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商いの町 イルヤンカ
エアンナ商会③
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夕方。日が沈み切る直前に、町のどこからでも見える大きな館に入ると、豪華なホテルのロビーのような空間が広がっていた。趣味は悪いが一目で高いとわかる銅像やシャンデリアが煌びやかに輝いているが、ドレスコードなどは特にないようだ。マントだけでも人が圧死しそうな、身長が3メートルはある巨大な戦士から、おままごとの人形ほどしかない妖精族、果ては喋る不定型生物まで様々な種族が、各々好きな格好で談笑している。
「天使、別に目立たないのでは?」
「愛天使は特別な種族なので、この世界には僕しかいないんですよ❤︎僕以外の種族は全て僕の配下ですので、僕は天使であり神なんです!もう少し敬ってもいいんですよぉ?」
創作の世界は総じて作者が神である。オタクの原則だ。オレは曖昧に返事をしながら、周りの生物にぶつからないように歩く。ちなみに昼間から3人でなるべく手を繋いでいるが、その様子を見るに、どうやら誘拐される対象はなにもオレだけではないようである。考えてみれば、中身はともかくこの世界においては、3人ともアストレアから昨日旅立ったばかりの新人冒険者だ。大通りにも同様に手を繋いでいるグループはいくつかあったので、ここではさほど珍しい事ではないのだろう。
「お、新入りじゃねえか。ギルド登録に来たのか?」
いかにも強者だとわかるゴリゴリのマッチョの受付だ。机に置かれた担当者札には『マスラ』と書いてある。他の人物と比べるとやや日本人に近い顔立ちをしていた。ヒルトが書類を記入し、ラブリエルはマスラと愛想よく話をしている間でぼんやりと二人の様子を交互に眺めていると、ラブリエルが急にオレの肩を抱いてマスラに言った。
「これ、見た目だとわからないかもだけど、魔漢なんですよ~」
「おい、そりゃ本当か?」
辺りがしん、と静まり返った。3秒ほど考えてから、それが理由で火炙りになっていた事を思い出す。遠い昔の事のようだが、まだ1週間も経っていない。周りからの痛いほどの視線に、ひゅっ、と喉が鳴った。
「もうこれは僕と契約しちゃったんですけど、そんな感じで実績は話した通りなんで、この子向けのお仕事、大歓迎でーす❤︎」
「大歓迎も何も、それが本当なら……あ、ああ、これから大変な事になるぞ……」
「ど、どういうこと……?」
こちらからすれば周りの生物の方がよほど危険に感じるのだが、どうやら只事じゃないようだ。なにせマッチョがうろたえている。
「魔漢が現れた土地には災厄が訪れますからね~、これからお仕事がバンバン発注されるってことですよ!やったね!」
「そ、それって人に言っていい話なのか?その……『大樹の都』の時……」
「ああ、あそこは魔漢が災厄を引き連れてくるって教えがあるからな……なんだ、そこから逃げてきたのか?何、卵が先か鶏が先かみたいなもんだ。まぁ、それについては安心してくれ。この町では災厄が先だ」
混乱気味に聞いていたせいか、一度で意味を理解することが出来なかった。首を傾げていると、話を聞いていたのか、ヒルトが筆を休めないまま口を開いた。
「災厄の到来を知らせる者としての魔漢、ということですね。魔漢という種族そのものの希少価値はともあれ、災厄の結果でしかない貴方を処刑した所で何も変わらないという考え方が、少なくともこの町では主流です。宗派にもよりますが……」
「天使、別に目立たないのでは?」
「愛天使は特別な種族なので、この世界には僕しかいないんですよ❤︎僕以外の種族は全て僕の配下ですので、僕は天使であり神なんです!もう少し敬ってもいいんですよぉ?」
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「お、新入りじゃねえか。ギルド登録に来たのか?」
いかにも強者だとわかるゴリゴリのマッチョの受付だ。机に置かれた担当者札には『マスラ』と書いてある。他の人物と比べるとやや日本人に近い顔立ちをしていた。ヒルトが書類を記入し、ラブリエルはマスラと愛想よく話をしている間でぼんやりと二人の様子を交互に眺めていると、ラブリエルが急にオレの肩を抱いてマスラに言った。
「これ、見た目だとわからないかもだけど、魔漢なんですよ~」
「おい、そりゃ本当か?」
辺りがしん、と静まり返った。3秒ほど考えてから、それが理由で火炙りになっていた事を思い出す。遠い昔の事のようだが、まだ1週間も経っていない。周りからの痛いほどの視線に、ひゅっ、と喉が鳴った。
「もうこれは僕と契約しちゃったんですけど、そんな感じで実績は話した通りなんで、この子向けのお仕事、大歓迎でーす❤︎」
「大歓迎も何も、それが本当なら……あ、ああ、これから大変な事になるぞ……」
「ど、どういうこと……?」
こちらからすれば周りの生物の方がよほど危険に感じるのだが、どうやら只事じゃないようだ。なにせマッチョがうろたえている。
「魔漢が現れた土地には災厄が訪れますからね~、これからお仕事がバンバン発注されるってことですよ!やったね!」
「そ、それって人に言っていい話なのか?その……『大樹の都』の時……」
「ああ、あそこは魔漢が災厄を引き連れてくるって教えがあるからな……なんだ、そこから逃げてきたのか?何、卵が先か鶏が先かみたいなもんだ。まぁ、それについては安心してくれ。この町では災厄が先だ」
混乱気味に聞いていたせいか、一度で意味を理解することが出来なかった。首を傾げていると、話を聞いていたのか、ヒルトが筆を休めないまま口を開いた。
「災厄の到来を知らせる者としての魔漢、ということですね。魔漢という種族そのものの希少価値はともあれ、災厄の結果でしかない貴方を処刑した所で何も変わらないという考え方が、少なくともこの町では主流です。宗派にもよりますが……」
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