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「蛹の少女」
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刃を交えている最中、学園で過ごした彼女との記憶が頭をよぎった。陽気で快活な性格。
対人関係を避けていた隼人は最初、苦手意識を持っていた。しかし、彼女の竹を割ったような言動に彼自身も次第に心を許していった。
そんな彼女と今は戦場で死闘を繰り広げている。
「なんつー速さだ」
揚羽の卓偉された剣さばきに翻弄されていた。
これまで手合わせした事はなかったが、その腕はまさに一流。
息をつかせぬほど、精錬された剣術の連続に圧倒される。
「父の後継者と育てられて来たからね。剣術には自信あるの」
揚羽の言葉通り、隼人は彼女の剣さばきに既視感を覚えていた。蝶のように舞い、蜂のように刺す。
彼女のしなやかな動きはまさしくその言葉を体現するものであった。
「くっ!」
揚羽の怒涛の剣戟に対処しながら、反撃の隙を伺っていく。
「うおら!」
隼人は彼女が剣を振り切った隙に自身の腕力で押し切った。彼女が剣の使い手を言え、男と女の基礎的な腕力の差が揺らぐ事はない。
「わお、びっくり」
彼女がわざと驚いたような素振りを見せた。どうやらまだ余裕があるようである。隼人は確信した。彼女は間違いなく強敵だ。
すかさず間合いを取った。刀を構えて、未だに不敵な笑みを浮かべる彼女からの攻撃に備える。
逼迫した空気が周りに張り詰める。
「本当は松阪くんのこと、傷つけたくないんだよ。でも」
揚羽が刀を天に向けると、裾の辺りから何十匹もの禍々しい蝶が現れて、刀身に張り付いている。
「計画の邪魔をするなら容赦しない!」
鋭い目で彼女が刀を振り下ろすと、黒い蝶が荒波のように押し寄せてきた。
この蝶に触れてはいけない。隼人は直感的に察した。
「影焔!」
刀身から出した黒炎で焼き払った。すると焼き損ねた蝶が一匹、近くの葉につくと黒く変色して、灰のように散った。
「おっかないな」
「あらら。やっぱり勘付かれたか。まあいっか!」
揚羽が刀身を構えると、空中で回してV因子を纏っていく。
「黒揚羽邪災の音!」
刀身を纏ったV因子がまるで荒れ狂う巨大な大河のようにしなりながら、辺りをなぎ倒していく。
恐ろしく広範囲の間合いに隼人は姿勢を低くして、交わすことしかできなかった。
「凄まじい威力だな。でも動きが迦楼羅そっくりだ。なんとか対処できるな」
隼人は多くの戦闘で戦い方を身につけて来た。中でも強敵であれば、あるほどその戦術を記憶している。
故に迦楼羅から指南を受けていた彼女の癖が迦楼羅に似ていたのが分かった。
「でも松阪くん。お父様には勝てていないんだよね」
「ああ、だからお前に勝てば、迦楼羅討伐に近づける」
隼人は息を整えて、次の攻撃に備える。彼女の実力は確かなものだ。だからこそ引くわけにはいかないのだ。
「行くぞ」
隼人は刀身に燃え盛る炎のように心を燃え上がらせて、前に進んだ。
対人関係を避けていた隼人は最初、苦手意識を持っていた。しかし、彼女の竹を割ったような言動に彼自身も次第に心を許していった。
そんな彼女と今は戦場で死闘を繰り広げている。
「なんつー速さだ」
揚羽の卓偉された剣さばきに翻弄されていた。
これまで手合わせした事はなかったが、その腕はまさに一流。
息をつかせぬほど、精錬された剣術の連続に圧倒される。
「父の後継者と育てられて来たからね。剣術には自信あるの」
揚羽の言葉通り、隼人は彼女の剣さばきに既視感を覚えていた。蝶のように舞い、蜂のように刺す。
彼女のしなやかな動きはまさしくその言葉を体現するものであった。
「くっ!」
揚羽の怒涛の剣戟に対処しながら、反撃の隙を伺っていく。
「うおら!」
隼人は彼女が剣を振り切った隙に自身の腕力で押し切った。彼女が剣の使い手を言え、男と女の基礎的な腕力の差が揺らぐ事はない。
「わお、びっくり」
彼女がわざと驚いたような素振りを見せた。どうやらまだ余裕があるようである。隼人は確信した。彼女は間違いなく強敵だ。
すかさず間合いを取った。刀を構えて、未だに不敵な笑みを浮かべる彼女からの攻撃に備える。
逼迫した空気が周りに張り詰める。
「本当は松阪くんのこと、傷つけたくないんだよ。でも」
揚羽が刀を天に向けると、裾の辺りから何十匹もの禍々しい蝶が現れて、刀身に張り付いている。
「計画の邪魔をするなら容赦しない!」
鋭い目で彼女が刀を振り下ろすと、黒い蝶が荒波のように押し寄せてきた。
この蝶に触れてはいけない。隼人は直感的に察した。
「影焔!」
刀身から出した黒炎で焼き払った。すると焼き損ねた蝶が一匹、近くの葉につくと黒く変色して、灰のように散った。
「おっかないな」
「あらら。やっぱり勘付かれたか。まあいっか!」
揚羽が刀身を構えると、空中で回してV因子を纏っていく。
「黒揚羽邪災の音!」
刀身を纏ったV因子がまるで荒れ狂う巨大な大河のようにしなりながら、辺りをなぎ倒していく。
恐ろしく広範囲の間合いに隼人は姿勢を低くして、交わすことしかできなかった。
「凄まじい威力だな。でも動きが迦楼羅そっくりだ。なんとか対処できるな」
隼人は多くの戦闘で戦い方を身につけて来た。中でも強敵であれば、あるほどその戦術を記憶している。
故に迦楼羅から指南を受けていた彼女の癖が迦楼羅に似ていたのが分かった。
「でも松阪くん。お父様には勝てていないんだよね」
「ああ、だからお前に勝てば、迦楼羅討伐に近づける」
隼人は息を整えて、次の攻撃に備える。彼女の実力は確かなものだ。だからこそ引くわけにはいかないのだ。
「行くぞ」
隼人は刀身に燃え盛る炎のように心を燃え上がらせて、前に進んだ。
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