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第七章 天使転輪
第177話 霧と糸 (ニ)
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宗谷は仰向けになりながら夕凪糸衛のことを思い出していた。
(そういえば、奴とはついぞ決着はつかなかったな、、)
そして、ゆっくりと立ち上がると夕凪糸音を見る。
「ふん、確かに。本意ではないが決着も悪くないか」
一人ごちながら、異能を使わずゆっくりと糸音へと歩み寄る。
「今思えばあの時からか。私にとって夕凪家とは抑止力そのものだ。何かを策略するとそこには必ず夕凪家がいたな。お前らはいつになっても立ちはだかる。厄介な血だな。ならばここで終わりにするのもまた一つか」
宗谷は手を伸ばせば糸音へと届く距離までやって来て止まる。糸音は何も言わずにただただ、目の前にいる宗谷を見上げる。
数秒、見つめ合った後、先に糸音が動きだした。片足を一歩引いて、拳を構えて突き出す。だがしかしその拳を宗谷は片手のひらで飄々と受け止めた。
「お返しだ」
宗谷は拳を引いて構えると糸音の顔面へと凄まじい一撃を繰り出した。
「!?」
宗谷の放って来る拳は糸音にとってゆっくりと向かって来る様に見えた。そして、実際にそれはゆっくりだった。ゆっくりのはずだったにもかかわらず、糸音は何故か避けれず顔面にくらってしまった。糸音は踏ん張り踏みとどまり、倒れることはなかった。糸音は休むことなく更なる無数の打撃を宗谷へと叩き込む。
「ふん、そんなものか。私もまだまだ体が鈍ってはいるが、これでは話にならんな」
宗谷は殴られ続けながら微動だせず、拳をゆっくりと構えて下から思いっきり糸音の腹へと目掛けて重い一撃を突き上げる。
「ぐはっ!!」
糸音は拳の衝撃により宙へと浮いた。
「まだだぞ」
宗谷はさらに糸音の横腹を蹴り飛ばた。糸音は軽々しく吹っ飛んでいき、近くにあった岩へと激突した。
(なんて力だ!、、!?ゆっくりのはず、はずだが何故か避けれなかった、、どういうことだ)
「はっ!?」
糸音が顔を上げるとすでに拳を構えた宗谷が目の前にいた。そして、先ほどよりも重い一撃をその体にくらった。
ドガッ!!!!!
宗谷の拳は糸音の後ろにあった岩ごと砕き、辺りに砂埃がたち登る。
「こんなところでくたばるなよ夕凪糸音。私がせっかく付き合ってやってるだからな」
砂埃が捌けるとそこには、誰も居なかった。
「!?」
「こっちだ馬鹿野郎が!」
声は宗谷の上空から聞こえて来ると、そこには糸音が空中に立っていた。そして、上空から糸で編まれた無数の拳の雨を宗谷へと降り注いだ。宗谷は咄嗟に両腕でガードをせざるを得なかった。
「ふっ、忘れていた。あの男の弟子であることを」
宗谷は霧となり消えると空中にいる糸音の目の前に現れて、霧で無数の拳を具現化させると叩き込む。糸音はその一つ一つに糸で編み出す拳をぶつけていく。激しい打撃ラッシュの打ち合い。
ドッドッドッドッドッドッドッ!!!!!!!!
「面白くなってきた。夕凪糸音!お前との戦い、天への手土産とさせてもらうぞ!!」
打ち合いが始まって、体感にして一体おおよそ何秒たったのだろうか。両者一歩も引かないこの状況。
「キリがないな。少し変えてみるか」
宗谷は少し後ろへと退くと拳を針状に変えて糸音へと放った。糸音は咄嗟の判断で針剣を抜いて向かってくる霧針に向かっていく。
「叩き落とす!」
糸音は霧針の中を足元に張り巡らしておいた糸の上を一気に駆け抜ける。
カンッ!
霧針は糸音の持つ針剣によって次から次へとはたき落とされる。そしてその時、糸音は不意に一つの違和感を覚えた。
(さっきも思ったが、私は何か勘違いしているのでは、、)
霧針を抜けて宗谷の目前へとやって来る。そして、そのままの勢いで針剣を構えて斬り込む。がしかしこれを宗谷は仰け反り避ける。攻撃は止める事なく糸音は斬り込んでいく。宗谷はしばらく避けながら距離をとっていたが、霧を剣に変えると糸音の針剣へと当てに行く。
カンッ!カッカッカッ!!カッカッ!!
