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「二学期」
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夏休みが終わり、隼人は学園に向かっていた。今日から二学期を迎える。
「夏休み終わるのはえーよ」
「それなー」
隼人も他の生徒にもれなく夏休みの終わりを憂いていた。
「随分と気落ちしているわね」
結巳が隼人の顔を覗き込むように顔を向けて来た。
「まあ、それなりに充実していたからな」
隼人は腕を組んで、手を伸ばして校舎の中に入っていた。
教室に入り、ホームルームを終えると担任の星野奏から挨拶とともにとあるイベント内容が黒板に書かれた。
「えー。みなさん一ヶ月後には文化祭があります。それぞれやりたい催しなどをピックアップして行ってください」
文化祭。学園内で行われる祭り。飲食店などの様々な催し物を開催する行事だ。
「たこ焼き!」
「定番は焼きそばだよなー」
「綿菓子!」
「食い物ばっかなだな」
食べ物ばかりが出てくるクラスメイト達に隼人は苦笑いを浮かべた。普段から厳しい訓練を行っている生徒達に取って、こういう行事は息抜きにも等しいものだ。
昼間。 隼人は屋上に行こうと教室を出ようとした。
「あっ、あの」
声のする方に首を向けると結巳が立っていた。ほんのりと頬を赤くして、少し俯いている。おそらくあまり人に声をか慣れていなかったから恥ずかしがっているのだ。
「どうした?」
「良かったら一緒に食事でもどう?」
「ああ。良いよ」
隼人は結巳や揚羽など他の生徒達とともに食事を取ることになった。相変わらず結巳の食事量は目を見張るほどだ。
「相変わらずよく食うな」
「これくらいしないと保たないの!」
結巳が食事に口に含んで、そっぽを向いてしまった。
「そういう松阪くんはあんまり食べないね」
揚羽が隼人の食事メニューを覗き込んできた。隼人の昼食はささみチキンとゆで卵というなんとも簡素なものだ。
「食べ過ぎると眠くなって授業や鍛錬にも影響が出る。満腹になるのは夕食で十分だ」
「真面目だねー」
揚羽が気の抜けたような反応をしながら、卵焼きを口にした。同級生とともに昼食をとる。少し前なら考えもしなかった事だ。
クラスメイト達と食べる昼食は彼の心にほんのりと暖かいものと楽しいひと時を与えた。
夜。静けさ漂う森の中で隼人と結巳は修羅と化していた。原因は辺りにいる忌獣だった。
「ギャオオオ!」
「グオオオオオオ!」
「二学期始まって早々、これとはな!」
「まさか昼食の後に本部から任務のお呼び出しが来るなんてね!」
隼人は迫り来る忌獣達を一体、また一体と斬り伏せて行く。その横では結巳が迫り来る忌獣達を氷漬けにした。
「全員かかってこい!」
隼人は頰に付いた返り血を拭った瞬間、忌獣が三体飛びかかってきた。しかし、鋭利な牙、爪、触手。それを華麗にかわして的確に切り刻んでいく。
「粉微塵にしてやるよ」
これまで幹部二人や数多の忌獣と戦闘を体験してきた隼人からすれば、忌獣三体など恐るに足らない。
隼人は凄まじい速度で忌獣達を切り裂いて肉塊へと変えた。血や肉片が頰に付着して少し不快感を覚えたが、関係ない。
「氷柱《アイシクル》!」
結巳の声とともに地面から無数の氷柱が飛び出た。氷柱は忌獣達の脳天や心臓を貫き、絶命に追い込んだ。
そうして、暴れ続けて数分。隼人達は忌獣を全て討伐する事に成功した。辺りには忌獣の死体と血や肉片、臓物が飛び散っている。
隼人は対策本部に任務を完遂した事を伝えた。
任務から帰還中。護送車に揺られながら、隼人は文化祭に付いて考えていた。
夏休みで祭りに行ったり、海に遊びに行ったりといかにも年頃の学生のような生活を行なっている。
今まで自分には無縁の経験をしているのだ。そして、一ヶ月後に行われる文化祭。
それもどこか楽しみにしている自分がいるのだ。
「文化祭か」
