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「再戦」
しおりを挟む緑葉生い茂る森の中、白髪の少女が穏やかに微笑んでいた。しかし、その目から確かに闘志が宿っている。
「じゃあ、その星貰うわね」
「それ、俺のセリフ」
軽く冗談を飛ばした瞬間、隼人は勢いよく結巳の元に走った。一気に加速して星を掠め取ろうとしたのだ。
しかし、結巳の咄嗟の動きによりそれは防がれてしまった。凄まじい金属音が周囲に響き渡る。
「動きが早い!」
「あなたとの特訓を重ねてあなたの動きは理解していっているわ!」
隼人は目を疑った。以前よりも剣術や動きの精度が格段に上がっているのだ。
「氷結大地」
彼女が異能を叫ぶと地面が一気に氷始めた。隼人はすぐさま後ろへと下がり、木の上に移動した。
地面はほぼ、彼女が掌握したと言っても過言ではない。
「さて、どう攻めようか」
「氷結斬!」
結巳が冷気を纏った斬撃を放ってきた。隼人は一つ、また一つと木の上を移動していく。
「やっぱこの手が一番か」
隼人は息を整えた後、刀身から黒い炎を出しながら、地面に飛んだ。空中で刀を振るって熱風を作ると氷が音を立てて、溶けていく。
「影焔!」
凄まじい勢いで結巳に元に走っていく。結巳が何重にも氷の壁を作って行く手を防いできた。
立ち塞がる壁を何度も切り倒していく。最後の壁を破壊した時、隼人の全身に鳥肌が立った。すぐ足元に氷柱のような突起物がいくつも並んでいたのだ。
「氷柱!」
結巳の声とともに突起物が勢いよく、せり上がってきた。隼人は間一髪、交わすことに成功した。
「戦法が凶悪だな」
「あなたの異能も大概だけどね」
結巳が額から汗を流しながら、細剣をこちらに向けてきた。隼人はそれに応じるように刀身で手のひらに傷をつけた。
そして、滴れ落ちる血を刀身に流した。途端に燃え盛る黒炎。熱くなる体。
時間がない。早くしなければ影焔の代償が重くのしかかるからだ。
「これでケリをつける!」
隼人は地面を強く蹴ると、目を見張る速度で結巳に近付いた。
「させない!」
結巳が氷の壁を生み出そうとした時、隼人は刀身を水平にして回転した。凄まじい熱風が周囲に巻き込み、結巳の氷を溶かした。
「なっ! 氷が一瞬で!」
突然のことで驚いたのか、結巳が目を見開いていた。しかし、すぐに態勢を整え始めた。
「氷柱!」
結巳が剣先を地面に突き刺して、叫ぶとともに先ほどとは比較にならないほどの数の氷柱が地面から生えてきたのだ。
「なんて数だ!」
隼人はあまりの量に動揺したが、歩みをやめなかった。躊躇いを見せていれば更に相手に攻撃の機会を与えてしまう。
もう突っ走るしかないのだ。
「ああああああああああ!」
隼人は叫び声を上げながら、結巳の元に足を進めた。氷柱が腕や足を掠めようとも歩みを止める様子はない。ただ進み続けるだけだ。
「良い加減止まりなさい!」
結巳が目を血走らせながら、叫んだ。それとともに更に氷柱の数が増えた。しかし、隼人は気づいた。
結巳が疲労の表情を露骨に出した事。もう彼女に異能を使う体力はほとんど残されていない事。今という絶好の機会を隼人は見逃さなかった。
「うおおおおおおお!」
荒れ狂う獣を連想させる動きで彼女のそばまで接近して、喉元に燃え盛る刀身を近づけた。
「降参よ」
結巳が困り眉を作り、両手を上に向けた。
その時、訓練終了の合図が鳴り響いた。
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