天使ノ探求者

はなり

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第七章 天使転輪

第191話 来訪者(六)

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志貴は逃げ回りながら、時に空気を操作して自分に向かって来る光の方向を変えながら頭をフル回転させ、この危機的状況をどうやって変えるか考えていた。

(体力がそろそろまずいな・・さてさて、これはどうしたもんかな。奴の方へ光を誘導してぶつけるか?しかし、同化されるか、または貫通、反射されるのがオチか。しかし、それが読まれるとしたことを前提で奴の隙を作れるとしたならば可能か。この光は自動追尾か、はたまた奴自身が操って追尾させているのか。自動だった場合、攻撃が奴に向かう場合、当てることは不可能か。もし手動であるならまだ勝機はある。一か八か、奴に気づかれずに奴自身に光をぶつけることができれば・・・)

志貴は数秒で考えをまとめると行動に出た。志貴は追ってくる光と一定の距離を保ちながら男の元へと向かう。

「なんだ?俺にぶつけるつもりか?だとしたら無意味なことだ。俺が放った光が俺自身に当たることはない。光は全て俺自身へ帰るだけだ」

「はっは!わかんないよー、どうなるかはね!」

志貴は男の近くまでやってくると、指を鳴らし、そして同時に横へと軌道を変え、男を避ける。

「真無宇宙空壊帯」

「!?」

辺りは一瞬にして静寂に包まれる。

(これは!?)

男が驚いていると、光は先ほどの速度よりさらに速く動き、男を貫いた。

シュンッ!

だがしかし、男の体は無傷のままだった。

「無駄なことだったな」

光は男の向こう側へと行くとUターンをして志貴へと襲いかかる。しかし志貴は逃げる様子もなく、堂々とただ光を待ち構えていた。

「さて、それはどうかな」

「・・・・」

(声が・・!?)

次の瞬間、志貴へと襲いかかった光は志貴の目前で消えた。

「ふぅ、ギリギリ成功かな。あんたが放った光に少しだけ細工させてもらったよ。かなり手間だったけどね」

(なんだ、何を言っている?アイツの声が全く聞こえない・・)

「今、あんたの周りだけに真空世界を展開した。方法は単純だが、かなりムズイ。あんたが放った光の周りに僕の念を込めた空気を纏わせた。そして、さっき体を貫通した時にそのままあんたの体内へ空気だけを置いてきたんだ。簡単に話してはいるがかなりムズイんだぞ、これ」

(うっ、、なんだ・・息が・・)

「んで、あんたの体内に置いてきた空気を核にして周りにある空気の成分を分裂させ真空状態を作り出した。いわばミニ宇宙空間みたいなものに囲まれてしまったと思ってもらっていい。正直、人の体内に核を作って天地創世を使うなんて試したことないけど、案外できるもんだね!もちろん内側に核があるから逃げることはできない。もっとも体内に手を突っ込んで取り出せれば話は別だが。まぁ無理だろうな。人であれば空気が無くなれば致命的だろ?さぁ、あんたはどうなるかな?」

男はふらつきながらも意識はまだ保っていた。

「さてと、捉えたな。このまま窒息を待つのもいいが、ダメ押しに外側から空気を圧縮して潰しておこう」

志貴が手を伸ばすと、見えない空気が男を圧縮し始める。

バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!

骨が砕かれる音が辺りに鳴り響く。しかし、男の表情は変わらなかった。これだけ、息もできずに骨を砕かれ、苦痛の顔を浮かべず、志貴を見据えていた。

(妙だな・・・まぁ、全部終わればわかるか)

数秒間、息もできず、外からの空気の弾圧により、男はおおよそ人とは呼べないほどの小さな丸い肉塊と化した。

「ふぅ、終わりっと!とりあえず、糸音のところへ降りるか」

志貴は敵の存在が消えたことを確認すると糸音がいる崖へと降り立った。

「よう、槍士もいたか」

「兄さん、終わったのか?」

「あぁ、見ての通りね」

「しっかし、すげぇな。あんな化け物にも勝っちゃうなんてよー」

「結構ギリギリだったけどねー。さぁ、とりあえずこの場からはなれ・・・」

ピカッ!!!!

!?

いきなり、辺りを強烈な閃光が襲う。

「まさか・・・」

「やってくれたな」

!?

志貴の背後にはいつのまにか男が立っていた。そして、志貴は男からの奇襲を受けてしまった。

「クッ・・」

ギリギリのところで反応ができ、志貴は咄嗟にその場から糸音と真宵を抱えながら距離を取った。槍士も遅れはしたが同じく男から距離を取る。

「先生!」

「大丈夫だ・・って言いたいが痛いなこりゃ」

志貴は背後からやってきた男が放った光線で横腹を負傷してしまう。

「いやしかし、ここまでとは。強かった。しかし、それまでだな。限界が見えた」

「おいおい、勝手に限界って決めるなよ。まだまだやれるぜ」

「そいつぁ見てみたいが、時間がない」

男はゆっくりと浮遊していく。

「まさか、この世界でを出すことになるとは」

上空で停止すると、男の背中から神々しい光と共にそれは顕現した。
男の背中には白い大きな羽が生えていた。

「おいおい、まさかマジで神様かよ」

「貴様のその人間離れした力に免じて名乗ってやろう。俺の名はウラノス、使の一人だ」
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