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第二話

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注意。
アビゼルは女泣かせなシーンあります。
読みたくない方は1番目のまとまりをすべて飛ばしてください。


アビゼル・クォーツの噂は碌なもんじゃない。粗野で横暴で魔力が強くて、女に不足したことのない、いけすかない男。
「ねぇ、アビゼル、また会いたい」
宿屋のベッドの上で、男を誘う肢体をした赤い唇が、ささやく。
「一夜限りだと言っただろう。俺は面倒なことが嫌いなんでね」
アビゼルは、女に取り合わず、さっさと宿から出た。
少しずつ暖かくなって、春はもうすぐだと蕾をつけた枝は主張しているが、アビゼルは気づかない。その木の下を足早に通り過ぎて、塔を目指していた。





アビゼルが教え始めて1か月。
ファリナの魔力コントロールはかなり進んでいた。
「ミー、こうしたら、どう?」
「いいな。それから、こっちにも集められるか?」
「できそう」
アビゼルが塔の部屋に戻ると弟子は熱心に魔力を練っていた。
今は魔力で編んだ透明で太い糸を右手から左手へ伸ばしている。それだけではない。
ミーの肩にも同じような形の細い糸が編まれている。マフラーのように巻きついている。
魔力を体の外に出してコントロールの練習をするなんて聞いたことがない。
しかし、ミーによると、そういうタイプの魔法使いもいるそうだ。

「アビゼル、またくだらないことに時間を使ってきたな」
ミーが言うと、
「別にどうだっていいだろう」
アビゼルが怒った。
ファリナはふたりの言い合いに困惑した。原因がわからない。
「どうだってよくない。お前はファリナの師匠だ。ちゃんとしてくれ」
「はー。面倒だな。わかったよ」
ミーは勝ち誇った顔をして、ファリナに告げる。
「アビゼルはファリナ第一だって」
ファリナは真っ赤になった。
「ファリナはアビゼルが好きなのか?」
ミーが言う。
「そんなわけないだろ。ファリナは10歳で、俺は21歳なんだ」

ミーは、それくらいの年の差なら、成長したら、全然問題ないなあと思った。
アビゼルはただただ面倒だと思っていた。ファリナはアビゼルは21歳なんだーと新情報に喜んでいた。
今のところ、ファリナは師匠を頼りにして、普通に好きで、魔法が上手くなりたいだけだ。
アビゼルは頭を切り替えて、この弟子をしっかり育ててから、また怠惰な日常に戻ればいいかと考えた。
それぞれの思惑は異なる。誰が描いた未来になるのか、わかるには時間が必要だ。


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