天使ノ探求者

はなり

文字の大きさ
上 下
128 / 195
第七章 天使転輪

第127話 相性

しおりを挟む


「いったいどこまで行ったんですの?」
 
涼香はエントリームの後を追って森に入ったが一向に彼の姿が見えてこなかった。しばらく歩いていると森が開けてきて火山地帯があった。そしてそんな火山地帯にエントリームはいた。
 
「全く、レディを歩かせるなんて最悪ですわね」
 
「悪いね、女帝さん」
 
「その女帝さんっていうのやめてくださるかしら」
 
「おうけい。じゃあ俺から名乗らせてもらうぜ。俺はエントリーム。お嬢さんのお名前は?」
 
「あらあら、心得ているのね。私は夕凪涼香よろしくですわ」
 
「なぁ、涼香は氷を操るって聞いたんだけどよ。正直、俺とは相性最悪だぜ」
 
「早速、下の名前で呼ぶとは、やはり見た目通りの男ですわね。それで相性が最悪というのは?」
 
「あー、だって俺は炎を操るんだぜ。火と氷、どう考えても不利だろ、あんた」
 
「やってみないとわかりませんわよ」
 
「まぁたしかに、、やっぱり面白いなあんたは」
 
「あなたも面白い男ですわね。とても興味深いですわ」
 
「なんだ?ナンパか?」
 
「悪くはないですが、まずは殺し合いを楽しみましょうか」
 
「!?」
 
その瞬間、場の空気が一瞬で変わった。冷たく鋭い殺気をエントリームは感じた。
 
「恐ろしいね。そういや相性が悪いと言えばさっきの子かわいそうだぜ」
 
「ん?あら、何故ですの?」
 
「だってあっちは火と水だろ?めちゃくちゃ最悪じゃんか」
 
「ふっふっふ、たしかに最悪ですわね。でもそんな事は今はどうでもいいでしょう。さぁやりましょうか」
 
(もっとも、最悪なのは後で待っている、を止めなくてはならないという事ですが)


 
火憐は海にできるだけ近寄らずに水鏡からの水の攻撃を次から次へとかわしていた。
 
「なかなかタフですね。さすがは夕凪家ですか!」
 
「あー、もー鬱陶しいな水って!」
 
火憐は繰り返し水鏡を鎖で当てたり、殴ったりしていた。その度に再生する水鏡にイライラしていた。そして火憐のそのイライラが自身の隙を生むことになってしまう。
 
「君はすぐに感情的になるな。だから隙が生じる!」
 
「ぐっ!」
 
水鏡は火憐の隙をついて、大きさがバラバラの無数の水球体を作り出して火憐へと当てる。火憐は全てを避けきることができず数発命中して、たまらず膝をつく。
 
「はぁ、、はぁ、、やってくれたな!ん?」
 
気づくと火憐の目の前には小さな水球体があった。
 
「!?」
 
そして、その水球体が弾けて無数の水の針が火憐の体を串刺しにした。火憐は血まみれになり意識を失ってその場に倒れた。
 
「死体は綺麗なままが良かったんですが。まぁ仕方ありませんね」
 
火憐の元へと近づき水を操り、人が入れるくらいの水球体を作り出してその中へ火憐を入れた。
 
「かなりダメージは負ったはずですから、あとはこれに入れて窒息でもさせますか」
 
火憐は水牢に入れられて空中を浮遊しながら運ばれる。
 
「さて、エントリームの方はどうでしょうか。あの軽薄な男は火氷の女帝を舐めている節がありましたからね。今頃、痛い目にあっているかもしれま、、!?」
 
水鏡は急に後方から冷たい殺気を感じて振り返るが、しかしそこには誰もいなかった。いるのは今し方、水牢に入れた火憐だけであった。
 
「なんだ、気のせいか、、まさかな、、」
 
次の瞬間、再び殺気を感じて自ら作った水牢から離れて距離をとる。
 
(気のせいではない!?これは!)
 
火憐の入れていた水牢が消えた。正確には火憐の中に消えていく様に水鏡には見えていた。そして火憐はやわらかい砂浜へと落ちた。
 
「な、なんだ!?何が起こっている!まだ死んでいないのか!?ならば!」
 
水鏡は水の槍を無数に作り出し、そして火憐へと飛ばす。
 
「ばっ、ばかな!」
 
水鏡は目を疑った。その水槍は火憐には当たったが、火憐は無傷だった。それどころか飛ばした水槍が全て火憐に当たるとまるでスポンジの様に火憐の体へと吸収されていった。そして火憐はゆっくりと起きて立ち上がった。
 
「な、なぜ生きている!いや!それよりもさっきからそれはなんだ!?」
 
「はっはっは!慌てるなよ。うるさいやつだな」
 
火憐は不敵に笑って水鏡を見据えた。
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私のせいで婚約破棄ですか? 思い当たることがないのですが?

柚木ゆず
恋愛
 17歳の令嬢・リコは、王太子アルベールに浮気を理由として婚約を破棄される。  だがそれは、アルベールの嘘。  リコに一目惚れをしていたはずのアルベールは、他の令嬢に一目惚れをしてしまっていた。そのため彼は自分に非がない形で解消するため、浮気を捏造していたのだった。 『私には好意がなかったので、正直に言ってくれれば丸く収まっていましたのに。そちらが陥れようとするのであれば、仕方がありませんね。しっかりとお返しをさせてもらいましょう』  リコの逆襲が、静かに始まる――。 ※12月17日 番外編(補完編)の投稿を始めました。

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

完璧な妹に全てを奪われた私に微笑んでくれたのは

今川幸乃
恋愛
ファーレン王国の大貴族、エルガルド公爵家には二人の姉妹がいた。 長女セシルは真面目だったが、何をやっても人並ぐらいの出来にしかならなかった。 次女リリーは逆に学問も手習いも容姿も図抜けていた。 リリー、両親、学問の先生などセシルに関わる人たちは皆彼女を「出来損ない」と蔑み、いじめを行う。 そんな時、王太子のクリストフと公爵家の縁談が持ち上がる。 父はリリーを推薦するが、クリストフは「二人に会って判断したい」と言った。 「どうせ会ってもリリーが選ばれる」と思ったセシルだったが、思わぬ方法でクリストフはリリーの本性を見抜くのだった。

前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています

矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜 ――『偽聖女を処刑しろっ!』 民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。 何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。 人々の歓声に包まれながら私は処刑された。 そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。 ――持たなければ、失うこともない。 だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。 『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』 基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。 ※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)

亡くなった王太子妃

沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。 侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。 王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。 なぜなら彼女は死んでしまったのだから。

処理中です...