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第4話 女学生のトラブルレポート
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―ガヤガヤ
月に一度の全校集会が終わり、教室に戻る生徒で廊下はごった返している。
『あ…』
でも、大勢の生徒の中でも、身長の高い栗藤君はすぐに見つけられる。
何とはなしに周りに視線を巡らせると、少し先の廊下をテクテク進む彼が見え―
『!』
ちょうどその時、去年彼を登校拒否に追い込んだY町君が彼の肩をつかんだ。
私は人ごみの中、慌てて彼らに駆け寄る。
「だから、俺はやってねぇって言ってんだろ」
「そう言われても…」
「あの!」
何やら栗藤君に詰め寄っているY町君に声をかける。
「誰?お前?」
クルリと振り返ったY町君に睨みつけられる。
「あっ…」
栗藤君が、焦りと心配がないまぜになった顔で私を見る。
私を心配してるんだろう。
大丈夫、任せて、という思いを込めて彼に少し微笑んで見せてから、Y町君に向き直った。
「私は栗藤君のクラスの委員長で、先生から彼の様子を気にかけるように言われています」
栗藤君の事を担任から頼まれている、という自己紹介で少しは怯んでくれることを祈りながら、自己紹介する。
「ふーん、気にかける、ねぇ。じゃあ、こいつのノートのこと知ってんの?」
「落書きの事ですか?もちろん知ってます」
「俺、そのノートの事で教師に呼び出されたんだよ」
「はい」
「俺じゃないんだけど。潔白なのに疑われてるんだよ」
潔白。
その単語を聞いた瞬間、頭に血が上るのを感じた。
潔白?
誰が?
栗藤君を登校拒否になるまで追い込んだあなたが?
今回のノートの件と無関係だとしても、あなたは自分で自分を潔白と言える立場ではないでしょう。
なんで、さも、疑われなきゃいけない謂れはないのに疑われている被害者のような顔してるの。
いつになく攻撃的な気持ちになる。
いけない、冷静に話さないと。
「…栗藤君のノートの事を先生に報告したのは私です。
でも私、別にあなたが怪しいなんて、先生に一言も言ってないですよ」
「報告したのがあんたなら、教師に俺は犯人じゃないってあんたからも言ってくれよ、なっ」
ヘラヘラしながら言ってくるY町君に、不快感でいっぱいになる。
「…言っても無駄じゃないですかね。だって、あなたには大きな前科がありますから」
ヘラヘラしていた彼の顔が一気に険しくなる。
「お前―」
Y町君の手が動いた時―
「Y町!」
「何してる!」
男性教員達の怒鳴り声が廊下に響いた。
パッと声の方を向くと、先生達が何人もこちらに向かってきている。
そして、先生達の後ろには杣友君がついて来ている。
先生を呼んでくれたんだ!
「俺じゃねーって言ってんだろ!」
声を上げながら、Y町君は先生達に連れていかれた。
「委員長、栗藤、殴られたりしてないか?」
きっと走って先生を呼びに行ってくれたんだろう。
杣友君は息が上がっていた。
「大丈夫、です…」
「杣友君、先生呼んでくれてありがとう」
「いや、これくらい。…でも、無茶すんなよ」
いつもは飄々とした杣友君が安心して脱力している。
すごく心配かけちゃったな…。
いくらY町君に腹が立ったからって、喧嘩腰になりすぎた。
反省しなきゃ。
その後、私達も先生からその場で軽く事情を聞かれた。
事の顛末をノートの件からかいつまんで説明すると
「Y町にはしっかり指導しておくから」
と言われ、教室に帰された。
あんな不良、こってりと絞られればいいんだ。
月に一度の全校集会が終わり、教室に戻る生徒で廊下はごった返している。
『あ…』
でも、大勢の生徒の中でも、身長の高い栗藤君はすぐに見つけられる。
何とはなしに周りに視線を巡らせると、少し先の廊下をテクテク進む彼が見え―
『!』
ちょうどその時、去年彼を登校拒否に追い込んだY町君が彼の肩をつかんだ。
私は人ごみの中、慌てて彼らに駆け寄る。
「だから、俺はやってねぇって言ってんだろ」
「そう言われても…」
「あの!」
何やら栗藤君に詰め寄っているY町君に声をかける。
「誰?お前?」
クルリと振り返ったY町君に睨みつけられる。
「あっ…」
栗藤君が、焦りと心配がないまぜになった顔で私を見る。
私を心配してるんだろう。
大丈夫、任せて、という思いを込めて彼に少し微笑んで見せてから、Y町君に向き直った。
「私は栗藤君のクラスの委員長で、先生から彼の様子を気にかけるように言われています」
栗藤君の事を担任から頼まれている、という自己紹介で少しは怯んでくれることを祈りながら、自己紹介する。
「ふーん、気にかける、ねぇ。じゃあ、こいつのノートのこと知ってんの?」
「落書きの事ですか?もちろん知ってます」
「俺、そのノートの事で教師に呼び出されたんだよ」
「はい」
「俺じゃないんだけど。潔白なのに疑われてるんだよ」
潔白。
その単語を聞いた瞬間、頭に血が上るのを感じた。
潔白?
誰が?
栗藤君を登校拒否になるまで追い込んだあなたが?
今回のノートの件と無関係だとしても、あなたは自分で自分を潔白と言える立場ではないでしょう。
なんで、さも、疑われなきゃいけない謂れはないのに疑われている被害者のような顔してるの。
いつになく攻撃的な気持ちになる。
いけない、冷静に話さないと。
「…栗藤君のノートの事を先生に報告したのは私です。
でも私、別にあなたが怪しいなんて、先生に一言も言ってないですよ」
「報告したのがあんたなら、教師に俺は犯人じゃないってあんたからも言ってくれよ、なっ」
ヘラヘラしながら言ってくるY町君に、不快感でいっぱいになる。
「…言っても無駄じゃないですかね。だって、あなたには大きな前科がありますから」
ヘラヘラしていた彼の顔が一気に険しくなる。
「お前―」
Y町君の手が動いた時―
「Y町!」
「何してる!」
男性教員達の怒鳴り声が廊下に響いた。
パッと声の方を向くと、先生達が何人もこちらに向かってきている。
そして、先生達の後ろには杣友君がついて来ている。
先生を呼んでくれたんだ!
「俺じゃねーって言ってんだろ!」
声を上げながら、Y町君は先生達に連れていかれた。
「委員長、栗藤、殴られたりしてないか?」
きっと走って先生を呼びに行ってくれたんだろう。
杣友君は息が上がっていた。
「大丈夫、です…」
「杣友君、先生呼んでくれてありがとう」
「いや、これくらい。…でも、無茶すんなよ」
いつもは飄々とした杣友君が安心して脱力している。
すごく心配かけちゃったな…。
いくらY町君に腹が立ったからって、喧嘩腰になりすぎた。
反省しなきゃ。
その後、私達も先生からその場で軽く事情を聞かれた。
事の顛末をノートの件からかいつまんで説明すると
「Y町にはしっかり指導しておくから」
と言われ、教室に帰された。
あんな不良、こってりと絞られればいいんだ。
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