変態ビッチの襲われ日記

紙吹雪

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はじめて 【中編】※胸糞注意 ☆

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 ガサッザッザッ。
 2人が近づいてくる足音が聞こえる。助かったと思うものの自分の姿を見たら2人がどう思うのか不安で仕方なかった。

「だれか…えあ!?…お前うちの息子に何してんだ!!」
「嘘っ…。なんてこと…。母さん達がいるからもう大丈夫よ…。ごめんね、もっと早く帰って来ればよかった。」
「だ、ぃじょ…ぅぶ。ひっく。」

 ボクは襲われたこと自体よりも両親に変な目で見られないことに安堵して涙を流した。
 無条件で味方になってくれる家族のありがたみを感じずには居られなかった。

 父が男を捕まえて戻ってきたので母が警察に連絡してくれた。
 警察官2人が来て事情を聞かれたので簡潔に説明した。

「うーん…1度お家で身を清めて来られますか?息子さんお辛そうですが…。犯人はこちらで預かり、署で待っていますので。」
「ではそうさせていただきます。配慮ありがとうございます。」

 一旦家に帰り、お風呂で全てを洗い流すとお尻に違和感を感じた。少しヒリヒリする。

 警察署に着くと入口にさっき会った警官が立っていて、直ぐに個室に通された。
 そこには犯人の男とスーツの人が2人いた。

「生活安全課の刑事に担当を変わりますので詳しくはそちらにお願いします。先程聞いたことは伝えてありますので。」
「では状況を詳しくおきかせください。」

 僕は恥ずかしくても、辛くても一生懸命全てを伝えた。

「──それで写真も撮られて…。それを見せられながら何度も…何度もっ。」
「抵抗はしましたか?」
「怖くて出来ませんでした。」
「彼は君を脅せるような何か凶器などを所持していましたか?」
「いえ…持っていなかったと思います。」

 怖くて何もしようとしなかったことが駄目だったのか。男のくせにと思っているのか。若い刑事は面倒くさそうな顔でボクには彼が嘲笑っているように見えた。

「それでも逃げなかったと…。」
「刑事さんは何を仰りたいんですか?先程からレイプ犯の肩を持つような質問にしか聞こえませんが。」

 母のキツい物言いにも物怖じするどころか、はぁ、とあからさまな溜め息を吐いて言い放った。あろうことか、『同意だったのでは?』と。母は激昂し、声を荒らげて抗議した。

「腕も縛られて口も塞がれていたんですよ!?しかも人通りがある公園の中で!ありえないでしょう!」
「でもあなたの息子さんは1度も逃げようとしませんでしたよ。むしろ悦んでいるように見えましたけど。」

 ボクを襲った男はゆったりと余裕ある態度でニヤついた顔でボクと目を合わせながら言った。ボクはあの視線が苦手だ。怖い。体が自然と震えてくる。

「レイプするようなやつの言葉なんか信用できるか!自分に良いように解釈してるだけだろう!」

 できる限り冷静に話そうと努めていた父も限界だとばかりに怒鳴るように言った。するとそれまで静観していた年配の刑事が口を開いた。

「すみません、ご両親とも落ち着いてください。部下が失礼な発言をしたことは詫びます。ですからもう少しだけ冷静に話し合いましょう。」
「何が落ち着いてだ!息子が襲われたんだぞ。」
「ですが、話し合いが進まないと彼も気が休まらないでしょう。」

 年配の刑事は襲った男にも苦言を呈し、改めて状況を確認するように話し出した。そして証拠の話になった。

「先程息子さんから話があった写真ですが、確認しましたがそのような写真はありませんでした。」
「ええっ…いやでも消されたのならそれで良いです。正直見られたくないです。」
「それは内容が酷くてですか?それともレイプではない証拠でも写っているのですか?」
「酷い状況だからに決まってるじゃないですか……。」

 若い刑事の疑いを孕んだ声音に、ボクは思ったよりも声が出なかった。ほとんど掠れた声だったが、皆聞き取れたようだった。母がそっと肩を抱き寄せてくれるが震えは止まらなかった。

「さっきのお巡りさんが現場の状況を確認していたはずだ。それは証拠になり得ないのか?私たち身内の証言だけじゃ駄目なんだろう?」
「そういう行為が行われた証拠はありますが強要されたという証拠がでていません。」
「息子の腕の痣は?」
「そういったプレイだと彼が。」
「犯人の言葉は信じて被害者の息子の言葉は信じないということですか!?」
「いえ、証言が食い違っているので証拠をと、ただ、このままだと証拠不十分ということになるかと。」
「日本の警察は優秀ではなかったと?それとも君たちだけか?外部の調査機関に委託して調べて貰ったらどうだ?」
「それはそちらがすることで我々は最前を尽くしました。」
「証拠品を全て差し出して頂けますか。外部に調査を依頼します。その男の身辺調査も含めて。あなた方が庇っているようにも見えるので。」

 母の言葉に年配の刑事はチラと男を見てから『お好きなように』と言った。しかし、若い刑事が続けた言葉にボクはゾッとした。

「外部に調べて貰ったとしてそのあとどうするんです?まさか息子にあった出来事を公にしたりは出来ないですよね?それなら今この時に示談にして接近禁止とかの方がいいんじゃないですか?」
「お金で解決しろってこと?それじゃあこの子が安心して外を歩けないじゃない!!」
「…30万払う。彼に会えなくなるのは寂しいがこちらも引くんだそちらもこれで納得してくれ。」
「出来るわけないでしょ!!」
「息子を襲っておいてどの口が寂しいなんて言ってんだ!ふざけるな!」

 騒がしく言い合う両親と男の言い合いがどこか遠くに感じ、そんな自分に嫌気がさしてきたころ、男が金額を徐々に上げ始めた。それが妙にボクら側がお金目当てに見えるような気がして男が50万と言ったとき、思わず口を挟んでしまった。

「もういいです。それでいいですから。あの人と居るのはもう怖いんです。会わなくて済むならそれでいいですから。」

 静まり返った空気がやけに重たく感じた。
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