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過去があって今がある
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職員室に向かい、担任に書類の一式を受け取った。今俺が、こうして生きている事が少し不思議に感じていた。何が俺を生かしたのか分からないが、もしあの時死んでいたらどうなっていたか、なんとなく想像してみた。俺が死んで悲しんでくれる人が居るのだろうか、十八年と短い人生の中で何人か顔が頭に浮かんだ。
それは、中学の時に付き合っていた"瀬良柚葉"と、大好きな"おばあちゃん"そして、心配性でお節介な"長谷川 芳江"の三人だった。柚葉とは、高校で離れてしまったまま、俺は後悔していた。また、祖母が泣いている姿を想像すると、そっちの方が辛く思いた。幼馴染に関しては、全力で止めてくるか、説教されそうで少し笑えてきた。
今でも偶に考える時がある。高校の時のことを考えれば、少しはマシにはなっているとは思うが、何をするにも酷く怯え、一番ピークだった時は外に出ることすら億劫だった時もあった。それは、高校に入って直ぐくらいだった。
・・・ ・・・
人によっては、幸不幸の感じ方捉え方には個人差がある。
"死にたい"そう思って出来る人は、俺なんかより相当強い意志を持った、誰よりも強い人間だと思う。
俺は自殺を考えはしたが、どの行為も全て実行されることは無かった。
高校を中退し、逃げるようにして祖母の家に転がり込んで数日がたった頃だった。
家出をするにも、無一文で中卒の俺は就職出来る枠は無いに等しく、自分探しの間祖母に縋るしか無かった。
兄を含め親も、少しは心配してくれていたのだろうか。
兄が俺に向ける心配は、どこか冷たく感じたのは、今に始まったことではなかった。心からというより、事務的と言った方が正しい。そんな感じである。
祖母の家に一人、誰も居ない部屋で俺は泣きながら床を叩いた。
「こんな事なら死んだ方がよっぽどマシじゃねか」自暴自棄の一歩手前と言っていいくらい、俺はしばらくの間食事は適当になり、ろくなものも口にしていなかった。外に出ることも無く、三日間何も食べなかった時もあった。
それから一ヶ月くらいが経っただろうか、土曜日の朝に誰かが尋ねてきた。インターホンが鳴り、誰かが来る話など一切無く、怖くなり部屋の角で縮こまってしまった。
「こんな時間に誰だよ...家族の一人として、今日は来る予定が無いはずなのに...」俺は勇気をだして、恐る恐る玄関に近づき穴から外を覗いた。
すると、そこに俺の初恋相手だった幼馴染の姿があった。「和鷹くん、居るんでしょ?芳江だけと、覚えてる?少し話がしたいんだけど、中に入れてもらっても良いかな?」
久しぶりに出会ったことに対する驚きと、彼女が此処を知っているという事実と、初恋の女性だった事もあって俺は動揺して玄関で尻餅を付いた。
「痛って~!!」二三歩後ろに下がり、打った腰を擦りながら窓の鍵を開けようとしたその時だった。
「和鷹くん!!!大丈夫!!!!何があったの!!!」鍵が開き、勢いよく俺に向かって飛びついてきた。
何やら違和感のような物を感じながら、俺は彼女に圧倒され再び床に尻もちを着いた。
「痛いよ芳江さん...転けて腰を打っただけだよ、大丈夫だって大袈裟だよ。それより、鍵どうしたんだよ。」
彼女はドヤ顔で合鍵を俺の前に見せつけてきた。「兄さんに、預かってきたの?にしても、久しぶりだね。」彼女は俺の頭を軽く撫で、優しい笑みを浮かべ何も言わず、抱き締めた。
俺は顔がグシャグシャになるまで泣きだした。涙で過去の辛かった事や悲しかった事、どこにもぶつける事も出来ずに居た感情が溢れ出すようにして流れた。
俺は、幼馴染には何度か救われたことがあった。小さい頃から友達が少なかったオレを気遣ってか、良く遊んでもらうことが多かった。
