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終わりと始まり、それらが区別できないような時代にあるこの海辺の草原には、今は誰も住むものはいない。
ちょっと前までここに住んでいた男がこの場所からいなくなってからと言うもの、動くものもいないこの地は、美しくも、死後の世界かと思うような静けさで、寂しいことこの上なし。
しかし、その男はいなくなるときにある種子を残して行った。
彼の思い出より落ちた種。
その種は芽吹き、根を伸ばし、果てしなく続く無意識の、地下の暗闇の中から、ついにはその思い出の時代を吸い上げて、それを本物の花として咲かす。
するとこの地に蜂が飛んで来た。
動くものの何もないこの地に……。
蜂が。
鳥が。
蛙が。
蛇が。
猫が。
犬が。
次から次へと……。
自然は動き出し、喜ぶ。
花が歌う。
すると……。
ついに、この地の美しさに誘われて、人間も迷い込んでくる。
それは、とてもかわいい少女と母親の二人連れ。
彼女らは、もってきたお弁当を広げ、草の上に座り、あれ綺麗なお花と手を伸ばし、その瞬間、花は風に乗り飛ぶ。
空高く、どこまでも、遠く、遠く。
——たぶん君の所まで。
ちょっと前までここに住んでいた男がこの場所からいなくなってからと言うもの、動くものもいないこの地は、美しくも、死後の世界かと思うような静けさで、寂しいことこの上なし。
しかし、その男はいなくなるときにある種子を残して行った。
彼の思い出より落ちた種。
その種は芽吹き、根を伸ばし、果てしなく続く無意識の、地下の暗闇の中から、ついにはその思い出の時代を吸い上げて、それを本物の花として咲かす。
するとこの地に蜂が飛んで来た。
動くものの何もないこの地に……。
蜂が。
鳥が。
蛙が。
蛇が。
猫が。
犬が。
次から次へと……。
自然は動き出し、喜ぶ。
花が歌う。
すると……。
ついに、この地の美しさに誘われて、人間も迷い込んでくる。
それは、とてもかわいい少女と母親の二人連れ。
彼女らは、もってきたお弁当を広げ、草の上に座り、あれ綺麗なお花と手を伸ばし、その瞬間、花は風に乗り飛ぶ。
空高く、どこまでも、遠く、遠く。
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