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サツキ公国編
第81話 どーも、女同士の殴り合いです
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前書き
前回のあらすじ
主人公 ネイレスさんの強さを知る
本文
どーも、ネイレス女王陛下が旅仲間になって内心驚いているオッサンです。
ユリさんの勧誘なのか、ネイレスさんの希望だったのか俺には分からない。まぁ、ユリさんに友達が出来て良かったよ。ネイレスさんも楽しそうに笑っているし、ユリさんの病気と言っていいほどの俺への執着が薄れるなら喜ばしい限りだ。
「ケンさん、ユリ。順調に行けばそろそろ王族専用門に到着します。私の護衛ということでよろしいですか?」
仮面を装着した俺とユリさんは、ネイレスの言葉に頷く。雨が降る中、出来れば馬車のままで行きたいが、騒ぎになるくらいなら隠しておいた方がいい。全員、変装及び雨避けのネックレスを装備し馬車から降りる。
「ここから徒歩だけど、門からネイレスを迎えに来ることはないのか?」
「それはありません。私を恐れている者が、同乗するとは思えませんし」
「別に怖くないのに...ネイレスは、よくそんな環境で生活出来たわね」
「日々、胸が痛かったですし、人の目が怖かったです。それもこれも兄の計略だったと思うと、納得出来るものが多くあります。私は、兄にとって、ただのお飾りであり駒だったのですね」
「どうして、それに気づかなかったの?貴女なら、気づけたはずよ?」
「兄妹でしたから、きっと分かってくれると思っていました。殺されかけるその瞬間まで...ケンさんとユリに出会わなければ、キサラ法国の者に陵辱され殺されていたに違いありません」
「うわー...それは最悪な展開だな。なんでこの世界は、こんなに残酷なんだろうか」
俺は、この世界に来てから嫌な場面に遭遇することが多い。帝国では、セレネ姫がゾンビになりかけていたりしていたしね。
「ネイレスは優しいのね。でもね、その優しさは時に判断を鈍らせる。良い経験になったのでなくて」
「はい。身に染みて感じました。私は、ケンさんとユリしか信用しません」
「それが良いわ!私もケンさんとネイレスしか信じないことにする。ふふっ」
ユリさんとネイレスさんが俺の顔を見て、誓いをするように宣言をする。
「あー、はい。俺もユリさんとネイレスさんを信用します。これで良いか?」
「さすが、ケンさん。話が分かるわね!これ、契約の水よ。ぐいっと飲み干して」
「何を契約するのですか?」
「裏切らない事。ただそれだけよ」
「前にも飲んだけど、契約の水の効果って何だっけ?」
「契約の水は、精霊様との契約の簡易化したものよ。効力は落ちてしまうけど、契約を破れば、契約の水が毒に変わり死に至る。体内に少しでも契約の水がある限り毒に侵されるの。裏切らなければ良いだけよ」
効果の説明を受けた後、契約の水を飲む俺とネイレス。
「私から飲みます!うぐっ、苦い...」
「オェ、思い出した!あの時もこの苦い味だったな」
「ユリは飲まないのですか?」
「ええ、飲まないわ。ネイレス、安心して。私が裏切った場面、ケンさんの問答無用で殺されるから。ネイレスのことを裏切ったら、私を殺して構わないわ。そこに情は要らない」
「はぁ、ユリ、どうせ死ぬならケンさんに殺されたいと思っているでしょ?」
「あら、よく分かったわね」
「分かりますよ、それくらい。貴女を殺したくはないので裏切らないで下さいね」
「勿論よ。ケンさん、私の血を飲んで口直し」
ユリさんが人差し指の腹をきり、俺の口に突っ込む。それを見たネイレスさんが抗議する。
「ユリ!何をしているの!?」
「これは、ケンさんの寿命を伸ばすために必要なことよ」
「エルフの血...私も飲みます!」
ネイレスさんは、ユリの手首を掴み俺の口に突っ込んだ指を抜き咥える。
「ふふ、ケンさんと間接キス...」
「何をしているのよ!ああ、私の唯一の楽しみを...ネイレス、ここで戦争したいのね!」
ユリさんとネイレスさんが弾かれたように距離をとり戦闘態勢をとる。
「あのー、二人ともさっきから何をしているのさ。無駄な行動はやめなよ」
「ケンさんは黙って!」
「そうです!これはケンさんを懸けての戦いなのです!邪魔しないで下さい」
蚊帳の外になる俺。面倒だから先に進ませてもらおう。あまり騒ぎを起こしたくないから馬車から降りたのに、これでは意味ないじゃん。ネイレスさんの言葉...はぁ、マジかよ。何となく好意を感じていたけど、俺の勘違いではなそう。
「ユリ、貴女に確認したいことがあるの...」
「何かしら?」
「ケンさんとどこまでしたの?」
「ふふ、最後までよ」
嘘つけー!何が最後までだよ!
「ケンさん、それは本当なの?」
「ユリさんは、嘘をついている。キスもしたことない」
「ねぇ、ユリ。貴女残念ね。一緒に居ながらも...ッ!」
ユリさんがネイレスさんとの間合い詰め、ハイキックをする。それを腕で受け止めるネイレスさん。あの蹴り本気だぞ...ネイレスさんの腕が折れたんじゃないか?
