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【落書き付き】グレートブリテン及び北アイルランド連合王国のパンに関するざっくりとしたメモ【2023/09/04追記】

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身分の高い・金銭的に余裕がある人々は、家屋敷にパンがまがあり、燃料のまきも十分に用意できる。
そのため、毎食「焼きたてのパン」を食べることができた。

身分の低い・金銭的な余裕がない人々の家には、パン窯がないこともある。パン窯がない家々がパンを焼く為には、村・町の共同窯を使うことになる。
もしパン窯を持っていたとしても、忙しい労働者には毎食パンを焼く時間的余裕はないし、そのための薪を準備する経済的余裕もない。
だから、一遍いっぺんに一日から数日分のパンをまとめて焼かねばならない。

と言うわけで、お金の心配がない人々は窯と燃料を贅沢に使った、一回の食事で食べやすい大きさの小さなパンを毎食焼く。
こういうパンを「ロール(roll)」と呼ぶ。

お金に苦労している人々は窯と燃料の節約を考えて、日持ちの良い大きな一塊ひとかたまりのパンを低頻度ていひんどで焼く。
そのパンは「ローフ(loaf)」と呼ばれる。

……というあたりを念頭に置いていただいて。


グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(イギリス)さんのパン事情は、素人にはまとめきれない難物なので、今回もライトに適当に、お絵かきができた分だけお送りします。

あと、描き手は「手書き文字」が大変苦手な性質タチなので、画内の文字が間違っている可能性があります。
(特に「焼」って字が怪しい。あと、ひらがなも全般的にかなり怪しい)
生暖かい目で見ていただけると大変有難いでございます。



ティンブレッド(Tin Bread)
ティン(Tin/スズ錻力ブリキ)の型にパン種を入れて焼き上げたパン。
ホワイトブレッド、ホワイトローフとも呼ばれる。
蓋なし型で焼くと上辺が盛り上がって山型に、蓋付き型で焼くと四角い形になる。
通常、日本で「イギリスパン」と言うと、これが出てくる。
スライスしてトーストしたり、サンドイッチにしたりする。
日本における食パンの元ネタの一つ。
大航海時代、長い航海に出る際に持ち運びしやすく切り分けやすいもの、として作られたのが始まりらしい。



ローフ(Loaf)
手で丸く成形するか、長方形の型に入れて焼いた、「大きなかたまり」のパン。
その時に食べる分だけスライスして、トーストしたり具材を乗せたり具材を挟んだりして食べる。
丸いパンはスライスするのが面倒なので、現代では長方形タイプ(つまりはティンブレッド)が主流になっているそうな。

コテージローフ(Cottage Loaf)
大きな丸ローフの上に小ぶりな丸ローフを載せて焼いた物。
珍奇なダルマ形の由来は、パン窯の床面積を有効活用するために縦方向に積み上げた説が有力。
上下分割してスライスして食べるのが一般的なのだけれど、やはり丸形は均等にスライスするのが面倒なので、一階建てのローフ以上に廃れているらしい。


イングリッシュマフィン(English Muffin)
英国では単に「マフィン」と呼ぶ。
アメリカさんに持っていったら、すでにカップケーキっぽいアレがが「マフィン(ケーキマフィン)」と呼ばれていたので、区別のために「イングリッシュ(英国風の)」と冠した。
生地を丸め、直径10cm前後の型に入れて柔らかく焼く。
これを上下二枚に割いて(切るのではなく割く)バターやジャムを塗ったり、ハム類、チーズ、卵なんかを挟んで食べる。
元は、貴族などに専属するパン職人が、主人達に供したパンの余り生地を丸めて焼いたもの、らしい。



ロール(Roll)
小さく分けた生地を丸形や細長に成形して焼いた小ぶりな一人用パンの総称。
なお、必ずしも生地を巻いロールして成形するわけではない。
また、形も丸っこいものから、日本で言うコッペパンを小ぶりにしたような細長いものまでイロイロある。
プレーンな生地の他、ナッツ類、ドライフルーツなど色々な具材を入れたりもする。
生地の成分やら具材やら作り方やら産地やらで、様々な種類・名称がある。
例えばハンバーガーに使われる「バンズ(Bun)」もロールの一種ということになる。


モーニングロール(Morning Roll)
皮がパリパリ・カリカリしているのが特徴のロール。
英国全土で食べられているのだけれど、なぜか「スコティッシュモーニングロール|(Scottish Morning Roll)」とか「スコッチモーニングロール|(Scotch Morning Roll)」とかの名前でも呼ばれる。
で、当のスコットランドではこのタイプは「バップ|(Bap)」と呼ばれてたりもする。
英語は難しいネー。