彼女は何かと世話を焼いてくれた。今もそうだ。「和鷹くん、朝ご飯は食べたの?まだだったら、私が作ろうか?」彼女の手料理は今まで食べたことがなかった。嬉しい半面、少し複雑な気持ちだった。
それは、中学の時に付き合っていた"瀬良柚葉"と、大好きな"おばあちゃん"そして、心配性でお節介な"長谷川 芳江"の三人だった。柚葉とは、高校で離れてしまったまま、俺は後悔していた。また、祖母が泣いている姿を想像すると、そっちの方が辛く思いた。幼馴染に関しては、全力で止めてくるか、説教されそうで少し笑えてきた。
今でも偶に考える時がある。高校の時のことを考えれば、少しはマシにはなっているとは思うが、何をするにも酷く怯え、一番ピークだった時は外に出ることすら億劫だった時もあった。それは、高校に入って直ぐくらいだった。
・・・ ・・・
人によっては、幸不幸の感じ方捉え方には個人差がある。
"死にたい"そう思って出来る人は、俺なんかより相当強い意志を持った、誰よりも強い人間だと思う。
俺は自殺を考えはしたが、どの行為も全て実行されることは無かった。
高校を中退し、逃げるようにして祖母の家に転がり込んで数日がたった頃だった。
家出をするにも、無一文で中卒の俺は就職出来る枠は無いに等しく、自分探しの間祖母に縋るしか無かった。
兄を含め親も、少しは心配してくれていたのだろうか。
兄が俺に向ける心配は、どこか冷たく感じたのは、今に始まったことではなかった。心からというより、事務的と言った方が正しい。そんな感じである。
祖母の家に一人、誰も居ない部屋で俺は泣きながら床を叩いた。
「こんな事なら死んだ方がよっぽどマシじゃねか」自暴自棄の一歩手前と言っていいくらい、俺はしばらくの間食事は適当になり、ろくなものも口にしていなかった。外に出ることも無く、三日間何も食べなかった時もあった。
それから一ヶ月くらいが経っただろうか、土曜日の朝に誰かが尋ねてきた。インターホンが鳴り、誰かが来る話など一切無く、怖くなり部屋の角で縮こまってしまった。
「こんな時間に誰だよ...家族の一人として、今日は来る予定が無いはずなのに...」俺は勇気をだして、恐る恐る玄関に近づき穴から外を覗いた。
すると、そこに俺の初恋相手だった幼馴染の姿があった。「和鷹くん、居るんでしょ?芳江だけと、覚えてる?少し話がしたいんだけど、中に入れてもらっても良いかな?」
久しぶりに出会ったことに対する驚きと、彼女が此処を知っているという事実と、初恋の女性だった事もあって俺は動揺して玄関で尻餅を付いた。
「痛って~!!」二三歩後ろに下がり、打った腰を擦りながら窓の鍵を開けようとしたその時だった。
「和鷹くん!!!大丈夫!!!!何があったの!!!」鍵が開き、勢いよく俺に向かって飛びついてきた。
何やら違和感のような物を感じながら、俺は彼女に圧倒され再び床に尻もちを着いた。
「痛いよ芳江さん...転けて腰を打っただけだよ、大丈夫だって大袈裟だよ。それより、鍵どうしたんだよ。」
彼女はドヤ顔で合鍵を俺の前に見せつけてきた。「兄さんに、預かってきたの?にしても、久しぶりだね。」彼女は俺の頭を軽く撫で、優しい笑みを浮かべ何も言わず、抱き締めた。
俺は顔がグシャグシャになるまで泣きだした。涙で過去の辛かった事や悲しかった事、どこにもぶつける事も出来ずに居た感情が溢れ出すようにして流れた。
俺は、幼馴染には何度か救われたことがあった。小さい頃から友達が少なかったオレを気遣ってか、良く遊んでもらうことが多かった。
彼女は何かと世話を焼いてくれた。今もそうだ。「和鷹くん、朝ご飯は食べたの?まだだったら、私が作ろうか?」彼女の手料理は今まで食べたことがなかった。嬉しい半面、少し複雑な気持ちだった。
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