「ケンさんとは、清い付き合いをしているの」
「清い?どの口がそれを言うのですかっ!」
殴り合いが始まる。泥まみれになる二人を止めず今度こそ前に進む。その内、気が晴れて戻ってくるだろう。
後書き
次回 到着
前回のあらすじ
主人公 ネイレスさんの強さを知る
本文
どーも、ネイレス女王陛下が旅仲間になって内心驚いているオッサンです。
ユリさんの勧誘なのか、ネイレスさんの希望だったのか俺には分からない。まぁ、ユリさんに友達が出来て良かったよ。ネイレスさんも楽しそうに笑っているし、ユリさんの病気と言っていいほどの俺への執着が薄れるなら喜ばしい限りだ。
「ケンさん、ユリ。順調に行けばそろそろ王族専用門に到着します。私の護衛ということでよろしいですか?」
仮面を装着した俺とユリさんは、ネイレスの言葉に頷く。雨が降る中、出来れば馬車のままで行きたいが、騒ぎになるくらいなら隠しておいた方がいい。全員、変装及び雨避けのネックレスを装備し馬車から降りる。
「ここから徒歩だけど、門からネイレスを迎えに来ることはないのか?」
「それはありません。私を恐れている者が、同乗するとは思えませんし」
「別に怖くないのに...ネイレスは、よくそんな環境で生活出来たわね」
「日々、胸が痛かったですし、人の目が怖かったです。それもこれも兄の計略だったと思うと、納得出来るものが多くあります。私は、兄にとって、ただのお飾りであり駒だったのですね」
「どうして、それに気づかなかったの?貴女なら、気づけたはずよ?」
「兄妹でしたから、きっと分かってくれると思っていました。殺されかけるその瞬間まで...ケンさんとユリに出会わなければ、キサラ法国の者に陵辱され殺されていたに違いありません」
「うわー...それは最悪な展開だな。なんでこの世界は、こんなに残酷なんだろうか」
俺は、この世界に来てから嫌な場面に遭遇することが多い。帝国では、セレネ姫がゾンビになりかけていたりしていたしね。
「ネイレスは優しいのね。でもね、その優しさは時に判断を鈍らせる。良い経験になったのでなくて」
「はい。身に染みて感じました。私は、ケンさんとユリしか信用しません」
「それが良いわ!私もケンさんとネイレスしか信じないことにする。ふふっ」
ユリさんとネイレスさんが俺の顔を見て、誓いをするように宣言をする。
「あー、はい。俺もユリさんとネイレスさんを信用します。これで良いか?」
「さすが、ケンさん。話が分かるわね!これ、契約の水よ。ぐいっと飲み干して」
「何を契約するのですか?」
「裏切らない事。ただそれだけよ」
「前にも飲んだけど、契約の水の効果って何だっけ?」
「契約の水は、精霊様との契約の簡易化したものよ。効力は落ちてしまうけど、契約を破れば、契約の水が毒に変わり死に至る。体内に少しでも契約の水がある限り毒に侵されるの。裏切らなければ良いだけよ」
効果の説明を受けた後、契約の水を飲む俺とネイレス。
「私から飲みます!うぐっ、苦い...」
「オェ、思い出した!あの時もこの苦い味だったな」
「ユリは飲まないのですか?」
「ええ、飲まないわ。ネイレス、安心して。私が裏切った場面、ケンさんの問答無用で殺されるから。ネイレスのことを裏切ったら、私を殺して構わないわ。そこに情は要らない」
「はぁ、ユリ、どうせ死ぬならケンさんに殺されたいと思っているでしょ?」
「あら、よく分かったわね」
「分かりますよ、それくらい。貴女を殺したくはないので裏切らないで下さいね」
「勿論よ。ケンさん、私の血を飲んで口直し」
ユリさんが人差し指の腹をきり、俺の口に突っ込む。それを見たネイレスさんが抗議する。
「ユリ!何をしているの!?」
「これは、ケンさんの寿命を伸ばすために必要なことよ」
「エルフの血...私も飲みます!」
ネイレスさんは、ユリの手首を掴み俺の口に突っ込んだ指を抜き咥える。
「ふふ、ケンさんと間接キス...」
「何をしているのよ!ああ、私の唯一の楽しみを...ネイレス、ここで戦争したいのね!」
ユリさんとネイレスさんが弾かれたように距離をとり戦闘態勢をとる。
「あのー、二人ともさっきから何をしているのさ。無駄な行動はやめなよ」
「ケンさんは黙って!」
「そうです!これはケンさんを懸けての戦いなのです!邪魔しないで下さい」
蚊帳の外になる俺。面倒だから先に進ませてもらおう。あまり騒ぎを起こしたくないから馬車から降りたのに、これでは意味ないじゃん。ネイレスさんの言葉...はぁ、マジかよ。何となく好意を感じていたけど、俺の勘違いではなそう。
「ユリ、貴女に確認したいことがあるの...」
「何かしら?」
「ケンさんとどこまでしたの?」
「ふふ、最後までよ」
嘘つけー!何が最後までだよ!
「ケンさん、それは本当なの?」
「ユリさんは、嘘をついている。キスもしたことない」
「ねぇ、ユリ。貴女残念ね。一緒に居ながらも...ッ!」
ユリさんがネイレスさんとの間合い詰め、ハイキックをする。それを腕で受け止めるネイレスさん。あの蹴り本気だぞ...ネイレスさんの腕が折れたんじゃないか?
「ケンさんとは、清い付き合いをしているの」
「清い?どの口がそれを言うのですかっ!」
殴り合いが始まる。泥まみれになる二人を止めず今度こそ前に進む。その内、気が晴れて戻ってくるだろう。
後書き
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