上 下
11 / 69
謀攻篇 第三

謀攻篇その1・攻城戦はマジでオススメしないっす。

しおりを挟む
 いや、オレ思うんですけどね。

 戦争センソーで一番オイシイ勝ち方っていうのは、相手の国力を全然ゼンゼン消耗させないで、まるっとゲットしちゃうことなんじゃなかろうか、って。

 戦う前とか、戦い初めてもホントの序盤のウチに、相手の軍隊を無傷で降参させちゃうのがベストで、全滅させちゃったら意味が無いんじゃないかなーって。思いません?

 旅団ダンタイサンは全体をまるっと降参させちゃう方がよくて、コレカイメツさせちゃったらだめ。

 百人ぐらいのチームも、そのまんま降伏させるのがよくて、撃破しちゃうのはマズイ。

 五人ぐらいの人達が固まってきたら、五人全員をそっくり仲間にしちゃうのがよくて、この人達を蹴散らしちゃ巧くない。

 はい、とても大切タイセツなコトなので、五回ぐらい似たようなことを繰り返して言いました、っと。

 つまり、相手の国土や国民パンピーや軍隊や財産やなんやかんやが、戦争のせいでボロボロになっちゃってたら、せっかくこっちが勝ってそういうのを手に入れたそしても、お徳感が薄れちゃいませんか、ってことですよ。

 たまにいるじゃないですか、百戦百勝とかいって、自慢しちゃう人。
 俺なんかに言わせて頂ければ、百回バトって百回とも相手ボコりました、なんてのは、実はベスト・オブ・ベストじゃあないンですよ。ぶっちゃけ、そんなもの自慢になりゃしない。
 じゃあ、どういうのがいいのか、って話になりますよね、当然。
 一番いのは、こっちが拳骨ゲンコツ振り回すまでもなく、相手の人たちに「ゴメンナサイ」させちゃうこと。
 だってそうでしょ? 自分もパンチしなくてイイから痛くないし、相手もボコられてないから痛くないですもんね。これなら損するところが一つも無いじゃあーりませんか。

 ベストなのは、武力行使なんかしちゃう前に、向こうがタクラんでること先取りして防いじゃうこと。これも素敵ナイスなやり方でしょ?
 そんで、そういう素晴すンばらしい状態に持って行くってのが、王様と外交担当マネージャーのお仕事ですね。外交は口舌オシャベリの段階でもう戦争っすから。

 ベターなのは、向こうが仲良くしてる人とこっちがもっと仲良くなっちゃって、向こうをボッチにさせちゃうこと。
 援軍ヘルプ頼んでもだれも入ってくれない、って状況になったてのが判っちゃえば、フツーに頭の良い王様や大臣セイジカさんなら、大体はこっちの言うことを聞いてくれちゃいます。

 それでもだめなら、もう仕様ショーが無い。こっちから軍隊を動かして、相手チームを叩く。徹底的テッテーに。こっちから打って出て、相手チームが「ゴメンナサイ」って土下座するまで、ボコボコに攻撃すボコる。

 あ、でも打って出るって言ったって、いきなり相手のテリトリーに攻め込んじゃうのは、ハッキリ言ってお勧めできないなぁ。それって最後の最後の手段ですよ。ホントーに他の方法が一個もないときに、仕方なくやるヤツ。
 いや真面目マジな話、城攻めだけはやらない方が良いんです。いや、真面目マジで。ガチ本気で。駄目ダメ絶対ゼッタイ

 何で駄目ダメかっていうと、手間&暇&お金がガッツリ掛かっちゃうから。
 いやいやいやいや、本当に面倒くさいんですよ、城攻めって。面倒な上に、あんまりお得な結果にはならないと来てます。

 お城を落とすには、こっちもアシバ組んだり、轒轀ユンボ持ってきたり、工具ツールとか機械マシーンとか用意したりしなきゃ行けないじゃないですか。そういうの、ちゃんと準備したら……そう大体三ヶ月ぐらいかかっちゃう計算ですよ。
 そうやって準備が出来たら、地盤工事するんですけどね。相手のお城の近くまで行って、塹壕アナ掘ったり、土塁ヤマ盛ったりするでしょ? で、これも三ヶ月ぐらい必要になるわけですよ。
 三ヶ月+三ヶ月で、合計六ヶ月ですよ、実際に戦闘に入る前に。

 そうやって半年がかりで準備しないとダメなんだけど、タマに待ちきれない短気な現場の将軍リーダーさんがイラついちゃって、よく理解ワカってもないのに、
「兵は拙速を(以下略)!」
 みたいな生半可ナマハンカなこと言い出しちゃったりするんですわ。
 そいで、何の作戦もなく攻め込んで、兵隊メンバーさんたちに城壁よじ登らせよう、なんて無茶なことをやるんですよ。
 そういうの、専門用語で「」ってんですよ。アリンコがお砂糖に群がるみたいなやつってことです。統率も何もない、割とカッコ悪い攻め方ですよ。

 城方ムコウにとっては、
「確変大チャンス、キタコレ!」
 ってやつで、バンバン狙い撃ちしちゃうでしょ。

 石落としーの、矢の雨降らせーの、お湯ブチけーの。
 あ、酷いトコだと、お湯じゃなくっておかゆの熱いヤツ浴びせてきたりするんですよ、
 あれベトベト張り付いて剥がせないもんだから、大やけどの範囲がスゴク広くなっちゃうんですよ。冷めちゃってもベタ付く上にツルッツル滑るし。
 あとは、汚い話ですけど……排泄物、可愛く言うとウンコとかオシッコね。アレをアツアツに湧かして撒きやがったりんですよ。熱いわ、臭いわ、病気になるわで、ホントに悲惨ヒサンなことになるんですって、これが!
 攻め手のほうからすれば 城壁クライミング中で右にも左にも上にも下にも逃げようがないってのに……。酷いことすると思いません? マジ極悪。

 ……え? それ俺がやられた経験談かって? それ、訊いちゃいますか? ノーコメントですけど。

 それはともかく。
 こういう案配アンバイの防御を取られると、兵隊メンバーの三十三パーは殺されちゃいます。ええ、三人に一人は死ぬんですよ。
 三人に一人死んだ上に、絶対に城を落とせないんです。
 何故言い切れる勝って? そりゃ考えてもみて下さいよ。兵力が、つまりは攻撃力が三分の一減ってるんですよ? そんなやり方じゃ絶対に無理でしょ。ムチャですよ、その状態で戦争続けちゃうの。
 こういう状態で死んじゃった三分の一の兵隊メンバーさんたち、これ、向こうの城兵ヤツラられちゃったってーよりは、味方の、つまりはムチャな作戦取っちゃった駄目な将軍リーダーに殺されちゃった感じ、しません? それマジ、浮かばれないですよねー。

 だからほら、城攻めなんて基本損しかないじゃないですか。いきなり城攻めなんて戦い方は、絶対やっちゃダメっすよ。いやホントに。

 これ、何が言いたいかってコトですけども。
 戦争が上手な将軍リーダーって言うのは、ドンパチだけややって敵を倒したりして勝つんじゃないンす。
 城だってこっちから攻撃仕掛けて「落城」させるんじゃないんですよ、これが。
 敵の国を倒すのに、そんなをかけない。それが賢い将軍リーダーのやり方です。

 兵力なんか使わずに、全部、まるっと、パパッと頂戴しちゃう方法でテッペン取っちゃうんですよ。
 そうすれば、兵隊メンバーさんは疲れないし、こっちの損はこれっぽっちもない。
 そういう「謀攻こうぼうの法」っていうやつ、つまり「頭使って作戦勝ち」を狙っていきましょーよ。

 そこで、戦争センソーする時の基本のキなんですけども……軽く「算数」しますよ。

 自分のチームに敵のチームよりも十倍ぐらいの兵力が――兵隊メンバーの数とか、兵器キザイの数とか、あとぶっちゃけ戦費コレとか、全部ひっくるめたパワーですね――それくらいパワフルに力の差があったらどうしたら良いでしょうか?
 答えは、敵をぐるっと囲んじゃう。
 敵さんチームのお城とか陣地とかを、兵隊メンバーさんも戦車も兵器もずらずら並べて、取り囲んじゃうんです。
 敵さんチームから見たら、周り全部が強そうな敵ばっか、ってなるでしょ?
 そりゃ戦意なんかガリガリ削れちゃいますよね? 撃って出ようなんて気にならないですよね? あっさり降参しちゃいますよね? でしょ? でしょ?
 そうなれば、こっちは何の損失もなく、痛いこともなく、その上、敵さんの持ってる「全然減ってない兵力」も、ごっそりこっちのモノですよ。
 イケてるでしょ?

 十倍まで行かないけど五倍ぐらいは兵力差があるかなぁ、って時は、思い切りどーんと攻め込んじゃう。
 あ、でもですね、コレも実際に斬った貼ったするために出陣しちゃうんじゃないんですよ。
 怖がらせちゃうの。
 だって、五倍も多い敵が向かってきたら、大体は、戦う前か、ちょっと戦ったぐらいで諦めて白旗上げちゃうじゃないですか……よっぽどの莫迦オバカサンじゃ無い限りは。万一、よっぽどの莫迦だった場合は、五倍の兵力差ってヤツを見せつけて差し上げれば良いだけなんですけどね。

 いやいや五倍も無いかな? 大体二倍ぐらいかなーって時。
 そういうときは、手を出すんじゃなくて、手を回しちゃうんです。
 つまり、向こうの仲間内とかお友達関係をチョキっと分断しちゃう。
 本国とか別動部隊や何かとの連絡とか、同盟してる他の国との行き来とかを、妨害しちゃうんですよ。
 そうすれば、仲間のまとまりがないわ、お友達も頼れないわ、って状態で、センソーする気にはならなくないですか?

 兵数ではイーブンかな、なんてことだったら戦っちゃってもいいかな……。
 あ、勿論モチロン、こっちから向こうのお城や陣地テリトリーンじゃなくて、相手をこっちが有利に戦える場所まで引っ張り出して戦うんですよ。
 で、戦うとなったら、そりゃもう目一杯頑張る、と。

 よくよく考えたら、こっちの兵力のがちょい少ないぞ、ってときは、キッパリ逃げましょう。
 だって向こうの方が強いってコトですからね。勝てないですもん。勝てない戦争をふっかけちゃ駄目です。
 モチ、逃げた後でこっちの体勢を立て直して、も一遍ッペン、作戦を練り直しましょう、って事で。

 もしも、コレ絶対向こうのが強いよねーってなっちゃってたとしたら、そんなときは戦おうなんてこれっぽっちも考えちゃダメっすよ。全力で回避。
 何があっても戦争は避けちゃって、こっちの国力を減らさずに済む方法を考えましょうよ。

 大体、兵員メンツが少なくて弱っちいチームが、イキッて強がってみせたって無駄ですもん。
 どう足掻いたって、頭数が多くて強いチームには敵わないでしょ。
 もしそんな状態でこっちから戦争仕掛けちゃったとしたら、兵隊メンバー将軍リーダーも、それからお国の王様も、捕まっちゃってお終いエンド、ですもン。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし

佐倉 蘭
歴史・時代
★第10回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ ある日、丑丸(うしまる)の父親が流行病でこの世を去った。 貧乏裏店(長屋)暮らしゆえ、家守(大家)のツケでなんとか弔いを終えたと思いきや…… 脱藩浪人だった父親が江戸に出てきてから知り合い夫婦(めおと)となった母親が、裏店の連中がなけなしの金を叩いて出し合った線香代(香典)をすべて持って夜逃げした。 齢八つにして丑丸はたった一人、無一文で残された—— ※「今宵は遣らずの雨」 「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

剣客居酒屋 草間の陰

松 勇
歴史・時代
酒と肴と剣と闇 江戸情緒を添えて 江戸は本所にある居酒屋『草間』。 美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。 自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。 多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。 その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。 店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。

鈍亀の軌跡

高鉢 健太
歴史・時代
日本の潜水艦の歴史を変えた軌跡をたどるお話。

ヴィクトリアンメイドは夕陽に素肌を晒す

矢木羽研
歴史・時代
カメラが普及し始めたヴィクトリア朝のイギリスにて。 はじめて写真のモデルになるメイドが、主人の言葉で次第に脱がされていき…… メイドと主の織りなす官能の世界です。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

戦争はただ冷酷に

航空戦艦信濃
歴史・時代
 1900年代、日露戦争の英雄達によって帝国陸海軍の教育は大きな変革を遂げた。戦術だけでなく戦略的な視点で、すべては偉大なる皇国の為に、徹底的に敵を叩き潰すための教育が行われた。その為なら、武士道を捨てることだって厭わない…  1931年、満州の荒野からこの教育の成果が世界に示される。

熱砂の風

神光寺かをり
歴史・時代
荒涼とした砂漠の果てに赴く一人の若者。 その彼に昂然と矢を放つその弟。 兄の名は孟高。 弟の名は仲穎。 彼らの姓は「董」――。 三国志にその悪名を刻む男の、若き日を描く掌編。 この作品は作者Webサイト・小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+でも公開しています。

処理中です...