天使ノ探求者

はなり

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第六章 修羅夢語

第118話 対峙

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「大丈夫かぁ?ルクスリア」

唖然とするルクスリアに詩織は呑気に声をかける。

「あ、あぁ。それよりも糸音、生きていたんだな」
 
「あぁ、心配かけたな」
 
「生きていたなら良かった」
 
「夕凪糸音!」

その様子を静かに見ていた椿は声をあげる。

「少し早いが、まぁいいだろう。目の前で大切な者を奪われる苦しみを味合わせる絶好の機会が生まれたんだ、喜ぶべきか」
 
「もう、やめよう椿。全部思い出したよ。すまなかった」
 
「ふざけるな!謝罪の言葉などいらない!お前は、、お前は、、兄さんを殺したんだ、、私が受けた苦しみをお前にも味わってもらう!」

椿は糸音に斬りかかる。しかし糸音はそれを避けずに針剣で受け止める。
 
「お前を許さない!ルクスリアもお前も何もかも全部壊す!お前が守ってきたもの全て!」
 
「それが紅羽と共に守っていたものでもか?」
 
「うるさい!私はお前に苦しみを与えれるならどんなことでもする!」
 
「なら、お前は私が止めないといけない、友として」
 
「今さら友などと口にするな!」
 
椿は糸音を薙ぎ払おうとして再び和刀を振り翳す。しかし糸音はそれを避けずに針剣で弾いた。その衝撃で仰け反る椿に拳を叩き込み吹っ飛ばし本棚に叩きつけた。
 
「ぐはっ!」 
 
「さすが糸音。強いな」
 
そんな声をあげる、相変わらずマイペースな詩織に対してルクスリアは糸音の強さに素直に驚いていた。
 
(本当にあの糸音なのか?)
 
「面白い、お前を心の底から屈服させ全部ぶっ壊してやる」
 
椿は倒れた本棚から立ち上がり、和刀をしまう。
 
「どうした?こないのか?」
 
「お前は殺す、だがここではやらん」
 
「どういうことだ?」

椿はまだ針剣を構えている糸音に背を向ける。
 
「明日朝、で待つ。言わずともわかるだろ。全力のお前を倒して、地獄絵図を見せてやる」
 
椿はそれだけ言い残して司令室から去って行った。
 
「追わなくていいのか糸音」
 
「あぁ、あいつの好きにさせてやるさ。ところでルクスリアは大丈夫か?」
 
「ん?あ、あぁ、、それよりも、部屋が無茶苦茶だ」

見ると司令室は本が散乱していたり机がぶっ壊れていたり、バイクで突っ込まれたせいで壁に穴まであいている惨状だった。
 
「あらら」
 
「すまんな、これは詩織のせいだ」
 
「おい!糸音も同罪だろ」
 
「片付けは手伝ってやるよ」

そんな様子を見てルクスリアは笑う。
 
「ふっふ」
 
「ん?どうしたルクスリア」
 
「いや、何でもない。相変わらず変わっていない二人共」
 
糸音と詩織は顔を見合わせて笑った。
 
「変わったよ。でもこういうところは変わらないな」
 
「さぁ、片付けましょー」
 
たったったったた!
 
三人が片付けを始めようとしたら廊下から誰かが駆けてくる足音が聞こえた。
 
「ルクスリアさん!だい、じょうぶ?」
 
走ってきたのは先の戦闘で少しボロボロになったジータだった。
 
「よう、もしかしてジータか?」
 
「え?も、もしかして、、糸音さん?」
 
「久しぶりだなジータ」
 
ジータは糸音にゆっくりと近づいていき抱きついた。
 
「あぁ、、糸音さん、、生きて、いたんですね。良かった、、」
 
「あぁ、ただいまジータ」
 
ジータは糸音に抱きついたまま涙を流した。
 
「えーと、私は?」
 
「詩織さんは先日会ったでしょ」
 
「そうなんだけど、、」
 
「あっ!椿姉さんは?」
 
「あいつは一旦退いたよ。糸音のおかげでな」
 
「糸音さん、椿姉さんを助けてあげてください」
 
「あぁ、当たり前だ」
 
「ジータ、ひとまず住民を元に戻そう。事情をそれとなく伝えてな」
 
「わかりました。では、皆さんまた後で」
 
ルクスリアの命令を受けて颯爽と去っていった。
 
「さて、ひとまずミナモさんのところへ行こうか。あの人は今もあの家に住んでいる。二人共、今日はそこで泊めてもらうといい、後で私も行く」
 
「あぁ、ありがとう」
 
「じゃ、いきますか」
 
二人はルクスリアを残してミナモのいる紅呂家へと向かった。
 
 
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