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軍争篇 第七
軍争篇1・急がば回れっす。
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オレの考え、言っちゃいますよ。
戦争っていう国を挙げての大イベントをやる手順なんですけども。
まず、将軍のところに王様から命令が出ちゃいます。そしたら、必要な数の兵隊さんを招集しちゃう。んで、行軍して陣地の設営とかをする。
そうやって準備が出来たら、敵さんチームと戦うって段取りなワケですですよね。
で、実際一番しんどいのは、どうやって戦い始めるかって事じゃないですかね。
いや、当たり前の話だっておっしゃいますけども。
ほらさっき、戦争の主導権を取るためには、相手より早く行動した方がイイって話したじゃないですか。覚えていらっしゃいますか?
そのコツってのをサクッと言い表すと、【急がば回れ歩道橋】、みたいな。
目的地が一桁国道の向こう側のすぐそばに見えたとしましょうか。真っ直ぐ進めば近いような気がするけど、実際、交通量なんか半端なくバリバリで、かえって渡るのが手間なんですよ。第一危なっかしいじゃないですか。
歩道橋は階段上るのがしんどいように見えるけど、その手間を考えたとしても、実際には安全確実でお得なルートだったりするんですよ。
急がば回れ……じゃ交通安全標語みたいで、ちょっとダサい、ですか?
じゃ、格好いいネーミングしちゃいましょう。
「迂直の計」
ってのはどうです?
この、迂と直を上手いこと使い分ける作戦ってヤツを知っている人は、
「遠回りしてるように見せかけて相手を油断させておいて、ガッツリ優位なポジに着いちゃう」
とか、
「遅刻確定なスタートなのに、相手より早くゴールしちゃう」
みたいな凄いなコトが出来ちゃんです。
大体、戦争ってのは、そりゃ上手いことやればお得な結果が着いてきますよ。でも、危ないことこの上ないものもまた戦争ってヤツでして。
いくら戦場に早く着いた方が良いっていったって、「全軍」をひとまとめにして進もうとしたら、どうしたって動きは鈍くなる。
そもそも「全軍」の中には歩兵や騎兵や軽装備の「足の速い部隊」も、荷物が多かったり重装備だったりする「遅い部隊」も入り交じっちゃってる訳でしょ? 全員に同じことさせたら、絶対バラバラになっちゃいますもん。
だからって、足の速いとこだけ先に突っ走らせちゃったりしたら、大きな道具や機材を運んでる輜重部隊が取り残されちゃう。人員だけ先に着いちゃって、機材が届かないんじゃ、陣地を作ったりとかできないじゃないですか。
そんなことになったら、いくら相手チームより早く現地入りしたって、相手チームより準備が遅れちゃいます。それダメじゃん。意味ないじゃん。違いますか?
もしも、デスヨ。
鎧とか着なくてもイイから、ともかく身軽な状態で、朝から晩まで、普通の倍の距離を突っ走って、四百粁離れた戦場を目指せ、なんてスケジュールを組んだとしましょうよ。
そんなモノ、全軍敵さんに捕まって終了、ですよ。
だってそうでしょ? そんな無茶したら、元気の良い連中だけ先に進んじゃって、ヘトヘトさんたちはドンドン遅れて、脱落しちゃう。しんど過ぎて、逃げちゃう兵隊も出るんじゃないですかね。
そうすると、目的地に着いたときには人数が最初の十%ぐらいになっちゃってますよ。
半分の二百粁の移動距離だったとしても、一番に現場に着いた部隊の将軍さんなんかはもうヘロヘロに疲れちゃってるから、サクッと敵さんにヤられちゃっうかもしれませんねぇ。んで、兵隊さんも半分は落伍してるんじゃないですかね。
コレじゃ勝てる訳がない。
百二十粁でも、三分の二ぐらいの人数の兵隊さんしか目的地までたどり着けないんじゃないですかね。
ついてこられなかった三分の一ってのは、大体が足の遅い荷物の多い部隊ですよ。機材や武器やなんかを運んでくれてたり、兵隊さんのご飯のや牛馬の餌なんかを運んでくれてる大切な部隊ですね。
戦場にそういう大事な裏方さんがいなかったら、どうなっちゃいます?