両者の剣は急所に当たる事なく火花散り合う怒涛の立ち合いとなっていた。その最中、糸音は宗谷へと疑問を投げかける。
「一ついいか?」
「この状況で話せるのか?随分と悠長な事だ」
「どうしても気になってな。お前の霧は何故固まる?」
(そういえば、奴とはついぞ決着はつかなかったな、、)
そして、ゆっくりと立ち上がると夕凪糸音を見る。
「ふん、確かに。本意ではないが決着も悪くないか」
一人ごちながら、異能を使わずゆっくりと糸音へと歩み寄る。
「今思えばあの時からか。私にとって夕凪家とは抑止力そのものだ。何かを策略するとそこには必ず夕凪家がいたな。お前らはいつになっても立ちはだかる。厄介な血だな。ならばここで終わりにするのもまた一つか」
宗谷は手を伸ばせば糸音へと届く距離までやって来て止まる。糸音は何も言わずにただただ、目の前にいる宗谷を見上げる。
数秒、見つめ合った後、先に糸音が動きだした。片足を一歩引いて、拳を構えて突き出す。だがしかしその拳を宗谷は片手のひらで飄々と受け止めた。
「お返しだ」
宗谷は拳を引いて構えると糸音の顔面へと凄まじい一撃を繰り出した。
「!?」
宗谷の放って来る拳は糸音にとってゆっくりと向かって来る様に見えた。そして、実際にそれはゆっくりだった。ゆっくりのはずだったにもかかわらず、糸音は何故か避けれず顔面にくらってしまった。糸音は踏ん張り踏みとどまり、倒れることはなかった。糸音は休むことなく更なる無数の打撃を宗谷へと叩き込む。
「ふん、そんなものか。私もまだまだ体が鈍ってはいるが、これでは話にならんな」
宗谷は殴られ続けながら微動だせず、拳をゆっくりと構えて下から思いっきり糸音の腹へと目掛けて重い一撃を突き上げる。
「ぐはっ!!」
糸音は拳の衝撃により宙へと浮いた。
「まだだぞ」
宗谷はさらに糸音の横腹を蹴り飛ばた。糸音は軽々しく吹っ飛んでいき、近くにあった岩へと激突した。
(なんて力だ!、、!?ゆっくりのはず、はずだが何故か避けれなかった、、どういうことだ)
「はっ!?」
糸音が顔を上げるとすでに拳を構えた宗谷が目の前にいた。そして、先ほどよりも重い一撃をその体にくらった。
ドガッ!!!!!
宗谷の拳は糸音の後ろにあった岩ごと砕き、辺りに砂埃がたち登る。
「こんなところでくたばるなよ夕凪糸音。私がせっかく付き合ってやってるだからな」
砂埃が捌けるとそこには、誰も居なかった。
「!?」
「こっちだ馬鹿野郎が!」
声は宗谷の上空から聞こえて来ると、そこには糸音が空中に立っていた。そして、上空から糸で編まれた無数の拳の雨を宗谷へと降り注いだ。宗谷は咄嗟に両腕でガードをせざるを得なかった。
「ふっ、忘れていた。あの男の弟子であることを」
宗谷は霧となり消えると空中にいる糸音の目の前に現れて、霧で無数の拳を具現化させると叩き込む。糸音はその一つ一つに糸で編み出す拳をぶつけていく。激しい打撃ラッシュの打ち合い。
ドッドッドッドッドッドッドッ!!!!!!!!
「面白くなってきた。夕凪糸音!お前との戦い、天への手土産とさせてもらうぞ!!」
打ち合いが始まって、体感にして一体おおよそ何秒たったのだろうか。両者一歩も引かないこの状況。
「キリがないな。少し変えてみるか」
宗谷は少し後ろへと退くと拳を針状に変えて糸音へと放った。糸音は咄嗟の判断で針剣を抜いて向かってくる霧針に向かっていく。
「叩き落とす!」
糸音は霧針の中を足元に張り巡らしておいた糸の上を一気に駆け抜ける。
カンッ!
霧針は糸音の持つ針剣によって次から次へとはたき落とされる。そしてその時、糸音は不意に一つの違和感を覚えた。
(さっきも思ったが、私は何か勘違いしているのでは、、)
霧針を抜けて宗谷の目前へとやって来る。そして、そのままの勢いで針剣を構えて斬り込む。がしかしこれを宗谷は仰け反り避ける。攻撃は止める事なく糸音は斬り込んでいく。宗谷はしばらく避けながら距離をとっていたが、霧を剣に変えると糸音の針剣へと当てに行く。
カンッ!カッカッカッ!!カッカッ!!
両者の剣は急所に当たる事なく火花散り合う怒涛の立ち合いとなっていた。その最中、糸音は宗谷へと疑問を投げかける。
「一ついいか?」
「この状況で話せるのか?随分と悠長な事だ」
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