クランペット(Crumpet)
厳密に言うとパンではないが、大体「食事」として食べるものなのでピックアップ。
元は鉄板で調理した堅いパンケーキ。
現在は、酵母・ふくらし粉を使ったゆるめの生地を型に流し込み、柔らかいスポンジ状に焼いたもの。
シンプルな塩味で、それ自体には特別な風味はない。
表面の小さな気孔に、バター、蜂蜜、シロップなどしみこませたり、ジャム、チーズ、ピーナツバター、マーマイト、卵などをトッピングして食べる。
基本的には丸型を使って作られるが、トースターで焼けるように四角く成形したバージョンもある。

スコティッシュクランペット(Scottish Crumpet)
かなりゆるい生地で作る薄いパンケーキで、片面だけをきつね色にこんがり焼く。
んで、焼き上がるまで裏返さない。
焼き目側は平らになり、焼いていない面は気泡ができてデコボコになる。
ドライフルーツなんかを混ぜて焼くこともある。
ジャム、マーマイトなんかを乗せたりして食べる。


【余録】

サンドイッチ(Sandwich)
スライスしたパンに肉や野菜、卵等の具を挟んだり乗せたりした料理。
始めは酒の博打バクチの時の軽食として、主に労働者階級の間で流行した。
それゆえ、必然的にローフやらティンブレッドを薄く切った物を使って作られることになる。
これが、19世紀ぐらいから上流階級にも広がり、貴族の間で遅い夜食としても食べられるようになった。
名称は第4代サンドウィッチ伯爵ジョン・モンタギューが、趣味のカードゲーム中にゲームを中断せずに食べられるように作り出したことににちなんで付けられた。
……とされるが、実のところ伯爵自身がサンドイッチを発明したわけでも、好んだわけでも、推奨したわけでも無いとか。
そもそも伯爵は政治家として大変忙しい方で、カードゲームをする余裕もなかったそうな。
あと、貴族の皆さんのサンドイッチは矢鱈やたら胡瓜キュウリを挟みたがる傾向があるが、これは、かつては高級食材だった胡瓜をサンドイッチにふんだんに使って、客に供して見せびらかすことが目的だったことの名残らしい。


マーマイト
ビールの醸造過程で最後に沈殿堆積した酵母(ビールの酒粕)を主原料とし、主にイギリス及びニュージーランドで生産されているビタミンB含有食品。
つまるところ、食べるエビオス錠。
イギリス本土ほか、ニュージーランド、オーストラリア、アイルランドなどの旧英国領で大衆食として広く愛されている。
濃い茶色で、粘り気のある半液状ドロドロ塩味が強メチャクチャしょっぱく、独特の臭気を持つ。
バターやマーガリンと一緒にパンに塗る、クラッカーに塗る、スープの調味料として使う、などして食される。
フランス人には「イギリスのジャム(La Confiture Anglaise)」と呼ばれているが、彼の国はお隣の国の名前を悪口として使うことがままあるので、まあそう言う意味なのだろう。


【2023年9月4日追記】
ナショナルローフ(National Loaf)

1942年、第二次世界大戦中のイギリス政府により考案されたパン。
食料の海上輸送をドイツの潜水艦Uボートにより封じられた政府が、小麦と砂糖の不足を補うため――つまりそれらの使用量を減らすため――にレシピを作成した。
小麦粉をあまり搗精とうせいしない「全粒粉」|(最高で小麦からの抽出率が驚異の90%。普通の白い小麦粉は70%)をベースとし、砂糖を使わず、場合によっては馬鈴薯粉じゃがいものこな、オーツ麦、大麦などを加え、さらに国民の健康を鑑みてカルシウムやビタミン類を添加した。
形状的には通常の白いパンホワイトブレッド|(ティンブレッド)と同一だが、色は灰褐色ブラウンで、食感はもそもそしている。

当初、パン屋は普通の白いパンホワイトブレッドを作ることが禁止されて、ナショナルローフだけを製造販売させられた。
食糧事情のさらなる悪化に伴い、1946年の7月からナショナルローフの販売すら禁止される。
人々の主食は完全に配給制に切り替えられ、国家の統制下に置かれた。
ナショナルローフは「国民のパン」の名の通り、王室含めて全国民が食するパンとなった。

この茶色いパンは通常の白パンに競べて大変、国民の七人に六人は「好まない」味であったとされる。
そのため、
「このパンはヒトラーの秘密兵器である」
と皮肉る者もいたとか。
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