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第五章 忘却再生
第101話 道中に
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一
翌朝、糸音は目を覚まし廊下に出ると、杖をついた足に包帯を巻かれた椿とバッタリ会った。
「おはよう椿」
「おはよう、昨日はなんかごめんね」
「いや、いいよ。それより、大丈夫か?」
「うん!まぁ二ヶ月くらいで治りそうなんだって」
「そうか、今日は森の様子を見てくる。椿は家でゆっくりして」
「一緒に行きたいけど、当分は我慢だね」
糸音は椿を気遣い、リビングへゆっくりと向かった。リビングには未だにぐっすりとソファで横になり眠っている紅羽がいた。ミナモさんは早々に起きてリビングの掃除に励んでいた。
「おはよう、ミナモさん朝食をお願いしても」
「おはようございます。了承しました、では朝食を持って来ますのでしばしお待ちを」
ミナモはキッチンへと向かった。糸音は椿に寄り添って椅子へと座らせると自分もその向かいに座る。
「はぁ、ごめんね」
「いいよ」
ミナモがキッチンから朝食を運んできて、それを並べていると紅羽が朝食の匂いに釣られてかソファから起き上がる。
「いい匂いだ、おはよう」
「おはよう、兄さん昨日はごめんなさい」
「おはよう、昨日は本当に心配したんだぞ。当分は一人で森へ行くことは禁止だ」
「うん」
そうしているとリビングに最後の一人、ルクスリアが起きてきて空いている椅子へと向かった。
「おはよう、みなさん」
「おはよう」
「おはよう、、ルクスリアさん」
椿は椅子をルクスリアの方へ向けると頭を下げた。
「昨日は本当にありがとうございました。それと失礼な事をしてごめんなさい」
ルクスリアはキョトンとした目で椿を見ると微笑みながら椿の頭を撫でる。
「いや、こちらこそ驚かせてすまなかったな」
その様子を見て紅羽は立ち上がり宣言する。
「よし!今日こそ、ルクスリアの歓迎会を開こう!」
「うん!開こう!」
椿は手を挙げて笑った。
その後、ルクスリアと紅羽はカンナギの館へと向かい、糸音は森の中を探索に向かった。
二
(しかしこの森、前から思っていたが動物がやけに少ないな。動物避けの結界でもあるのか、そうだったとしても、それなら何故熊が現れた)
糸音は熊が殺されたところまでやってきた。その熊の死体は腐敗が始まり残りカスをカラスが突いていた。
「他の肉食動物は近くには居ないみたいだな」
糸音はしばらく辺りを散策するが特に変わった事もなく、時間が過ぎていった。
(やはり、たまたまだったのか?もう少し奥の方へ行き調べてみるか)
糸音は森の奥深くへと進んで行った。
三
紅羽とルクスリアは南京の通りを歩いてカンナギの館へと向かっていた。その道中、見知った人物が前を歩いていたので紅羽は手を振り声をかけた。
「シャオさんじゃないですか!」
そのシャオという人物は振り返るとゆっくりと紅羽に近づいてきた。人混みで見えなかったが椿と同じくらいの子供も一緒に居た。
「誰かと思えば紅羽やんか、全然会わへんからまたどっか行ったと思ったわ」
「いやぁ、色々ありまして。それでシャオさん、その子は?」
「あぁ。挨拶しいや」
「こんにちは!うちの名前は雷々メイです!よろしくです!」
メイは軽くお辞儀をする。
「シャオさん、まさかシャオさんの子供ですか?」
「まぁ、そうなるなぁ」
「まじですか!まさかシャオさんが子育てとは」
「なんやぁ、文句あるんかぁ?」
「いやいや、とんでもない。するとこれからお出かけですか?」
「いや、今からちょっと旅に出ようと思ってな」
「旅ですか、またどうして」
「そうやな、特に理由はないけど。この子あまりにも外の世界知らなさすぎやから一緒に各地でも周ろう思ってな」
「そりゃあ、また楽しそうですね。俺は当分ここにいますから、また帰ったら呑みにでも行きましょう」
「せやな!ところでそちらは?」
そう言われて紅羽の後ろに居たルクスリアは前へ出てくる。
「名乗り遅れて申し訳ない。私はヘイオーからの使者で、紅羽の友人のルクスリアという者です」
「ヘイオーか、そういやあんたが仲間引き連れて国ごと変えたって聞いたで」
「正確には、このルクスリアが先導となってですが。それでこれから皇王と会談なんですよ」
「なるほどな、ところでルクスリアさんや、あんた人間やないな」
「!?」
「まぁ、そう構えなや。何もしやんで、うちの古い友人にも同じのがおるからな。そういうのには寛容なんよ」
「そうですか、その友人にも話を聞きたいものですね」
「いや、ずっと会ってないし、どこにおるかもわからんのやけどな。ずっと探しとるんやがな」
シャオはどこか寂しそうな顔をする。
「会えるといいですね」
「せやな、まぁまた今度ゆっくり話しましょうやルクスリアさん」
「ぜひ」
「ほな、メイご暇そうにしとるから、もう行くわ!」
半分寝かかっていたメイは最後に一回お辞儀をしてシャオと共に去って行った。
「あの人強いだろ、しかも相当」
「あぁ、あの人は怪物だよ。まぁこんな事言ったら怒られるがな」
