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四章 大学と懐かしい思い出
幸せの青い鳥
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対人恐怖症と言えば少し盛った言葉になるが、それに近いものが俺にはあった。
高校を虐めから逃げるべく中退し、心を許せる祖母の家で引き籠もる日々を送っていた。
とはいえ家族や芳江は、少なからず心配してくれていたのか、親は定期的に祖母の家に顔を出しては様子を見に来ていたし、少しの仕送りもあったりした。
芳江はというと、特に夢も無い腐っていた俺に飽きること無く手を差し出してくれた。勉強会や朝食を作りに来たりと世話を焼いてくれていた。
そして俺は今こうして大学の前に立っている。
まだ少し不安はあった。新しい環境で、今にも逃げ出したくなるような、勢いである。それでも俺は前に進まなくてはならなかった。なぜなら俺が芳江に対する気持ちを断ち切る必要があったからである。
いつまでも子どもの頃の片思いを引き摺っていたら、前に進むものも進めないと思ったからだ。
理由はそれだけでは無かった。
少し前に祖母と話す会話の中で、"柚葉"の話が上がり、本気で会いたいという気持ちが湧き上がってきたからである。
「俺って本当に最低な人間だよな、柚葉に合わせる顔なんかあんのかな」
ーーーーーーーーーーーーー
始業式が終わり、真っ直ぐ家に帰る者や入口で写真を撮る者、教室で連絡先を交換し合う人達も居た。
ふと教室の角に女子との男子二人が仲良く話している光景が目に入る。
盗み聞きをするつもりはなかったが、何やらサークルについて話しているみたいで、口調や雰囲気から今日知り合った関係とは思えない、そんな距離感に感じた。
特に此処に長居する理由もないと思った俺は、荷物をまとめ席を立つ。
すると二人の内一人の男子が誰かを呼ぶ声が聞こえる。
「ちょっとそこの君、今一緒に入るサークルメンバーを集めてるんだけど、少し時間良いかな?」
背後から呼ぶ声は、どうやら俺を呼んでいるのらしい。なぜなら教室には俺と彼ら三人だけだからである。
大学デビューこそ高校の時の二の舞にならないよう、彼と仲良くなるチャンスをなんとしてでも逃したくないと思い、振り返り答える。
「俺の名前は水原和鷹、サークルは今のところは考えてないかな。ところで君の名前は?」
正直に言うと、自分でも気持ちが悪いと感じる程の口調で、寒気がした。
取り敢えず、様子見ということもあり変に適当な事を言って躓いたら、此処で俺のキャンパスライフは終わってしまう。そして考えに考えて出た言葉がアレである。恥ずかし過ぎて穴があるなら入りたいと本気で思った。
「僕は神谷 春樹。僕達は"芸術クリエイトサークル"に入るつもりなんだ。気が向いたら、遊びに来てね。待ってるから」
"僕達"という言葉に反応してしまった俺は、瞬時に春樹の横に立つ少女達を指しているのだと推測する。
「春樹の横の一人は、春樹とはどういう関係なのかな?」
ただモテる男子という事なら、春樹の行為は俺にとって嫌味あるいは、引き立て役として任命されたと思う。むしろ正直にそう言って貰えた方が助かるものだ。
「改めて紹介するね、右の彼女は僕の幼馴染"朝比奈 百桃"そして今は居ないけど、百桃の親友の"瀬良柚葉"さんも居るかな。クラスも同じ事だし、これからも仲良くしようね」
俺は幻聴でも聞こえたのか、春樹から柚葉の名前が上がり、衝撃のあまり頭がフリーズする。
「えっ... ...あっ、うん。こちらこそ、よろしく...」
「どうかした?何か僕変な事言ったかな?」
「いや、なんでもないよ。また、明日」
今は偶然居合わせなかったが、間違いなく同じ大学に同じクラスに、あの瀬良柚葉が居るという事実を知った。
高校を虐めから逃げるべく中退し、心を許せる祖母の家で引き籠もる日々を送っていた。
とはいえ家族や芳江は、少なからず心配してくれていたのか、親は定期的に祖母の家に顔を出しては様子を見に来ていたし、少しの仕送りもあったりした。
芳江はというと、特に夢も無い腐っていた俺に飽きること無く手を差し出してくれた。勉強会や朝食を作りに来たりと世話を焼いてくれていた。
そして俺は今こうして大学の前に立っている。
まだ少し不安はあった。新しい環境で、今にも逃げ出したくなるような、勢いである。それでも俺は前に進まなくてはならなかった。なぜなら俺が芳江に対する気持ちを断ち切る必要があったからである。
いつまでも子どもの頃の片思いを引き摺っていたら、前に進むものも進めないと思ったからだ。
理由はそれだけでは無かった。
少し前に祖母と話す会話の中で、"柚葉"の話が上がり、本気で会いたいという気持ちが湧き上がってきたからである。
「俺って本当に最低な人間だよな、柚葉に合わせる顔なんかあんのかな」
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始業式が終わり、真っ直ぐ家に帰る者や入口で写真を撮る者、教室で連絡先を交換し合う人達も居た。
ふと教室の角に女子との男子二人が仲良く話している光景が目に入る。
盗み聞きをするつもりはなかったが、何やらサークルについて話しているみたいで、口調や雰囲気から今日知り合った関係とは思えない、そんな距離感に感じた。
特に此処に長居する理由もないと思った俺は、荷物をまとめ席を立つ。
すると二人の内一人の男子が誰かを呼ぶ声が聞こえる。
「ちょっとそこの君、今一緒に入るサークルメンバーを集めてるんだけど、少し時間良いかな?」
背後から呼ぶ声は、どうやら俺を呼んでいるのらしい。なぜなら教室には俺と彼ら三人だけだからである。
大学デビューこそ高校の時の二の舞にならないよう、彼と仲良くなるチャンスをなんとしてでも逃したくないと思い、振り返り答える。
「俺の名前は水原和鷹、サークルは今のところは考えてないかな。ところで君の名前は?」
正直に言うと、自分でも気持ちが悪いと感じる程の口調で、寒気がした。
取り敢えず、様子見ということもあり変に適当な事を言って躓いたら、此処で俺のキャンパスライフは終わってしまう。そして考えに考えて出た言葉がアレである。恥ずかし過ぎて穴があるなら入りたいと本気で思った。
「僕は神谷 春樹。僕達は"芸術クリエイトサークル"に入るつもりなんだ。気が向いたら、遊びに来てね。待ってるから」
"僕達"という言葉に反応してしまった俺は、瞬時に春樹の横に立つ少女達を指しているのだと推測する。
「春樹の横の一人は、春樹とはどういう関係なのかな?」
ただモテる男子という事なら、春樹の行為は俺にとって嫌味あるいは、引き立て役として任命されたと思う。むしろ正直にそう言って貰えた方が助かるものだ。
「改めて紹介するね、右の彼女は僕の幼馴染"朝比奈 百桃"そして今は居ないけど、百桃の親友の"瀬良柚葉"さんも居るかな。クラスも同じ事だし、これからも仲良くしようね」
俺は幻聴でも聞こえたのか、春樹から柚葉の名前が上がり、衝撃のあまり頭がフリーズする。
「えっ... ...あっ、うん。こちらこそ、よろしく...」
「どうかした?何か僕変な事言ったかな?」
「いや、なんでもないよ。また、明日」
今は偶然居合わせなかったが、間違いなく同じ大学に同じクラスに、あの瀬良柚葉が居るという事実を知った。
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