隼人は月を見上げて、静かに口角を上げた。隣では結巳が心地好さそうに小さな寝息を立てていた。
「夏休み終わるのはえーよ」
「それなー」
隼人も他の生徒にもれなく夏休みの終わりを憂いていた。
「随分と気落ちしているわね」
結巳が隼人の顔を覗き込むように顔を向けて来た。
「まあ、それなりに充実していたからな」
隼人は腕を組んで、手を伸ばして校舎の中に入っていた。
教室に入り、ホームルームを終えると担任の星野奏から挨拶とともにとあるイベント内容が黒板に書かれた。
「えー。みなさん一ヶ月後には文化祭があります。それぞれやりたい催しなどをピックアップして行ってください」
文化祭。学園内で行われる祭り。飲食店などの様々な催し物を開催する行事だ。
「たこ焼き!」
「定番は焼きそばだよなー」
「綿菓子!」
「食い物ばっかなだな」
食べ物ばかりが出てくるクラスメイト達に隼人は苦笑いを浮かべた。普段から厳しい訓練を行っている生徒達に取って、こういう行事は息抜きにも等しいものだ。
昼間。 隼人は屋上に行こうと教室を出ようとした。
「あっ、あの」
声のする方に首を向けると結巳が立っていた。ほんのりと頬を赤くして、少し俯いている。おそらくあまり人に声をか慣れていなかったから恥ずかしがっているのだ。
「どうした?」
「良かったら一緒に食事でもどう?」
「ああ。良いよ」
隼人は結巳や揚羽など他の生徒達とともに食事を取ることになった。相変わらず結巳の食事量は目を見張るほどだ。
「相変わらずよく食うな」
「これくらいしないと保たないの!」
結巳が食事に口に含んで、そっぽを向いてしまった。
「そういう松阪くんはあんまり食べないね」
揚羽が隼人の食事メニューを覗き込んできた。隼人の昼食はささみチキンとゆで卵というなんとも簡素なものだ。
「食べ過ぎると眠くなって授業や鍛錬にも影響が出る。満腹になるのは夕食で十分だ」
「真面目だねー」
揚羽が気の抜けたような反応をしながら、卵焼きを口にした。同級生とともに昼食をとる。少し前なら考えもしなかった事だ。
クラスメイト達と食べる昼食は彼の心にほんのりと暖かいものと楽しいひと時を与えた。
夜。静けさ漂う森の中で隼人と結巳は修羅と化していた。原因は辺りにいる忌獣だった。
「ギャオオオ!」
「グオオオオオオ!」
「二学期始まって早々、これとはな!」
「まさか昼食の後に本部から任務のお呼び出しが来るなんてね!」
隼人は迫り来る忌獣達を一体、また一体と斬り伏せて行く。その横では結巳が迫り来る忌獣達を氷漬けにした。
「全員かかってこい!」
隼人は頰に付いた返り血を拭った瞬間、忌獣が三体飛びかかってきた。しかし、鋭利な牙、爪、触手。それを華麗にかわして的確に切り刻んでいく。
「粉微塵にしてやるよ」
これまで幹部二人や数多の忌獣と戦闘を体験してきた隼人からすれば、忌獣三体など恐るに足らない。
隼人は凄まじい速度で忌獣達を切り裂いて肉塊へと変えた。血や肉片が頰に付着して少し不快感を覚えたが、関係ない。
「氷柱《アイシクル》!」
結巳の声とともに地面から無数の氷柱が飛び出た。氷柱は忌獣達の脳天や心臓を貫き、絶命に追い込んだ。
そうして、暴れ続けて数分。隼人達は忌獣を全て討伐する事に成功した。辺りには忌獣の死体と血や肉片、臓物が飛び散っている。
隼人は対策本部に任務を完遂した事を伝えた。
任務から帰還中。護送車に揺られながら、隼人は文化祭に付いて考えていた。
夏休みで祭りに行ったり、海に遊びに行ったりといかにも年頃の学生のような生活を行なっている。
今まで自分には無縁の経験をしているのだ。そして、一ヶ月後に行われる文化祭。
それもどこか楽しみにしている自分がいるのだ。
「文化祭か」
隼人は月を見上げて、静かに口角を上げた。隣では結巳が心地好さそうに小さな寝息を立てていた。
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