オレにはバッドエンド以外のエンディングが想像できませんよ。
あ、そうそう。
戦争なんていうでっかいイベントをやるからには、ご近所の王様さんにちゃんとお話をして、味方に付けとかないと不味いっすよね。だからそういう偉い人たちの思惑が判ってないといけない。
どういうご接待をしたら喜ぶかな、とか、何をお土産にしたら仲良くしてくれるかな、とか、よーく考えて話し合っておく必要がありますよねー。
他所の王様の皆さんだって、自分のところに得があれば、そりゃ協力を惜しまないでしょう。みんな利益が欲しいんですもの。
逆に、損が降りかかって来るなら、むしろ敵さんチームの方に付いちゃおうってことにだってなっちゃう訳ですよ。
あと、戦場になるところは勿論、通り道や、万一の時の逃げ道になる場所の、地形……山とか林とか、谷や崖、川や池なんかをよく知ってないと、行くも帰るもままならなくないですか?
そういう慣れない所に行くときには、その辺りに詳しい案内役が必要ですよ。地元の人を案内役さんに雇っちゃいましょうよ。
地形が判ってないと、例え上手く使えばこっちが有利になりそうな抜群の地形があったとしても、気付かないまま利用できなかった、ってことになっちゃったりしますもん。
どうしても戦争しないとイケないってことになったら、最低限、あらかじめ自分のチームが有利になるようにコトを進めておきましょう、ってことですよ。
んで、そういうのが敵さんにバレないようにしておく。……ってか、むしろこっちが不利になってるみたいに思わせて騙しちゃう。
向こうが油断している間に、こっちは余裕で行動しましょう。
余裕かましながら、全員で固まって動いた方が良いときと、小分けにして行った方が良いときを見極めて行動する。……つまり臨機応変に行動しちゃうのが良いんですよね。
ああ、オレってば臨機応変って言葉、大好き過ぎるかも。
戦争っていう国を挙げての大イベントをやる手順なんですけども。
まず、将軍のところに王様から命令が出ちゃいます。そしたら、必要な数の兵隊さんを招集しちゃう。んで、行軍して陣地の設営とかをする。
そうやって準備が出来たら、敵さんチームと戦うって段取りなワケですですよね。
で、実際一番しんどいのは、どうやって戦い始めるかって事じゃないですかね。
いや、当たり前の話だっておっしゃいますけども。
ほらさっき、戦争の主導権を取るためには、相手より早く行動した方がイイって話したじゃないですか。覚えていらっしゃいますか?
そのコツってのをサクッと言い表すと、【急がば回れ歩道橋】、みたいな。
目的地が一桁国道の向こう側のすぐそばに見えたとしましょうか。真っ直ぐ進めば近いような気がするけど、実際、交通量なんか半端なくバリバリで、かえって渡るのが手間なんですよ。第一危なっかしいじゃないですか。
歩道橋は階段上るのがしんどいように見えるけど、その手間を考えたとしても、実際には安全確実でお得なルートだったりするんですよ。
急がば回れ……じゃ交通安全標語みたいで、ちょっとダサい、ですか?
じゃ、格好いいネーミングしちゃいましょう。
「迂直の計」
ってのはどうです?
