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3章 成れの果て
これからどうすれば
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夢を見ていたのか、"柚葉"に振られ、避けられ、遠ざり、涙を浮かべていた彼女に俺は思わず飛び上がり、目覚めた時"夢"だと理解し、安堵の息を漏らす。
「俺が一方的に振ったからだろうか、柚葉も受け入れてくれた筈だけど」
今の俺は考えれば考えるほどネガティブになり、悪い事ばかり考えてしまう。
彼女の涙は、夢の中ではあったが、胸に突き刺さる衝撃があった。
トントントン。
一階から祖母が上がってくる音がする。
少し騒ぎすぎたか、心配そうにドアの前まで来た。
「和くんや?少しおばあちゃんと話をしないかい?」
俺は急いで涙を拭いながら祖母に部屋に入ってもらう。
「なに?話って」
座布団を一枚敷き、祖母がそこに正座になる。
真剣な空気が漂い、俺も思わず緊張し崩していた足を正座に変える。
「もう、三年近くが経つかのう。昔和くんが此処に連れてきたことがある"柚葉"ちゃんだったか、覚えているかい?」
まさか祖母の口から"柚葉"の名前が挙がるとは予想していなく、さっきのこともあり動揺を隠せなかった。
「う、うん。覚えてるよ」
中学の時に此処を引っ越すと同時に"柚葉"と別れたっきり、会っていなかった。
「あの子、和くんとお付き合いしてたじゃろ?引っ越して行ってから、毎週のように駄菓子屋に来ては、和くんに会いたいって言うておったよ。柚葉ちゃん、和くんと別れたくなかったんじゃないかのう?去年の夏だったか、パタリと来なくなったんよ何か聞いてないかい?」
新しい彼氏でも出来たのなら理解は出来る。
柚葉は俺と別れ、しばらくの想っていてくれていた事実に衝撃を受ける。
加えて、突然来なくなった理由が分からず違和感を感じる。
「おばあちゃん、ありがとう。今度会った時に話してみるよ」
祖母は立ち上がり夕飯の支度が出来たのか、俺を手招きするようにして一階へ降りていった。
「そろそろ夕飯の支度が出来るから、和くんも手伝いに来ておくれ」
俺は、柚葉の事を一度頭の片隅に置き、祖母と夕飯を食べに居間に移動する。
俺は階段を降りながら、ふと"長谷川 芳江"の顔が頭を過ぎった。
「芳江さん、今頃どうしてるかな」
居間に入るなり、祖母は俺の好物である"オムライス"を作ってくれていた。
祖母のオムライスは母が作るのとは違い、バターが入れられていて香りから風味、そしてチキンライスの上に乗せられる柔らかい薄焼き卵は、口に入れる前から美味しいと分かる程である。
口から思わず唾液が零れそうになった。
皿やスプーン、ケチャップからコップ等を準備し席に座り出来上がるのを待った。
「おばあちゃん、俺の事、瀬良さん他に何か言ってた?」
これといって期待をしている訳では無く、ただ別れる事に対して柚葉は否定的ではなかった筈である。
なぜなら、引っ越す前日まで柚葉に教えていなかった。そして、引っ越す直前まで普段と変わらぬ一日を過ごした。
最後に誰に聞いたか分からなかったが、後ろから柚葉が車を走って追いかけてくる光景が記憶に残っている。
てっきり、あの時点で他に好きな人が居たのか、離れると分かって冷めてしまったのだと解釈していた。
なぜなら、俺は柚葉を傷つけ、悲しませた事があった。あの夏のプール以来学校では部活には顔も出さず、朝は一緒に行くことも無く半年が過ぎ嫌われたのだと思い込んでいた。
泣きながら手を振って走って来たあの日、俺は自身の醜さや無力さ、全てが情けなく思い、泣いた事も鮮明に思い出せる。
形だけでなく、祖母の駄菓子屋に定期的に顔を出し俺が来る日を待っていたなんて、考えただけで涙が止まらなくなった。
「柚葉...」
「俺が一方的に振ったからだろうか、柚葉も受け入れてくれた筈だけど」
今の俺は考えれば考えるほどネガティブになり、悪い事ばかり考えてしまう。
彼女の涙は、夢の中ではあったが、胸に突き刺さる衝撃があった。
トントントン。
一階から祖母が上がってくる音がする。
少し騒ぎすぎたか、心配そうにドアの前まで来た。
「和くんや?少しおばあちゃんと話をしないかい?」
俺は急いで涙を拭いながら祖母に部屋に入ってもらう。
「なに?話って」
座布団を一枚敷き、祖母がそこに正座になる。
真剣な空気が漂い、俺も思わず緊張し崩していた足を正座に変える。
「もう、三年近くが経つかのう。昔和くんが此処に連れてきたことがある"柚葉"ちゃんだったか、覚えているかい?」
まさか祖母の口から"柚葉"の名前が挙がるとは予想していなく、さっきのこともあり動揺を隠せなかった。
「う、うん。覚えてるよ」
中学の時に此処を引っ越すと同時に"柚葉"と別れたっきり、会っていなかった。
「あの子、和くんとお付き合いしてたじゃろ?引っ越して行ってから、毎週のように駄菓子屋に来ては、和くんに会いたいって言うておったよ。柚葉ちゃん、和くんと別れたくなかったんじゃないかのう?去年の夏だったか、パタリと来なくなったんよ何か聞いてないかい?」
新しい彼氏でも出来たのなら理解は出来る。
柚葉は俺と別れ、しばらくの想っていてくれていた事実に衝撃を受ける。
加えて、突然来なくなった理由が分からず違和感を感じる。
「おばあちゃん、ありがとう。今度会った時に話してみるよ」
祖母は立ち上がり夕飯の支度が出来たのか、俺を手招きするようにして一階へ降りていった。
「そろそろ夕飯の支度が出来るから、和くんも手伝いに来ておくれ」
俺は、柚葉の事を一度頭の片隅に置き、祖母と夕飯を食べに居間に移動する。
俺は階段を降りながら、ふと"長谷川 芳江"の顔が頭を過ぎった。
「芳江さん、今頃どうしてるかな」
居間に入るなり、祖母は俺の好物である"オムライス"を作ってくれていた。
祖母のオムライスは母が作るのとは違い、バターが入れられていて香りから風味、そしてチキンライスの上に乗せられる柔らかい薄焼き卵は、口に入れる前から美味しいと分かる程である。
口から思わず唾液が零れそうになった。
皿やスプーン、ケチャップからコップ等を準備し席に座り出来上がるのを待った。
「おばあちゃん、俺の事、瀬良さん他に何か言ってた?」
これといって期待をしている訳では無く、ただ別れる事に対して柚葉は否定的ではなかった筈である。
なぜなら、引っ越す前日まで柚葉に教えていなかった。そして、引っ越す直前まで普段と変わらぬ一日を過ごした。
最後に誰に聞いたか分からなかったが、後ろから柚葉が車を走って追いかけてくる光景が記憶に残っている。
てっきり、あの時点で他に好きな人が居たのか、離れると分かって冷めてしまったのだと解釈していた。
なぜなら、俺は柚葉を傷つけ、悲しませた事があった。あの夏のプール以来学校では部活には顔も出さず、朝は一緒に行くことも無く半年が過ぎ嫌われたのだと思い込んでいた。
泣きながら手を振って走って来たあの日、俺は自身の醜さや無力さ、全てが情けなく思い、泣いた事も鮮明に思い出せる。
形だけでなく、祖母の駄菓子屋に定期的に顔を出し俺が来る日を待っていたなんて、考えただけで涙が止まらなくなった。
「柚葉...」
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