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6章 氾濫
43.氾濫Ⅲ
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昨今増え続ける魔物に脅かされつつも我々の生活は安定していた。なぜなら、魔物が森の外へ出ようとしなかったため、迂回をすれば距離は数倍にも跳ね上がるが、比較的安全に交易をすることができた。
だが、魔物が増え続けていることには変わらず、また、その魔物がとても強力になっていることは真実であり、つい先日、ギルドはDランク以下の低ランク冒険者がイーストフォレストへ立ち入ることを禁止した。つまりは、森の中心に近づかないと出会わないようなCランク以上の魔物が森の外側に出てきたということだ。
それは、森の中心にさらに強い魔物が現れたということだ。
強い魔物が弱い魔物を食らい、力をつけ、食い残しは魔素として拡散して更に魔物の強化につながる。
最悪の悪循環だった。
さらに最近では、森から追い出されたDランク以下の魔物が、近くを通る商人の馬車を襲い始めた。
Dランクといえば、武装した成人だとしても、素人であれば勝ち目が無いという強さのため、魔物が増え始めた時期に比べて更にひどいことになった。
オークなどの人型種に奴隷の少女が連れ去られたり、積み荷の食料を食い荒らされ、商品の装備品を武装した魔物は更に人を襲う。
門を通る人々の半数は怪我をし、血まみれであった。
そう、森が溢れるのは時間の問題であるということだ。
これでも俺たち疾風の矢は、森の中で魔物を狩り続け、魔素が拡散しないように焼却を繰り返してはいるのだが、それでも魔素は濃くなるばかり。魔物は減るどころか増える一方である。
もちろん、戦いに参加しているのは俺達ではなく、各国の精鋭部隊にも協力してもらっているのにもかかわらずこれである。
我々は、氾濫を止めることはできないようだ。
◇◆◇
森の奥、一人の少女はクスリと笑う。
耳は長く、肌は褐色で14~15歳くらいの少女の瞳は紅玉のように真紅に染まっており、空に浮かぶ大きな月を眺めていた。
月は満月に近く、大きく、森を明るく照らしていた。
「もうすぐじゃのう」
そう言うと再びクスリと笑う。
魔族の少女は言った。
「此度の裁きは如何程の物になるか、たのしみじゃのう」
そうつぶやくと、隣で眠っている巨大な魔物をひとなでし、眠りに落ちていった。
だが、魔物が増え続けていることには変わらず、また、その魔物がとても強力になっていることは真実であり、つい先日、ギルドはDランク以下の低ランク冒険者がイーストフォレストへ立ち入ることを禁止した。つまりは、森の中心に近づかないと出会わないようなCランク以上の魔物が森の外側に出てきたということだ。
それは、森の中心にさらに強い魔物が現れたということだ。
強い魔物が弱い魔物を食らい、力をつけ、食い残しは魔素として拡散して更に魔物の強化につながる。
最悪の悪循環だった。
さらに最近では、森から追い出されたDランク以下の魔物が、近くを通る商人の馬車を襲い始めた。
Dランクといえば、武装した成人だとしても、素人であれば勝ち目が無いという強さのため、魔物が増え始めた時期に比べて更にひどいことになった。
オークなどの人型種に奴隷の少女が連れ去られたり、積み荷の食料を食い荒らされ、商品の装備品を武装した魔物は更に人を襲う。
門を通る人々の半数は怪我をし、血まみれであった。
そう、森が溢れるのは時間の問題であるということだ。
これでも俺たち疾風の矢は、森の中で魔物を狩り続け、魔素が拡散しないように焼却を繰り返してはいるのだが、それでも魔素は濃くなるばかり。魔物は減るどころか増える一方である。
もちろん、戦いに参加しているのは俺達ではなく、各国の精鋭部隊にも協力してもらっているのにもかかわらずこれである。
我々は、氾濫を止めることはできないようだ。
◇◆◇
森の奥、一人の少女はクスリと笑う。
耳は長く、肌は褐色で14~15歳くらいの少女の瞳は紅玉のように真紅に染まっており、空に浮かぶ大きな月を眺めていた。
月は満月に近く、大きく、森を明るく照らしていた。
「もうすぐじゃのう」
そう言うと再びクスリと笑う。
魔族の少女は言った。
「此度の裁きは如何程の物になるか、たのしみじゃのう」
そうつぶやくと、隣で眠っている巨大な魔物をひとなでし、眠りに落ちていった。
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