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第四話
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「あの地域の土はすごいんだ。栄養分がたっぷりあって」
第二王子マークはキラキラ輝く目をシュゼットに向けた。シュゼットも得意な話題に、話は盛り上がる一方だ。
まったく色気はないが。
「こんなに話せたのはシュゼットが初めてだよ」
第二王子は家庭教師を迎えても迎えても、教師の学力が足りなくてクビにしていた。
誰かと学問の話ができるなんて、第二王子は考えたことがなかった。
「シュゼット、君は素晴らしいね」
マークの瞳はキラキラと輝いていた。
王子様に輝く笑顔でそう言われると、シュゼットだって悪い気はしない。
話はどんどん盛り上がる。
「シュゼットと一緒なら、もっともっと高みに行ける気がするよ。弟じゃなくて僕を選んでくれたら、うれしいな」
シュゼットは簡単には頷けなかった。
第三王子と会ってみてからの話だろう。
「弟は体を鍛えることを重視してるんだ。シュゼットも、そういうことも重視してるよね。なんだか僕が不利な気がする」
シュゼットはどちらかを選ぶという現状をよく理解できていない。
誰もが羨む立場にいるのだろうという理解はできた。何にせよ、王家には逆らえない。
第三王子とのお茶会に備えなくてはならない。
「よく来たな。ここに座れ」
第三王子は、顔が綺麗で、身体は細いが筋肉をしっかりとつけている。噂通りの美丈夫だった。
「あ」
「挨拶はいい。もっとくだけた普段のシュゼット嬢のことが知りたい」
「普段の私ですか?」
そう言われても、シュゼットは何を話せばいいのかわからない。
「シュゼットと呼んでもいいか?」
「もちろんです」
「俺のことはトリーでいい」
第三王子はトリスタンという。トリーと呼べるのはほんの数人に与えられた栄誉だ。
「シュゼットの好きな菓子はなんだ?」
トリスタン王子が話題にしたのは、お菓子の話だ。これなら、シュゼットも困ることはない。意外にも甘党な王子との会話は滑らかだった。
「菓子ばかり食べてるわけではないぞ」
よく鍛えられた体の王子にそう言われて、
シュゼットは納得した。
お菓子好きではあるのだろうが、今はシュゼットに気を使って話題を合わせてくれたのだろう。優しい方なのだな、とシュゼットは思った。
第二王子マークはキラキラ輝く目をシュゼットに向けた。シュゼットも得意な話題に、話は盛り上がる一方だ。
まったく色気はないが。
「こんなに話せたのはシュゼットが初めてだよ」
第二王子は家庭教師を迎えても迎えても、教師の学力が足りなくてクビにしていた。
誰かと学問の話ができるなんて、第二王子は考えたことがなかった。
「シュゼット、君は素晴らしいね」
マークの瞳はキラキラと輝いていた。
王子様に輝く笑顔でそう言われると、シュゼットだって悪い気はしない。
話はどんどん盛り上がる。
「シュゼットと一緒なら、もっともっと高みに行ける気がするよ。弟じゃなくて僕を選んでくれたら、うれしいな」
シュゼットは簡単には頷けなかった。
第三王子と会ってみてからの話だろう。
「弟は体を鍛えることを重視してるんだ。シュゼットも、そういうことも重視してるよね。なんだか僕が不利な気がする」
シュゼットはどちらかを選ぶという現状をよく理解できていない。
誰もが羨む立場にいるのだろうという理解はできた。何にせよ、王家には逆らえない。
第三王子とのお茶会に備えなくてはならない。
「よく来たな。ここに座れ」
第三王子は、顔が綺麗で、身体は細いが筋肉をしっかりとつけている。噂通りの美丈夫だった。
「あ」
「挨拶はいい。もっとくだけた普段のシュゼット嬢のことが知りたい」
「普段の私ですか?」
そう言われても、シュゼットは何を話せばいいのかわからない。
「シュゼットと呼んでもいいか?」
「もちろんです」
「俺のことはトリーでいい」
第三王子はトリスタンという。トリーと呼べるのはほんの数人に与えられた栄誉だ。
「シュゼットの好きな菓子はなんだ?」
トリスタン王子が話題にしたのは、お菓子の話だ。これなら、シュゼットも困ることはない。意外にも甘党な王子との会話は滑らかだった。
「菓子ばかり食べてるわけではないぞ」
よく鍛えられた体の王子にそう言われて、
シュゼットは納得した。
お菓子好きではあるのだろうが、今はシュゼットに気を使って話題を合わせてくれたのだろう。優しい方なのだな、とシュゼットは思った。
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