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「楽しいお茶会だったと大評判のようですね」
メディエル王太子は笑顔を見せて、アルセンヌを讃えた。
「王妃様のおかげですわ。そして、メディエル様のおかげでもありますわ」
「私は何もしていないよ」
メディエル王太子はいたずらっぽく笑った。
「おふたりがこの国の価値観を超えて、私を受け入れてくださったからです。それは並大抵のことではありません」

「正直に言うなら、アルセンヌ、私は最初不安だった。小さな頃から、黒髪黒目ふくよかな美人と結婚するのだと思っていたから」
「私も不安でした」
メディエル王太子は、アルセンヌの手を取った。
「でも、留学して、人はいろいろだと知ることができた。だが、それでも、小さな頃からの刷り込みは強かった。だが、あなたに会った」
王太子は耳まで赤くして、続けた。
「あなたは、私の世界を壊した。」
メディエル王太子の手はアルセンヌの手をぎゅっと握った。
「あなたに惹かれています」
そう言われたアルセンヌも顔が真っ赤になった。
「私もです」
緊張している声はいつものアルセンヌと少しちがって聞こえた。

「あなたとなら、タリル王国は素晴らしい国になるにちがいない」
メディエル王太子は、また笑顔になる。
王族の作った微笑みとはちがう心からの笑顔だ。アルセンヌにもそれは伝わってくる。だから、アルセンヌも心から、伝えた。
「メディエル様を支えて生きていきたい」
ふたりは強く抱きしめ合った。

そうして、心から愛し合うふたりはやがて結婚し、子どもが産まれ、王太子と王太子妃から、国王と王妃になった。
手に手を取って、国を良くしていく二人。民からの信頼も、もちろん貴族たちからの信頼も得て、メディエル王の施政は素晴らしいものになった。
時を経ても仲の良いふたりは、国策で意見が合わない時も、手をつないで中庭を散歩した。
そんなふたりを誰もが愛した。
ふたりはいつも一緒だった。

メディエル王の功績を語る後世の学者たちは必ず王妃の功績をともに語る。







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