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俺は自分が一番不幸な人間なのだと思い込んでいた。公園で記憶を失った彼女を目の当たりにして、俺は自分の悩みが小さく思えて馬鹿らしくなった。
「家族からの疎外感」「イジメによる対人恐怖症」それと同時に、俺は彼女に"羨ましい"という感情を抱いてしまった。
誰かに必要とされたいと思う事は、ごく自然なことである。それでも、必要とされる為には行動しない事には得られないのだと、そして誰の為に生きているかは、言うまでもなく自分の為であるということを。
死ねば楽になれるのじゃないかと、その為の手段を何度も繰り返し考えた。それでも俺には出来ず、ただの臆病者にすぎなかった。今となっては、もしあの時死んでいたら幼馴染のあんな顔や、大学で友達が出来る事を知らないまま行ってしまっていたのだともうと、何故か少し笑えてきた。
そして、俺は"生きる目的"を見つけた。記憶を失った"彼女"にもう一度会って恩返しをする事を。... ...
それから俺は思い切って大学に復帰する決意をした。
翌朝。休学解除の手続きをしに、約二ヶ月ぶりに学校へ顔を出しに向かった。
俺は"復帰"する事を友人に就寝前に連絡を送っていた。
既読の早い彼は、案の定返信が早く内容が長文だった。
「おー、元気そうで良かった!家の場所教えてくれなかったから見舞いも行けなくて、寂しかったぞ?連絡しても返信が無いんだ、一瞬嫌われたかと思って凹んだわ」
俺は、彼に申し訳ない事をしたのだと悔いた。「ごめんな、色々あって今はもう大丈夫だから安心してくれ!」
そうして彼とのやり取りが何往復か繰り返され、ようやく彼女の話題に戻ってきた。「おっ!水原も気になるのか?そうだなあ、噂だと女子とばかり連んでて男子を寄せ付けないらしく、その子の友達が常に張り付いてて話しかけようにも話しかけれないんだよ。だから、遠目で見るしか出来ないんだ気になるかもだけど、戻って来ても近付くのは遠慮した方が良いと思うぜ」
「美少女と噂される程の人となると、頭が高いのか護衛も付くのか。誰か知らないが自意識過剰にも程があるだろ」
"芸術サークル"に同じ学年の女子生徒で、学校中で噂になるほどの美少女が居るらしい。俺が居ない間に、なにやら楽しそうな事になっていた。その情報は俺のモチベーションを高く跳ね上がらせた。
学校復帰を決めてから、彼から連絡が来た時は自分でも謎なくらいモチベーションが上がった。俺は、気になって彼に"美少女"と噂されている人の名前を聞きたくなって「誰だ?同じ学年に、そんな可愛い奴居たっけ?」彼が言うには、大学という事もあり、俺と取っている科目が違うらしく、そう考えると納得はいった。
部屋に戻り布団に潜り込んでベッドの上で俯せになりながら、携帯を弄った。
「なぁなぁ、その美少女っていう子特徴とか見た目とか、性格ってどんな感じなんだ?」既読は一瞬で付いた。「既読早いな暇人かよ」休学してる俺に言われたくないだろう。流石に文字は打たずに胸の内に秘め、削除した。
大学はなにやら秋のイベントに向けて、各サークルは夏休みに準備が始まっているらしく、特に入りたいサークルも無かった俺は、彼と同じサークルに入ることにした。とはいえ、休学する少し前に届けを出しただけで顔を出した事は一度もなかった。
俺は明日から戻る事を彼に伝え、準備をしてから就寝した。
翌朝。携帯が点滅しているのが見え、確認すると、彼からだった。
「それじゃ、朝十時に芸術サークルで待ってるからな!遅刻したら罰金だからな!」文に付け加え、ニヤリの顔文字が入れられていた。
俺は彼に"居場所"を作ってくれた。少し強引ではあったが、彼の言葉や行動はいつも何かを見透かしているような、そんな気さえするものだった。
休学を伝えた時も、何も聞かずに「直ぐに戻って来いよ!お前がいないと寂しいんだからよ」俺は彼のその言葉に救われた。そして、今でも鮮明に覚えている。
「家族からの疎外感」「イジメによる対人恐怖症」それと同時に、俺は彼女に"羨ましい"という感情を抱いてしまった。
誰かに必要とされたいと思う事は、ごく自然なことである。それでも、必要とされる為には行動しない事には得られないのだと、そして誰の為に生きているかは、言うまでもなく自分の為であるということを。
死ねば楽になれるのじゃないかと、その為の手段を何度も繰り返し考えた。それでも俺には出来ず、ただの臆病者にすぎなかった。今となっては、もしあの時死んでいたら幼馴染のあんな顔や、大学で友達が出来る事を知らないまま行ってしまっていたのだともうと、何故か少し笑えてきた。
そして、俺は"生きる目的"を見つけた。記憶を失った"彼女"にもう一度会って恩返しをする事を。... ...
