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ボクと、私と

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 ――カオルの場合
 
「ああ……どうして? なぜ? こんなコトになったんだ?」

 その日、カオルは家に帰ると、制服を、下着をすべて脱ぎ捨て、姿見の前に立っていた。全身がくまなく映せる大きな鏡だ。そこに写っていた自分のカラダ……それはまぎれもなく女のカラダだった。胸はほのかに膨らんでいて、股間にぶら下がっているはずの『アレ』は、きれいさっぱり無くなっている。
 
「こ、これはアレか? ボクがあまりにシノブと結ばれたいと願ったから、神様が願いを聞き入れたとでもいうのか? 『よし、汝は男にしておくにはあまりに美しすぎる。さすれば女にしてやろう』ってことなのか? けど……これで……シノブと……」

 カオルはカラダがほんのりと熱くなるのを感じていた。

「そ、そうさ。きっとそうさ。前に一度シノブに尋ねたことがある。『もしボクが女の子だったら付き合ってくれるかい?』ってね。あのとき確かにシノブは答えた。『もちろん!』ってね」

 カオルはすぐにでもシノブに確かめたいと思った。しかし、何をどう説明すればいいのかわからず、朝、会ったときにそれとなく確認しようと決めた。


 ――チアキの場合
 
「はぁ~。やっぱ何度確認しても……ある。ありますですよ~異物が!」

 チアキもまた家に帰ると自分のカラダを確認していた。すると、もともと大きい方ではなかった胸はさらに小さく、平らになっていて、なんといっても股の下には異物がぶら下がっていた。

「こ、これは……ティンティン……だよね? ティーンのティンティーン! なんちゃてー って笑えまへんがな! あ、大っきくなってきた」

 チアキはもの珍しくなって、ティーンのティンティンを触るものだから、当然にしてそれは大きく、固くなった。

「へえ~こーなってるのか~グロテスクぅ~てか、なんか痛い。痛いよーう。コレ、どうやってちっちゃくするの? えと、弟に聞く? いやいやさすがにそれは……うーん」

 そうこうしているうちにティンティンは縮んだが、コレはあんまり触らないでおいたほうがいいな、そう思うチアキだった。

「でも……これってなんなんだろう。ど、どう見ても……男子だよね。思春期になると性別が変わったりする? とか? 聞いたこと無いけど……。それともそれともずっと自分が女子だと思い込んでただけで男の子だった? とか? せっかくシノブさんというダーリンと出会ったというのに……あぁ、諦めるしかないってコト? ああ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの? 的な? ん? なんか違う???」

 チアキはなぜか自分が生まれつき男子だったのだ!という結論を受け入れ、翌日からは男子として生きよう。そう思うのだった。
 
 しかし――翌朝

「え? 学ランの制服がない? そ、そうか。そりゃそーか。う、うん。しばらくは女装で様子見るしかないってことか……仕方がない仕方がない」

 という具合に、女心を持っているがカラダは男子だけど、世間一般からは女子として認識されている存在、という複雑な状態を演じることにした。というか、これまで通りで行こうとしただけだが……

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