。
フリージアは見れば見るほど美しい人だ。
あまりに差があって、比べる対象にすらならない。
「そうねぇ。お肌のお手入れからしましょう。食べ物や飲み物も気をつけて、
髪も良くお手入れしましょう」
そう言われてから1週間。特に変化はないように思ったが、その間もフリージアの特訓は続いていた。
歩き方、立ち方、振り向き方、ともかくすべての動きをフリージアは矯正していく。ナティは泣きながら、必死にフリージアについていった。
「そうよ。生まれ持った顔は変えられない。でも、所作はちがう。美しい動きは本物の美しさにつながるわ」
ナティはフリージアにすべてを預け、信じ、言われる通りになんとか体を動かし続けた。
2週間目、ナティは鏡に映る醜い自分の顔をじっと見つめた。
フリージアに笑顔と泣き顔を練習してみなさいと言われている。
笑顔は醜さをカバーできるか、
泣き顔は醜さを増やさないようにできるか、特訓だ。
どちらも惨敗だった。
フリージアはいきなりはできないのよ、と優しく頭を撫でてくれた。
ナティは挫けなかった。
美しい所作を必死に心がけた。
「あら、いい感じね。ちゃんとしたお嬢様みたいよ」
ナティは最初はお嬢様だったが、このような教育は受けていなかった。
だいぶ綺麗に動けるようになると、
フリージアは次はねぇ、と優しい口調で言い始めた。
「何語から勉強しようかしら。やっぱり大陸語かなぁ。最低5カ国語。あとは帳簿とか事務的なこともね」
ナティは驚いてしばし固まった。
20
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
【完結】彼女の名前は誰も知らない
ここ
ファンタジー
諜報活動をしている猫の獣人、No.115。推定年齢は8歳。任務についた公爵邸で、侍女見習いに化ける。公爵邸は失った娘によく似た侍女見習いに驚く。No.115はそれも利用して、命がけの任務遂行を目指す。
だが、失くした娘に似たNo.115に、公爵一家は優しくて…
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
悪役令嬢のわたしが婚約破棄されるのはしかたないことだと思うので、べつに復讐したりしませんが、どうも向こうがかってに破滅してしまったようです。
草部昴流
ファンタジー
公爵令嬢モニカは、たくさんの人々が集まった広間で、婚約者である王子から婚約破棄を宣言された。王子はその場で次々と捏造された彼女の「罪状」を読み上げていく。どうやら、その背後には異世界からやって来た少女の策謀があるらしい。モニカはここで彼らに復讐してやることもできたのだが――あえてそうはしなかった。なぜなら、彼女は誇り高い悪役令嬢なのだから。しかし、王子たちは自分たちでかってに破滅していったようで? 悪役令嬢の美しいあり方を問い直す、ざまぁネタの新境地!!!
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
〈完結〉髪を切りたいと言ったらキレられた〜裏切りの婚約破棄は滅亡の合図です〜
詩海猫
ファンタジー
タイトル通り、思いつき短編。
*最近プロットを立てて書き始めても続かないことが多くテンションが保てないためリハビリ作品、設定も思いつきのままです*
他者視点や国のその後等需要があるようだったら書きます。
やはり婚約破棄ですか…あら?ヒロインはどこかしら?
桜梅花 空木
ファンタジー
「アリソン嬢、婚約破棄をしていただけませんか?」
やはり避けられなかった。頑張ったのですがね…。
婚姻発表をする予定だった社交会での婚約破棄。所詮私は悪役令嬢。目の前にいるであろう第2王子にせめて笑顔で挨拶しようと顔を上げる。
あら?王子様に騎士様など攻略メンバーは勢揃い…。けどヒロインが見当たらないわ……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる