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「絶望という名の救い」
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町へと近づく巨大な怪物、ヴリトラ。千年の眠りから覚めた怪物の背中で三人の男女が死闘を繰り広げていた。
「はああああ!」
隼人は刀身を何度も振るって、光に攻撃を当てようと迫っていく。しかし、対する光は余裕そうな笑みを浮かべながら、攻撃をかわしている。
その後ろから結巳が斬りかかったが、まるで先読みされていたように躱されてしまった。
聖堂寺光の実力は想像以上だった。結巳と同じ適正率の高さを誇っているので実力は確実に高いと予想していたが、それすらも凌駕していた。
「その動きでは私には届きませんよ」
「がっ!」
光が隼人の腹部に強烈な張り手を打ち込んできた。隼人は呼吸すら苦しくなるほどの鈍痛を受けて思わず、歯を食い縛る。
「氷結斬」
結巳の勢いを込めた斬撃が光に向かっていくが、それも易々と躱されて逆に蹴りを受けてしまった。
「さすが聖堂寺家当主様は強いな」
「幼少から鍛錬を積んでいましたからね」
「その力があれば多くの人を救えたはずだ。なぜこんなことを」
隼人は荒い息を吐きながら、光に問いかけた。
「聖堂寺家の長男として、様々な人と顔を合わせて来ました。その中で親しい人や恋慕を抱いた人もね。ですが皆、戦地で散っていきました。悲しいと思いませんか? 虚しいと思いませんか? 大切な存在が失われていくこんな世界が」
隼人は光の瞳と言葉から信じられないほどの虚無感が漂ってくるのを感じた。一度や二度ではない。
何度も味わい、積み重ねてきた故の言葉の重み。彼に対して哀れみを覚えた。
「そして、それらの争いを生み出したのは自分達の家だと知った事は胸が張り裂けそうでしたよ」
「だからお父様を」
「ええ。だから全てを終わらせるんですよ。これ以上誰もが大切なものを持たない、失わない世界を創る!」
「そんな事の為に大切なものを守ろうとしている人を貶めようとしているのか!」
「その守ろうとする人すらも失われる! それがこの世界だ!」
光が端正な顔を歪めて、破壊の意志を口にした。途端に彼の身の回りに途轍もなく重厚な気迫を感じた。
「神速。星跨ぎ」
一瞬だった。光が凄まじい速度で斬り込んできたのだ。あまりの速さと勢いで隼人は後方へと飛んでしまった。
「くっ!」
「まだこんなものではない!」
光が長い白髪を揺らしながら、電光石火の速度で切り込んでくる。突然ながら剣の腕もかなり高い。
「影焔!」
黒炎を纏った刃を振りかざすと、光が後方へと引き下がった。結巳がすぐさま隼人の近くに戻り、刃先を光に向ける。
「その剣術。実際に見るとやはり恐ろしい。さすが暗殺剣と行ったところですね」
「暗殺剣? どういう事だ?」
「おや? 知りませんか? あなたが今、使っている影焔も北原ソラシノが使っている影ノ雷も元は聖堂寺分家、鳳が生み出したものですよ」
突然、突きつけられた衝撃の事実に隼人は目を丸くした。同時に隼人の背筋にじっとりとした嫌な汗が流れる。
「鳳家はかつて聖堂寺の分家として活動した際、主に聖堂寺に仇なすものを粛清、もしくは暗殺する事が生業でした。その中には一族の中から本家に反旗を翻すものもね。その中で生み出した最凶の剣術。それがあなたの使っている暗殺剣ですよ」
「じゃあ、この剣を教えたのってまさか」
隼人はある程度、察しがついていた。祖父にこの剣術を教えたのが誰なのか。
そして、同時に信じたくないという気持ちが胸を包んだ。
「さて。おしゃべりはこれくらいにして」
光が聖滅具を強く降ると、柄の下部分からもう一つの刀身のようなが出てきた。
それはまるで弓のようだ。
「光の速度で射抜いて差し上げましょう」
弓を構えた美しい青年が不気味な笑みを浮かべた。
「はああああ!」
隼人は刀身を何度も振るって、光に攻撃を当てようと迫っていく。しかし、対する光は余裕そうな笑みを浮かべながら、攻撃をかわしている。
その後ろから結巳が斬りかかったが、まるで先読みされていたように躱されてしまった。
聖堂寺光の実力は想像以上だった。結巳と同じ適正率の高さを誇っているので実力は確実に高いと予想していたが、それすらも凌駕していた。
「その動きでは私には届きませんよ」
「がっ!」
光が隼人の腹部に強烈な張り手を打ち込んできた。隼人は呼吸すら苦しくなるほどの鈍痛を受けて思わず、歯を食い縛る。
「氷結斬」
結巳の勢いを込めた斬撃が光に向かっていくが、それも易々と躱されて逆に蹴りを受けてしまった。
「さすが聖堂寺家当主様は強いな」
「幼少から鍛錬を積んでいましたからね」
「その力があれば多くの人を救えたはずだ。なぜこんなことを」
隼人は荒い息を吐きながら、光に問いかけた。
「聖堂寺家の長男として、様々な人と顔を合わせて来ました。その中で親しい人や恋慕を抱いた人もね。ですが皆、戦地で散っていきました。悲しいと思いませんか? 虚しいと思いませんか? 大切な存在が失われていくこんな世界が」
隼人は光の瞳と言葉から信じられないほどの虚無感が漂ってくるのを感じた。一度や二度ではない。
何度も味わい、積み重ねてきた故の言葉の重み。彼に対して哀れみを覚えた。
「そして、それらの争いを生み出したのは自分達の家だと知った事は胸が張り裂けそうでしたよ」
「だからお父様を」
「ええ。だから全てを終わらせるんですよ。これ以上誰もが大切なものを持たない、失わない世界を創る!」
「そんな事の為に大切なものを守ろうとしている人を貶めようとしているのか!」
「その守ろうとする人すらも失われる! それがこの世界だ!」
光が端正な顔を歪めて、破壊の意志を口にした。途端に彼の身の回りに途轍もなく重厚な気迫を感じた。
「神速。星跨ぎ」
一瞬だった。光が凄まじい速度で斬り込んできたのだ。あまりの速さと勢いで隼人は後方へと飛んでしまった。
「くっ!」
「まだこんなものではない!」
光が長い白髪を揺らしながら、電光石火の速度で切り込んでくる。突然ながら剣の腕もかなり高い。
「影焔!」
黒炎を纏った刃を振りかざすと、光が後方へと引き下がった。結巳がすぐさま隼人の近くに戻り、刃先を光に向ける。
「その剣術。実際に見るとやはり恐ろしい。さすが暗殺剣と行ったところですね」
「暗殺剣? どういう事だ?」
「おや? 知りませんか? あなたが今、使っている影焔も北原ソラシノが使っている影ノ雷も元は聖堂寺分家、鳳が生み出したものですよ」
突然、突きつけられた衝撃の事実に隼人は目を丸くした。同時に隼人の背筋にじっとりとした嫌な汗が流れる。
「鳳家はかつて聖堂寺の分家として活動した際、主に聖堂寺に仇なすものを粛清、もしくは暗殺する事が生業でした。その中には一族の中から本家に反旗を翻すものもね。その中で生み出した最凶の剣術。それがあなたの使っている暗殺剣ですよ」
「じゃあ、この剣を教えたのってまさか」
隼人はある程度、察しがついていた。祖父にこの剣術を教えたのが誰なのか。
そして、同時に信じたくないという気持ちが胸を包んだ。
「さて。おしゃべりはこれくらいにして」
光が聖滅具を強く降ると、柄の下部分からもう一つの刀身のようなが出てきた。
それはまるで弓のようだ。
「光の速度で射抜いて差し上げましょう」
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