この、迂と直を上手いこと使い分ける作戦ってヤツを知っている人は、
「遠回りしてるように見せかけて相手を油断させておいて、ガッツリ優位なポジに着いちゃう」
とか、
「遅刻確定なスタートなのに、相手より早くゴールしちゃう」
みたいな凄いなコトが出来ちゃんです。
大体、戦争ってのは、そりゃ上手いことやればお得な結果が着いてきますよ。でも、危ないことこの上ないものもまた戦争ってヤツでして。
いくら戦場に早く着いた方が良いっていったって、「全軍」をひとまとめにして進もうとしたら、どうしたって動きは鈍くなる。
そもそも「全軍」の中には歩兵や騎兵や軽装備の「足の速い部隊」も、荷物が多かったり重装備だったりする「遅い部隊」も入り交じっちゃってる訳でしょ? 全員に同じことさせたら、絶対バラバラになっちゃいますもん。
だからって、足の速いとこだけ先に突っ走らせちゃったりしたら、大きな道具や機材を運んでる輜重部隊が取り残されちゃう。人員だけ先に着いちゃって、機材が届かないんじゃ、陣地を作ったりとかできないじゃないですか。
そんなことになったら、いくら相手チームより早く現地入りしたって、相手チームより準備が遅れちゃいます。それダメじゃん。意味ないじゃん。違いますか?
もしも、デスヨ。
鎧とか着なくてもイイから、ともかく身軽な状態で、朝から晩まで、普通の倍の距離を突っ走って、四百粁離れた戦場を目指せ、なんてスケジュールを組んだとしましょうよ。
そんなモノ、全軍敵さんに捕まって終了、ですよ。
だってそうでしょ? そんな無茶したら、元気の良い連中だけ先に進んじゃって、ヘトヘトさんたちはドンドン遅れて、脱落しちゃう。しんど過ぎて、逃げちゃう兵隊も出るんじゃないですかね。
そうすると、目的地に着いたときには人数が最初の十%ぐらいになっちゃってますよ。
半分の二百粁の移動距離だったとしても、一番に現場に着いた部隊の将軍さんなんかはもうヘロヘロに疲れちゃってるから、サクッと敵さんにヤられちゃっうかもしれませんねぇ。んで、兵隊さんも半分は落伍してるんじゃないですかね。
コレじゃ勝てる訳がない。
百二十粁でも、三分の二ぐらいの人数の兵隊さんしか目的地までたどり着けないんじゃないですかね。
ついてこられなかった三分の一ってのは、大体が足の遅い荷物の多い部隊ですよ。機材や武器やなんかを運んでくれてたり、兵隊さんのご飯のや牛馬の餌なんかを運んでくれてる大切な部隊ですね。
戦場にそういう大事な裏方さんがいなかったら、どうなっちゃいます?
オレにはバッドエンド以外のエンディングが想像できませんよ。
あ、そうそう。
戦争なんていうでっかいイベントをやるからには、ご近所の王様さんにちゃんとお話をして、味方に付けとかないと不味いっすよね。だからそういう偉い人たちの思惑が判ってないといけない。
どういうご接待をしたら喜ぶかな、とか、何をお土産にしたら仲良くしてくれるかな、とか、よーく考えて話し合っておく必要がありますよねー。
他所の王様の皆さんだって、自分のところに得があれば、そりゃ協力を惜しまないでしょう。みんな利益が欲しいんですもの。
逆に、損が降りかかって来るなら、むしろ敵さんチームの方に付いちゃおうってことにだってなっちゃう訳ですよ。
あと、戦場になるところは勿論、通り道や、万一の時の逃げ道になる場所の、地形……山とか林とか、谷や崖、川や池なんかをよく知ってないと、行くも帰るもままならなくないですか?
そういう慣れない所に行くときには、その辺りに詳しい案内役が必要ですよ。地元の人を案内役さんに雇っちゃいましょうよ。
地形が判ってないと、例え上手く使えばこっちが有利になりそうな抜群の地形があったとしても、気付かないまま利用できなかった、ってことになっちゃったりしますもん。
どうしても戦争しないとイケないってことになったら、最低限、あらかじめ自分のチームが有利になるようにコトを進めておきましょう、ってことですよ。
んで、そういうのが敵さんにバレないようにしておく。……ってか、むしろこっちが不利になってるみたいに思わせて騙しちゃう。
向こうが油断している間に、こっちは余裕で行動しましょう。
余裕かましながら、全員で固まって動いた方が良いときと、小分けにして行った方が良いときを見極めて行動する。……つまり臨機応変に行動しちゃうのが良いんですよね。
ああ、オレってば臨機応変って言葉、大好き過ぎるかも。
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