38 / 46
五章 決断と覚悟
語られる過去
しおりを挟む
春樹に誘われ四人で祭りに行ってから、一週間が経った。
楽しい時間というものは、あっという間に終わってしまう。ずっと楽しい時間が続けばいいのにと、祖母と縁側で外の景色を眺めながら、ふと祭りの余韻に浸っていた。
これは一週間前に遡る。
祭りの後、俺は柚葉に連れられある場所に向かっていた。
「水原くん、君は何か私に隠してる事無いかな?」
それは突然の事だった。
あまりの不意打ちに俺は動揺を隠せなかった。
柚葉が何を考え、俺に対して何を聞こうとしているのか、冷静になって考えた。
春樹も百桃も居ない今、俺は柚葉からの質問に間違っても過去の事を掘り返す様な、解答断じてしてはならないのである。
これだけは百桃や春樹からは予め強く念を押されたからでえる。
ただ少し不安なのは、柚葉の表情や質問の内容から、俺が柚葉に何かを気づかれたらしい。
俺は今までの行動を必死になって思い出した。
それでも、俺には何一つとして思い当たる節がなかった。
「隠してる事?俺は瀬良さんに隠してる事なんか無いよ?」
緊張のあまり、言い慣れていない名字で違和感がありながらも彼女の名前を呼んだ。
「私よくあの公園に行くんだけど、水原くんもよく行ったりするのかな?」
柚葉が何を言いたくて、何を聞きたいのかなんとなく分かったような気がした。
「うん、一人になりたい時とか落ち着きたい時に、あそこの公園は落ち着くからね。幼い頃から暇があったらよく行ってるよ」
すると柚葉は驚いた表情でこちらを見るなり、再度確認の質問を投げかける。
「いつだったかな?私、誰もいないと思って泣いてたんだけど、聞いてたりしたのかな?あと、誰かに"ノート"の話しをしたんだけど、聞いてなかったらいいんだ。私にも分からなくてね」
次から次へと柚葉の口から明かされる言葉の数々。
"泣いていた"のは見てなかったし知らなかったけど、幼い頃に俺は柚葉が一人で泣いているのを見たことがあった。
だから、不思議には思わなかった。
とはいえ、泣いていた理由が俺に原因があるとしたらと考えたら胸が苦しくなった。
微かに涙声になりながら語られる柚葉の姿にこれ以上隠す事に限界を感じ、居てもたってもいられなくなった。
そして俺は春樹と百桃に止められていた禁忌を犯そうと、柚葉に明かそうとしたその時だった。
「水原くん...君が、私の日記に書いてあった和鷹くんなんだよね?そうだよね?そうなんだよね?」
柚葉は大粒の涙を零しながら、彼女の中で何かが繋がったのか、勢い良く俺に向かって飛び付いてきた。
両肩を掴み揺すり、俺の目を見るなり萎れた花のように膝から崩れ落ち、しばらくして泣きながら走って帰っていった。
俺は"終わった"のだと、俺が明かさずとも柚葉は辿り着いてしまった。
何が彼女の中で確証を掴むきっかけとなったのかは分からないが、これから柚葉とどう接したらいいのか分からなくなり、もし柚葉がこれから学校に来なくなったら、仲良くなるところか大きな溝が出来たのではないかと不安にな気持ちになった。
無気力になり、全身に力が入らなくなりゾンビのような速さでゆっくりと歩みを進め、下を向きながら祖母の家に帰っていった。
楽しい時間というものは、あっという間に終わってしまう。ずっと楽しい時間が続けばいいのにと、祖母と縁側で外の景色を眺めながら、ふと祭りの余韻に浸っていた。
これは一週間前に遡る。
祭りの後、俺は柚葉に連れられある場所に向かっていた。
「水原くん、君は何か私に隠してる事無いかな?」
それは突然の事だった。
あまりの不意打ちに俺は動揺を隠せなかった。
柚葉が何を考え、俺に対して何を聞こうとしているのか、冷静になって考えた。
春樹も百桃も居ない今、俺は柚葉からの質問に間違っても過去の事を掘り返す様な、解答断じてしてはならないのである。
これだけは百桃や春樹からは予め強く念を押されたからでえる。
ただ少し不安なのは、柚葉の表情や質問の内容から、俺が柚葉に何かを気づかれたらしい。
俺は今までの行動を必死になって思い出した。
それでも、俺には何一つとして思い当たる節がなかった。
「隠してる事?俺は瀬良さんに隠してる事なんか無いよ?」
緊張のあまり、言い慣れていない名字で違和感がありながらも彼女の名前を呼んだ。
「私よくあの公園に行くんだけど、水原くんもよく行ったりするのかな?」
柚葉が何を言いたくて、何を聞きたいのかなんとなく分かったような気がした。
「うん、一人になりたい時とか落ち着きたい時に、あそこの公園は落ち着くからね。幼い頃から暇があったらよく行ってるよ」
すると柚葉は驚いた表情でこちらを見るなり、再度確認の質問を投げかける。
「いつだったかな?私、誰もいないと思って泣いてたんだけど、聞いてたりしたのかな?あと、誰かに"ノート"の話しをしたんだけど、聞いてなかったらいいんだ。私にも分からなくてね」
次から次へと柚葉の口から明かされる言葉の数々。
"泣いていた"のは見てなかったし知らなかったけど、幼い頃に俺は柚葉が一人で泣いているのを見たことがあった。
だから、不思議には思わなかった。
とはいえ、泣いていた理由が俺に原因があるとしたらと考えたら胸が苦しくなった。
微かに涙声になりながら語られる柚葉の姿にこれ以上隠す事に限界を感じ、居てもたってもいられなくなった。
そして俺は春樹と百桃に止められていた禁忌を犯そうと、柚葉に明かそうとしたその時だった。
「水原くん...君が、私の日記に書いてあった和鷹くんなんだよね?そうだよね?そうなんだよね?」
柚葉は大粒の涙を零しながら、彼女の中で何かが繋がったのか、勢い良く俺に向かって飛び付いてきた。
両肩を掴み揺すり、俺の目を見るなり萎れた花のように膝から崩れ落ち、しばらくして泣きながら走って帰っていった。
俺は"終わった"のだと、俺が明かさずとも柚葉は辿り着いてしまった。
何が彼女の中で確証を掴むきっかけとなったのかは分からないが、これから柚葉とどう接したらいいのか分からなくなり、もし柚葉がこれから学校に来なくなったら、仲良くなるところか大きな溝が出来たのではないかと不安にな気持ちになった。
無気力になり、全身に力が入らなくなりゾンビのような速さでゆっくりと歩みを進め、下を向きながら祖母の家に帰っていった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
初恋の呪縛
緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」
王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。
※ 全6話完結予定
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる