天使ノ探求者

はなり

文字の大きさ
上 下
187 / 199
第七章 天使転輪

第187話 来訪者(二)

しおりを挟む
「あの男、何者だ?この俺の閃光より速く動いてあれらを助けるとは」

男はしばらく上空を見上げていた。
その目線の先の上空では、志貴が脇に抱える真宵へと声をかけていた。

「おーい、死んだのか?しっかりしろ真宵!まさか、寝てんのか?」

「兄さん、多分普通に気絶だよ。結構やばい一撃だったけど、流石に死んではないと思う」

「そうか!そいつは良かった!それで糸音の方は大丈夫か?」

「あぁ、何本か骨いってるけど。大丈夫」

「そうか・・そう言えば糸音、宗谷はどこだ?」

「宗谷は死んだよ」

「・・殺したのか?」

「いいや」

「そうか」

志貴はそれ以上何も聞かなかった。
そして、地上を一通り見渡して男へと目向ける。

(一撃でこの威力。バケモンだな・・。能力者、なのは間違いないか。最近手に入れた感じでもなさそうだな。もしこれが最近手に入れた能力なら末恐ろしいな。さてと、どうするかな)

「!?」

志貴が思考を巡らそうとしたその時、先ほど地上にいたはずの男が一瞬にして志貴の目の前へとやってくる。

ピカッ!!

いきなり、閃光が辺りを照らして、先ほど地上で真宵へと放たれた光線が男の手から放たれる。

ドッーーーーンッッ!!!

「おいおい、待ってくれよ。いきなりぶっ放すなんて、せっかちかよ」

しかし、その眩い光線は志貴には当たらず。いつのまにか、志貴は何食わぬ顔で男の後ろ側に立っていた。

「貴様、なかなかやるではないか。どうやらさっきの初撃、避けれたのはまぐれではなかったようだ」

「そいつはどうも」

志貴は軽薄に笑う。それから落ち着いた声で男へ問いかける。

「これさぁ、きっとここから戦闘だよね?もしそうならさ、この子たち置きたいんだけど。流石に抱えたままじゃ戦えないじゃんか。いいかな?」

「強者を前にその余裕・・貴様、命を握られていることがわかってないのか?まぁ、どちらにせよ同じだからな・・いいだろう待ってやる」

「おっ!えらく良心的だね!助かるよ。では遠慮なく」

志貴はニッコリ微笑み返すと少し離れたところにある高台へと二人を置きに行く。

「兄さん・・」

糸音は志貴の手から離れ、腰を下ろすと少し不安そうな表情で志貴を見る。

「真宵を頼むぞ。そろそろ槍士も合流できるだろうから。まぁ・・後はよろしく!」

志貴はそう言って男の元へと早々に戻る。

「やぁやぁ、お待たせ。っんで、やるの?」

「生意気な奴だな。言っておくが貴様らを逃がすつもりはない。だから精々、足掻くといい」

「あぁそう。んじゃ、頑張るか・・・あっ!そうそう。そう言えばさっき強者がなんとかって言ってたけどさ、あれやめた方がいいよ」

「何だと?」

「あれさぁ、君が負けるんだから、後から恥ずか死ぬよ」

「ふん、本当に生意気だ。この俺に勝てると?」

「だから、そう言ってるじゃんか。何回も言わせんなよ。まぁでもちょっとは頑張らないとねー」

「そうか・・なら、生き残るために頑張れ。ひとまずは、あの小娘共には手を出さないでやる。殺すのは貴様を殺した後にでもするとしよう」

「あぁそう。少しやって君には退場してもらいたいんだけど。でも、簡単にはいきそうにないな」

「そりゃそうだろ。何故なら俺はお前らとは違うなんだからな」

「どういうことかな?」

「ふん、戦ってみればわかる。もっとも、お前にそれほどの力を見せるに値するのかどうかは知らんが」

「ちょくちょく煽ってくるな。はぁ、、まぁいいや。じゃあさっさとやろうか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隔ての空

宮塚恵一
ライト文芸
突如として空に現れた謎の円。 それは世界中のどこからでも見ることのできる不思議な円で、この世界にはあの円を見える人間とそうでない人間がいて、見える人間はひどく少ない。 僕もまたあの円が見える数少ない一人だった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

いつか『幸せ』になる!

峠 凪
ライト文芸
ある日仲良し4人組の女の子達が異世界に勇者や聖女、賢者として国を守る為に呼ばれた。4人の内3人は勇者といった称号を持っていたが、1人は何もなく、代わりに『魔』属性を含む魔法が使えた。その国、否、世界では『魔』は魔王等の人に害をなすとされる者達のみが使える属性だった。 基本、『魔』属性を持つ女の子視点です。 ※過激な表現を入れる予定です。苦手な方は注意して下さい。 暫く更新が不定期になります。

秘密部 〜人々のひみつ〜

ベアりんぐ
ライト文芸
ただひたすらに過ぎてゆく日常の中で、ある出会いが、ある言葉が、いままで見てきた世界を、変えることがある。ある日一つのミスから生まれた出会いから、変な部活動に入ることになり?………ただ漠然と生きていた高校生、相葉真也の「普通」の日常が変わっていく!!非日常系日常物語、開幕です。 01

ユメ/うつつ

hana4
ライト文芸
例えばここからが本編だったとしたら、プロローグにも満たない俺らはきっと短く纏められて、誰かの些細な回想シーンの一部でしかないのかもしれない。 もし俺の人生が誰かの創作物だったなら、この記憶も全部、比喩表現なのだろう。 それかこれが夢であるのならば、いつまでも醒めないままでいたかった。

ボイス~常識外れの三人~

Yamato
ライト文芸
29歳の山咲 伸一と30歳の下田 晴美と同級生の尾美 悦子 会社の社員とアルバイト。 北海道の田舎から上京した伸一。 東京生まれで中小企業の社長の娘 晴美。 同じく東京生まれで美人で、スタイルのよい悦子。 伸一は、甲斐性持ち男気溢れる凡庸な風貌。 晴美は、派手で美しい外見で勝気。 悦子はモデルのような顔とスタイルで、遊んでる男は多数いる。 伸一の勤める会社にアルバイトとして入ってきた二人。 晴美は伸一と東京駅でケンカした相手。 最悪な出会いで嫌悪感しかなかった。 しかし、友人の尾美 悦子は伸一に興味を抱く。 それまで遊んでいた悦子は、伸一によって初めて自分が求めていた男性だと知りのめり込む。 一方で、晴美は遊び人である影山 時弘に引っ掛かり、身体だけでなく心もボロボロにされた。 悦子は、晴美をなんとか救おうと試みるが時弘の巧みな話術で挫折する。 伸一の手助けを借りて、なんとか引き離したが晴美は今度は伸一に心を寄せるようになる。 それを知った悦子は晴美と敵対するようになり、伸一の傍を離れないようになった。 絶対に譲らない二人。しかし、どこかで悲しむ心もあった。 どちらかに決めてほしい二人の問い詰めに、伸一は人を愛せない過去の事情により答えられないと話す。 それを知った悦子は驚きの提案を二人にする。 三人の想いはどうなるのか?

処理中です...