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「見たか。我々の姫の光り輝く眩しいお姿を」
「当たり前だろう。めったにないパレードだぞ。アルセンヌ姫のお姿を拝まないでどうする?」
「我が国一の美しさ。今日も凄かったな。」
「警備が大変だったろうな。全国民が集まる勢いだから」
町を歩く二人組の男が、戦勝記念の王族のパレードの話で盛り上がっていた。
アルセンヌ姫は輝く金髪、空のような碧色の瞳。この国の中で1番美しいと、全国民に愛されていた。

「でも、姫の素晴らしさは外面だけじゃないからな」
「そりゃそうだ。お優しい方だからな」
「お前、聞いたか?姫は隣国に嫁ぐらしい」
「まあ、いつかはな。しかし、急だし、国外かあ」
残念さが滲み出た声に、この国での姫の存在がよくわかった。できれば、国内での結婚が全国民の願いだった。

「アルセンヌ、お前はタリル国の王太子メディエルに嫁いでもらう」
父王は眉間にしわを寄せて、アルセンヌに宣言した。
「本当はタリル国には行かせたくない。あそことうちは価値観がちがいすぎるからな」
だが、仕方がないのだ、国力の近い国同士。戦争を避けて友好的な関係を築きたい。それが父王の願いだ。
「私には覚悟があります。隣国の言葉も覚えました」
「アルセンヌ。助かる」

そうして、アルセンヌ姫は、隣国のメディエル王太子に嫁いだ。
隣国では黒い髪黒い瞳が美人の最低条件で、さらに太っていればより美女だと考えられていた。
アルセンヌ姫は髪を染めることを考えたが、瞳の色は変えられない。また、太ろうとたくさん食べてみたものの、少しも太らなかった。
だから、メディエル王太子から、拒絶される覚悟で、隣国にやって来た。
隣国の言葉や文字はしっかり学んできた。
文化も学び、その際に価値観のちがいを知った。

「姫様を美しく思わない殿方なんていないと思いますよ」
乳兄弟のモーラが唯一アルセンヌ付き侍女として同行した。
「モーラ、タリル国にはタリル国の考えがあるわ」
「それでも姫様と一緒にいて、落ちない男なんていませんよ。私ですら、まだドキドキしますもん。同性で長く一緒にいるのに」
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