天使ノ探求者

はなり

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第七章 天使転輪

第131話 火氷零結天冷帝

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「勝手に殺さないでくださいな」
 
「おいおい、まだ生きてんのかよ」

涼香は何事もなかったかの様に再び現れる。
 
「それで、話の続きですが。あなた、名をつけて見なさいな」
 
「名前か、そうだな、、今はいいかな。あんたを殺すのには十分だからな」
 
「はぁ、舐められたものですわね。なら、追い込んでみましょうか」
 
エントリームは涼香いる辺り一帯を炎の柱で包みこむ。
 
「さすがにこれは逃げ場がないだろ」
 
「まだまだですわね」
 
炎の柱が収まると再び涼香が現れた。エントリームは涼香の姿を確認すると深くため息をつく。
 
「はぁ、やっぱり生きてたか」
 
「それで、今の力でどうやって私を殺すんですの?」
 
「ならこれはどうだ」
 
そういうとエントリームの足元からマグマが溢れ出してゆっくりと涼香へと迫っていく。
 
「なるほど、地面を全て埋め尽くして逃げ場を無くすのですね。発想は悪くありませんわね」
 
「その余裕もここまでだな。出し惜しみでこれもいっとくか」

そう言ってエントリームが指を鳴らすと再び炎の柱が辺り一帯に勢いよく噴き出した。炎の柱の内側の温度はすでに、生物が生存できる温度を超えていた。
 
「これで生きているなら、本物の化け物だぜ」
 
「やはり、まだまだですわね。物足りませんわ」
 
「なっ!?」
 
「何を驚いているんですの?」
 
エントリームが驚くのも無理はなかった。なぜなら地面は今、溶岩だらけで足場もない。炎の柱と地面の溶岩によって辺りの温度は凄まじい高温のはず。なのに目の前にいる者は、涼香は、今燃え盛る炎の中にいたのだった。衣服も燃えることなく、ただただ涼しい表情をして歩いていた。
 
「不思議なもんだな。それ一体どんなトリックなんだ?」
 
「どうやら、追い込まないとできないタイプみたいですわね」
 
「おいおい、無視かい?」
 
「見せてあげましょうか、本物を」
 
次の瞬間、エントリームの顕現させた炎の柱は一瞬にして氷漬けになった。
 
「まじか、、炎って凍るのか」
 
「ふっふっふ、いい反応ですわね。さぁ、連れて行ってさしあげますわ。私の火氷零結天冷帝 へ」
 
エントリームは目を疑った。何故なら一瞬の瞬きで別の世界へと飛ばされていた。

「なっ、なんだ?ここは、、」
 
辺り一面が、氷の平原でその何もないただ氷の上にエントリームは立っていた。しかし、よく見ると彼方には城のような建物が見える。
 
「一体なにが起こったんだ?涼香は!?」
 
「私ならここですわよ」
 
いつの間にか涼香は目の前に浮いていた。しかし、よく見ると涼香は薄い氷の上に立っているだけだった。
 
「おい、なんだこれは?」
 
「ここは私が作り出したですわ」
 
「作り出しただと?」
 
「ええ」
 
涼香は目に見えないほどの薄い氷の階段を降りてくる。
 
「天地創世とは世界そのものを作ることですわ。別の次元といえばわかりやすいかもしれませんわね」
 
「ばかな!そんなことが許されるのか、。」
 
「許しも何も、ここは私が作り出した私だけの世界なんですから。誰にも咎められませんわ」

「たしかにそうだが、、、」

涼香は彷彿な笑みを浮かべながら楽しそうに再び語り出す。

「私は異能の研究を長年続けてきましたわ!そして、これに出会ってしまいました!異能というのは本当に素晴らしいものですわ!だって!別の世界が作れるんですのよ?嫌いな、汚い現世にいる必要がないんですから!」
 
「待て!たしかにすごい、すごいが、お前は今、現世にいる必要がないと言ったな。なら今までの涼香は一体なんなんだ?」
 
「あれは私の分身体、そして私もその分身体の一人」
 
「なら、はどこにいるんだ?」
 
涼香が城の方向を指を指す。
 
「私の本体はあの城の中ですわ。でも、あなたではあそこへは辿り着けませんわよ」
 
「なぜ言い切れる?」
 
「だってほら、あなた足がもう凍っているでしょう?」
 
「なっ!?」
 
エントリームは言われて足を見る。すると両足がいつのまにか氷で覆われていた。
 
「ふん、こんなもの、俺の炎で!」
 
両足を覆っていた氷はエントリームの熱によって次第に溶けていった。しかし、今度は両腕に暑さを感じた。
 
「あっつ!なんだ?」
 
痛みを感じた箇所を見ると、赤く腫れているのを確認する。
 
「熱いでしょう。それは低温火傷と言うものですわ。私の世界はマイナスのしかも超極寒世界。気づかぬうちに体温を奪われて、気づいたら氷漬けにされていますわ。長時間の氷点下での呼吸は喉を火傷させましょう。ほら、ほら、喉が痛くなり息が苦しくなってきたでしょう?」
 
「はぁ、、、はぁ、、、なんだ、、」
 
エントリームは急激に息が上がり始めて膝をつく。
 
「あなたなら、まだいけると思ったんですけどね。拍子抜けですわね。このまま放っておいても死にそうですし。そうですわね、凍らせてせめて私のコレクションにして差し上げますわ」
 
「こんな、、、とこで、、おれは、、」
 
体の熱を上げるも間に合わず、エントリームの全身は氷漬けになり固まってしまった。
そして、エントリームは遠い日の記憶に触れた。

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