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2013年9月19日。こんな夢を見た。

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 引越し先は、山の中腹の一軒家だった。
 古く、大きな家だ。元は地元の名士の屋敷だったという。
 継ぐものがいなかったため長く放置されていたのを、どういう伝手があったものか我が家のような貧乏人が住むことになった。

 玄関を入ると、けやきの一枚板の衝立がてらてらと油びかりを放ちながら出迎えてくれた。
 中に入れば、達筆すぎて読めない書額が部屋ごとに掲げられており、立派な螺鈿細工の座卓が鎮座 し、分厚い座布団が並べられている。
 どうやら前の住人の荷物がそのまま残っているようだ。あまり気味の良いものではない。
 しかしそこは貧乏人の貧乏な根性というもので、家財を新調しなくて済むことはたいそうありがたく思えた。

 建物は平屋だったが、納戸代わりの屋根裏があるというので、急な階段を登ってみた。
 電灯のたぐいは無いはずだが妙に明るい。床には相当な埃が積もっているのに、空気に埃臭さはなかった。
 古い家具が林のように並び、明日からでも民宿が営めるほど大量の布団の山がそびえている。
 太くて立派で曲がりくねった梁をくぐり、奥へと向かうと、布団山の陰に籐の椅子が一脚あった。
 背筋に冷たいものを感じた。

 足元を、黒っぽく、生暖かい、ヌメッとした小動物が走ってゆく。
 ソレが籐椅子の下でキィキィと鳴いている。
 恐る恐る――ある種の期待を持ちつつ――覗きこんだ。

 ……そこには地元の名士の母親の枯骸みいらが……ありはしなかった。

 この世の中、思ったような事変は、簡単に起こったりしない。
 安堵と拍子抜けを合図にして、尿意が襲ってきた。

 面倒なことに、お手洗いの出入口は家の外にある。
 脚を震わせながら階段を降り、玄関を出、家の周りをぐるりと半周して、板戸の前にたどり着いた。
 臭突しゅうとつの天辺で、風力換気扇がカラカラと回っている。
 ドアを開けると板張りの床に、ぽかんと四角く穴が切られていた。
 ここにしゃがみこんで用を足すという式らしい。
 四角い穴の下には水が流れている。
 その水は、正面の壁下に小さく繰り抜かれた窓の外の、轟々と流れる用水に流れ込んでいた。

 何よりもまず、トイレの改修が必要だ。
 私は穴の上にぺたりと尻を落として、息を吐いた。

 ……そんな夢を見た。
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