それから俺は思い切って大学に復帰する決意をした。
翌朝。休学解除の手続きをしに、約二ヶ月ぶりに学校へ顔を出しに向かった。
俺は"復帰"する事を友人に就寝前に連絡を送っていた。
既読の早い彼は、案の定返信が早く内容が長文だった。
「おー、元気そうで良かった!家の場所教えてくれなかったから見舞いも行けなくて、寂しかったぞ?連絡しても返信が無いんだ、一瞬嫌われたかと思って凹んだわ」
俺は、彼に申し訳ない事をしたのだと悔いた。「ごめんな、色々あって今はもう大丈夫だから安心してくれ!」
そうして彼とのやり取りが何往復か繰り返され、ようやく彼女の話題に戻ってきた。「おっ!水原も気になるのか?そうだなあ、噂だと女子とばかり連んでて男子を寄せ付けないらしく、その子の友達が常に張り付いてて話しかけようにも話しかけれないんだよ。だから、遠目で見るしか出来ないんだ気になるかもだけど、戻って来ても近付くのは遠慮した方が良いと思うぜ」
「美少女と噂される程の人となると、頭が高いのか護衛も付くのか。誰か知らないが自意識過剰にも程があるだろ」
"芸術サークル"に同じ学年の女子生徒で、学校中で噂になるほどの美少女が居るらしい。俺が居ない間に、なにやら楽しそうな事になっていた。その情報は俺のモチベーションを高く跳ね上がらせた。
学校復帰を決めてから、彼から連絡が来た時は自分でも謎なくらいモチベーションが上がった。俺は、気になって彼に"美少女"と噂されている人の名前を聞きたくなって「誰だ?同じ学年に、そんな可愛い奴居たっけ?」彼が言うには、大学という事もあり、俺と取っている科目が違うらしく、そう考えると納得はいった。
部屋に戻り布団に潜り込んでベッドの上で俯せになりながら、携帯を弄った。
「なぁなぁ、その美少女っていう子特徴とか見た目とか、性格ってどんな感じなんだ?」既読は一瞬で付いた。「既読早いな暇人かよ」休学してる俺に言われたくないだろう。流石に文字は打たずに胸の内に秘め、削除した。
大学はなにやら秋のイベントに向けて、各サークルは夏休みに準備が始まっているらしく、特に入りたいサークルも無かった俺は、彼と同じサークルに入ることにした。とはいえ、休学する少し前に届けを出しただけで顔を出した事は一度もなかった。
俺は明日から戻る事を彼に伝え、準備をしてから就寝した。
翌朝。携帯が点滅しているのが見え、確認すると、彼からだった。
「それじゃ、朝十時に芸術サークルで待ってるからな!遅刻したら罰金だからな!」文に付け加え、ニヤリの顔文字が入れられていた。
俺は彼に"居場所"を作ってくれた。少し強引ではあったが、彼の言葉や行動はいつも何かを見透かしているような、そんな気さえするものだった。
休学を伝えた時も、何も聞かずに「直ぐに戻って来いよ!お前がいないと寂しいんだからよ」俺は彼のその言葉に救われた。そして、今でも鮮明に覚えている。
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