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第二話

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ミゲルは、正直なところ、外見は90点で中身はマイナス100点だとアリサは思っている。
学園で人気がある理由がさっぱりわからない。くどくどうるさい男の何がいいのか。
ミゲルの唯一の取り柄は外見だ。
その外見にたくさんの令嬢が擦り寄ってくる。
アリサはそれを見ても嫉妬したことはない。だいたい子爵家にとって重要なのは格上の伯爵家と結びついて、商会の客層を上位貴族にまで広めることだ。
それができるなら、伯爵家に多少資金を貸したところで、困りはしない。

しかし、アリサはそろそろ限界だなと思っている。ミゲルの説教じみた言葉に疲れてしまった。1番多いのは、アリサの外見への不満なのだ。ある程度努力するにしても、そんなに大変身したりはできない。それにミゲルには最近、ずいぶん仲の良い令嬢がいる。
マーシャ・ソリアート侯爵令嬢。銀髪紫瞳の見目麗しくおっとりとした令嬢だ。
それはそれでいい。
アリサには問題ない。
婚約解消するなら、それが一番いい。
けれど、ミゲルから、その話はなかなか出てこない。

「はぁ、やっと終わった」
ミゲルが満足するまで話を聞くのは、商会で厳しい仕事相手とやりとりするより
疲れる。
「疲れたかい?無理はしないでいいんだよ」
父の優しい声に顔を向けると、最近任され始めた女性向け商品のことで、アリサが疲れたと思ったらしい。
「いえ、仕事は順調よ。来週にはだいたい決まります。でも、ミゲル様がちょっと」

「あぁ。恋人がいると聞いているよ。だから、婚約解消の申し出を待っているんだけどね。アリサもそれで構わないだろう?」
そんなにわかりやすかったかしら?
アリサは自分の気持ちが父に伝わっていたことがちょっと悔しい。ポーカーフェイスはうまいはずだったのに。
「はい。大丈夫です。お父様」
「まったく。向こうの有責にもかかわらず、まだ何も言ってこない。やはり親戚にならなくて正解だ」

父がいいと言ったから、アリサは気持ちが楽になった。ミゲルが何を企んでいても、自分には強い味方がいる。
父は、優しい人だが、長年商会で会頭を勤めているだけあって、物事へのさじ加減がうまい。
今度のことも任せていれば解決するだろう。
「すまなかったね。アリサには余計な苦労ばかりさせて」
「お父様、大丈夫です。楽しいときもありました。夜会で素敵なドレスをプレゼントされて、ダンスしたり」
婚約がだめになったアリサにはもう素敵な結婚の道はない。後妻か第二夫人か。
それでも、このまま、ミゲルと結婚するより、ずっといい。
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