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ボランティア
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私がグルグル悩んでいるうちに、すぐに目的地に着いた。
そこは―古く小さな病院。
あの日、私の薬草園で誘われたボランティア。
それは、町の病院でのヒーリングと薬の寄付だった。
学校でも、実技授業と社会貢献を兼ねて同様のボランティアは行われている。
もちろん私も経験がある。
でも、こういう病院は初めてだ。
こういう―比較的貧しい人の為の病院は。
不安な気持ちで院内に足を踏み入れる。
「あれ…?」
緊張していたが、拍子抜けした。
建物は古びているが、清潔だ。
順番待ちのスペースには元気の無さそうな患者達が椅子に座っているけれど、座席は所々空いていてスペースに余裕がある。
もっと汚くて病人、怪我人が所狭しと並んでいるイメージだった。
建物の古さ以外は普通の病院と変わらない。
キョロキョロと辺りを見回しながらヴァンについていく。
―トントン
ヴァンはあるドアをノックした。
「どうぞ」
返事を聞いて私達は部屋に入った。
そこには聡明そうなおばあさんが座っていた。
「こんにちは、院長先生、お邪魔してます」
あ、この女性が院長先生なんだ。
「こんにちは、ヴァン君。そちらのお嬢さんは…?」
「こちらは僕の友人で魔法薬師のリーラです。僕がこの病院のことを話したら、自作の薬を寄付したい、と言ってくれて。薬の寄付と説明のために一緒に来てもらいました」
「まあ…」
ヴァン、あなたそんなキリっとした顔と話し方できたのね、いつもはヘニャヘニャしてるのに。
などと思いつつ、私も背筋を伸ばして挨拶する。
「初めまして、院長先生。リーラと申します」
ペコリと頭を下げる。
私は持参したかばんの中から、数種類の薬を出し、使用方法を院長先生に説明した。
「リーラさん、ありがとう」
院長先生は私の薬をとても喜んでくれた。
魔法使いの作った薬は普通の薬より効果抜群だけど、その分高価だ。
気軽に買えるような値段じゃない。
そうか、保健委員会を解任されて、学校の中で自作の薬を役立てられないなら、学校の外に出ちゃえばいいのか。
私の薬を求めてくれる人は、ちゃんといるんだ。
「こちらこそ…ありがとうございます」
薬の寄付が終わったら、今度は治療の手伝い。
私は切り傷や火傷に自作の薬を塗り、おそまつなヒーリングでノロノロと傷を癒していく。
そしてその隣で、ヴァンは骨折をけっこうなスピードで治していく。
彼はヒーラーとしてもなかなかだ。
慌ただしく働いているうちに太陽が傾いてきて、患者も少なくなってきた。
そして、私の魔力もそろそろ尽きてきた。
「リーラちゃん、今日の治療はここまでにしようか~」
「えぇ…そうね…」
「でも最後にあと一仕事あるんだ」
「え…?」
私はもう魔力切れが来ている。
これ以上は…
「大丈夫、大丈夫。最後の仕事は、僕ならではの仕事だから」
私はもうロクに魔法を使えないことはお見通しのようだ。
ヴァンならではの仕事って何だろう?
―バタン
ヴァンが窓を開けて外を見た。
私もマネをして隣の窓から外を見る。
…あ、この病院中の窓が開いている。
看護師さんが開けておいてくれたのだろう。
これは、あれか。
学校の保健室でもやってくれている空気入れ替えか。
ヴァンが目をつむって意識を集中させる。
そよそよと室内に穏やかな風が流れ始める。
「…?」
いや、これ、違う。
いつも保健室でやっているのとは違うことをしている。
風を操って、この病院中の空気を―自分の手元に集めている?
ヴァンがつむってきた目を開いた。
ふう、と息をつく。
「…今、何をしたの?空気を集めてたわよね?」
「ご名答。学校の保健室は2部屋だけだし、辺りにいるのは健康な学生がほとんどでしょ?だから室内の空気はそこらへんに追い出しちゃえば済む。でもここは病院だから部屋数も多いし、近くにいるのは体が弱っている人ばかりだから、汚れた空気をそこらへんに放置できないんだよ。だから―」
ヴァンは手のひらを開いた。
手のひらからは小さく固めた魔力を感じる。
「こうして汚れた空気を圧縮して、人がいない場所に捨てに行くのが最後の仕事なんだ。あと少し付き合ってね」
ヴァンはサラリと説明したけど、病院丸ごと1つなんて広範囲を対象に簡単にできることじゃない。
目には見えないけど大技を見せてもらった。
そこは―古く小さな病院。
あの日、私の薬草園で誘われたボランティア。
それは、町の病院でのヒーリングと薬の寄付だった。
学校でも、実技授業と社会貢献を兼ねて同様のボランティアは行われている。
もちろん私も経験がある。
でも、こういう病院は初めてだ。
こういう―比較的貧しい人の為の病院は。
不安な気持ちで院内に足を踏み入れる。
「あれ…?」
緊張していたが、拍子抜けした。
建物は古びているが、清潔だ。
順番待ちのスペースには元気の無さそうな患者達が椅子に座っているけれど、座席は所々空いていてスペースに余裕がある。
もっと汚くて病人、怪我人が所狭しと並んでいるイメージだった。
建物の古さ以外は普通の病院と変わらない。
キョロキョロと辺りを見回しながらヴァンについていく。
―トントン
ヴァンはあるドアをノックした。
「どうぞ」
返事を聞いて私達は部屋に入った。
そこには聡明そうなおばあさんが座っていた。
「こんにちは、院長先生、お邪魔してます」
あ、この女性が院長先生なんだ。
「こんにちは、ヴァン君。そちらのお嬢さんは…?」
「こちらは僕の友人で魔法薬師のリーラです。僕がこの病院のことを話したら、自作の薬を寄付したい、と言ってくれて。薬の寄付と説明のために一緒に来てもらいました」
「まあ…」
ヴァン、あなたそんなキリっとした顔と話し方できたのね、いつもはヘニャヘニャしてるのに。
などと思いつつ、私も背筋を伸ばして挨拶する。
「初めまして、院長先生。リーラと申します」
ペコリと頭を下げる。
私は持参したかばんの中から、数種類の薬を出し、使用方法を院長先生に説明した。
「リーラさん、ありがとう」
院長先生は私の薬をとても喜んでくれた。
魔法使いの作った薬は普通の薬より効果抜群だけど、その分高価だ。
気軽に買えるような値段じゃない。
そうか、保健委員会を解任されて、学校の中で自作の薬を役立てられないなら、学校の外に出ちゃえばいいのか。
私の薬を求めてくれる人は、ちゃんといるんだ。
「こちらこそ…ありがとうございます」
薬の寄付が終わったら、今度は治療の手伝い。
私は切り傷や火傷に自作の薬を塗り、おそまつなヒーリングでノロノロと傷を癒していく。
そしてその隣で、ヴァンは骨折をけっこうなスピードで治していく。
彼はヒーラーとしてもなかなかだ。
慌ただしく働いているうちに太陽が傾いてきて、患者も少なくなってきた。
そして、私の魔力もそろそろ尽きてきた。
「リーラちゃん、今日の治療はここまでにしようか~」
「えぇ…そうね…」
「でも最後にあと一仕事あるんだ」
「え…?」
私はもう魔力切れが来ている。
これ以上は…
「大丈夫、大丈夫。最後の仕事は、僕ならではの仕事だから」
私はもうロクに魔法を使えないことはお見通しのようだ。
ヴァンならではの仕事って何だろう?
―バタン
ヴァンが窓を開けて外を見た。
私もマネをして隣の窓から外を見る。
…あ、この病院中の窓が開いている。
看護師さんが開けておいてくれたのだろう。
これは、あれか。
学校の保健室でもやってくれている空気入れ替えか。
ヴァンが目をつむって意識を集中させる。
そよそよと室内に穏やかな風が流れ始める。
「…?」
いや、これ、違う。
いつも保健室でやっているのとは違うことをしている。
風を操って、この病院中の空気を―自分の手元に集めている?
ヴァンがつむってきた目を開いた。
ふう、と息をつく。
「…今、何をしたの?空気を集めてたわよね?」
「ご名答。学校の保健室は2部屋だけだし、辺りにいるのは健康な学生がほとんどでしょ?だから室内の空気はそこらへんに追い出しちゃえば済む。でもここは病院だから部屋数も多いし、近くにいるのは体が弱っている人ばかりだから、汚れた空気をそこらへんに放置できないんだよ。だから―」
ヴァンは手のひらを開いた。
手のひらからは小さく固めた魔力を感じる。
「こうして汚れた空気を圧縮して、人がいない場所に捨てに行くのが最後の仕事なんだ。あと少し付き合ってね」
ヴァンはサラリと説明したけど、病院丸ごと1つなんて広範囲を対象に簡単にできることじゃない。
目には見えないけど大技を見せてもらった。
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