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「さぁ、シファラ。ここが君の新しいおうちだ」
シャンデリアが煌めく明るい城のような屋敷はマンタス公爵家の次男リュートの婿入り先グロリア侯爵家だった。
「まずは妻や息子を紹介したいが、その前に身なりを整えてもらっておいで。ミーナ」
「はい。ご主人さま。お任せください」
ミーナはリュートから、シファラを引き取って優しく抱き上げながら、話しかけた。
「後でゆっくりご飯を食べていただくとして、まずはお風呂に参りましょう」
「しー、ない。ない」
「大丈夫ですよ。お風呂は気持ちいいですから」

ミーナはずいぶん軽いシファラを抱き上げたまま、シファラ専用のお風呂場まで連れて行った。
3人がかりで、洗っても洗っても、お湯は汚れたままだ。運んで溜めてある分で足りるのか不安になってきた頃、やっと全身の汚れが落ちた。
シファラは怖くて仕方ないらしく、目を閉じてぷるぷると震えていた。
暴れないだけマシだろうか?ミーナは汚れを落として香油を塗りながら、驚いた。
「なんて可愛い」
先ほどまで、ボサボサで薄汚れていた髪も、顔もはっきりわからなかったが、
今はちがう。
髪は白銀色。瞳は金色。痩せこけていなければ、同じ年頃の貴族の中でも1、2を争う美貌がそこにあった。

「シファラ様、次はドレスを選びましょう」
ミーナは、シファラを抱き上げたまま、シファラのためのクローゼットに入った。
「まだじゅうぶんな衣装ではないが、急なことだったから、許せ。ミーナの手腕を信じているぞ」
リュートの指示のもと、急遽そろえたドレスは、シファラのサイズに合わせたものではないので、手芸が得意なミーナの出番というわけだ。
「こちらはいかがですか?」
ミーナは水色のドレスを広げて見せた。
「しー、ない」 
「あら、お気に召しませんか?こちらは?」
ピンク色の可愛いらしいドレスを広げると、シファラの顔色が変わる。
「こちらがよろしいのですね」
「しー、よない」
「まあ一度着てみましょう」
きついコルセットをしなくていいという指示があったため、シファラの着替えはミーナともうひとり古参の侍女が行った。
「まぁ、可愛い」
思わず、敬語を忘れるほど、シファラにピンクのドレスは似合う。
「少し直しますね」
ミーナがテキパキと調整する。

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