「そうか、次に会う時が楽しみだな」
二人は再び館へと向かい歩きだした。
翌朝、糸音は目を覚まし廊下に出ると、杖をついた足に包帯を巻かれた椿とバッタリ会った。
「おはよう椿」
「おはよう、昨日はなんかごめんね」
「いや、いいよ。それより、大丈夫か?」
「うん!まぁ二ヶ月くらいで治りそうなんだって」
「そうか、今日は森の様子を見てくる。椿は家でゆっくりして」
「一緒に行きたいけど、当分は我慢だね」
糸音は椿を気遣い、リビングへゆっくりと向かった。リビングには未だにぐっすりとソファで横になり眠っている紅羽がいた。ミナモさんは早々に起きてリビングの掃除に励んでいた。
「おはよう、ミナモさん朝食をお願いしても」
「おはようございます。了承しました、では朝食を持って来ますのでしばしお待ちを」
ミナモはキッチンへと向かった。糸音は椿に寄り添って椅子へと座らせると自分もその向かいに座る。
「はぁ、ごめんね」
「いいよ」
ミナモがキッチンから朝食を運んできて、それを並べていると紅羽が朝食の匂いに釣られてかソファから起き上がる。
「いい匂いだ、おはよう」
「おはよう、兄さん昨日はごめんなさい」
「おはよう、昨日は本当に心配したんだぞ。当分は一人で森へ行くことは禁止だ」
「うん」
そうしているとリビングに最後の一人、ルクスリアが起きてきて空いている椅子へと向かった。
「おはよう、みなさん」
「おはよう」
「おはよう、、ルクスリアさん」
椿は椅子をルクスリアの方へ向けると頭を下げた。
「昨日は本当にありがとうございました。それと失礼な事をしてごめんなさい」
ルクスリアはキョトンとした目で椿を見ると微笑みながら椿の頭を撫でる。
「いや、こちらこそ驚かせてすまなかったな」
その様子を見て紅羽は立ち上がり宣言する。
「よし!今日こそ、ルクスリアの歓迎会を開こう!」
「うん!開こう!」
椿は手を挙げて笑った。
その後、ルクスリアと紅羽はカンナギの館へと向かい、糸音は森の中を探索に向かった。
二
(しかしこの森、前から思っていたが動物がやけに少ないな。動物避けの結界でもあるのか、そうだったとしても、それなら何故熊が現れた)
糸音は熊が殺されたところまでやってきた。その熊の死体は腐敗が始まり残りカスをカラスが突いていた。
「他の肉食動物は近くには居ないみたいだな」
糸音はしばらく辺りを散策するが特に変わった事もなく、時間が過ぎていった。
(やはり、たまたまだったのか?もう少し奥の方へ行き調べてみるか)
糸音は森の奥深くへと進んで行った。
三
紅羽とルクスリアは南京の通りを歩いてカンナギの館へと向かっていた。その道中、見知った人物が前を歩いていたので紅羽は手を振り声をかけた。
「シャオさんじゃないですか!」
そのシャオという人物は振り返るとゆっくりと紅羽に近づいてきた。人混みで見えなかったが椿と同じくらいの子供も一緒に居た。
「誰かと思えば紅羽やんか、全然会わへんからまたどっか行ったと思ったわ」
「いやぁ、色々ありまして。それでシャオさん、その子は?」
「あぁ。挨拶しいや」
「こんにちは!うちの名前は雷々メイです!よろしくです!」
メイは軽くお辞儀をする。
「シャオさん、まさかシャオさんの子供ですか?」
「まぁ、そうなるなぁ」
「まじですか!まさかシャオさんが子育てとは」
「なんやぁ、文句あるんかぁ?」
「いやいや、とんでもない。するとこれからお出かけですか?」
「いや、今からちょっと旅に出ようと思ってな」
「旅ですか、またどうして」
「そうやな、特に理由はないけど。この子あまりにも外の世界知らなさすぎやから一緒に各地でも周ろう思ってな」
「そりゃあ、また楽しそうですね。俺は当分ここにいますから、また帰ったら呑みにでも行きましょう」
「せやな!ところでそちらは?」
そう言われて紅羽の後ろに居たルクスリアは前へ出てくる。
「名乗り遅れて申し訳ない。私はヘイオーからの使者で、紅羽の友人のルクスリアという者です」
「ヘイオーか、そういやあんたが仲間引き連れて国ごと変えたって聞いたで」
「正確には、このルクスリアが先導となってですが。それでこれから皇王と会談なんですよ」
「なるほどな、ところでルクスリアさんや、あんた人間やないな」
「!?」
「まぁ、そう構えなや。何もしやんで、うちの古い友人にも同じのがおるからな。そういうのには寛容なんよ」
「そうですか、その友人にも話を聞きたいものですね」
「いや、ずっと会ってないし、どこにおるかもわからんのやけどな。ずっと探しとるんやがな」
シャオはどこか寂しそうな顔をする。
「会えるといいですね」
「せやな、まぁまた今度ゆっくり話しましょうやルクスリアさん」
「ぜひ」
「ほな、メイご暇そうにしとるから、もう行くわ!」
半分寝かかっていたメイは最後に一回お辞儀をしてシャオと共に去って行った。
「あの人強いだろ、しかも相当」
「あぁ、あの人は怪物だよ。まぁこんな事言ったら怒られるがな」
「そうか、次に会う時が楽しみだな」
二人は再び館へと向かい歩きだした。
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