天使ノ探求者

はなり

文字の大きさ
上 下
101 / 199
第五章 忘却再生

第100話 捜索

しおりを挟む
糸音はいつもの稽古場である小川に行ったが誰も居なかった。
 
「ここでは無いのか」
 
一方、紅羽は昔よく椿と遊んでいた秘密基地へ探しに行くがそこにも居なかった。そしてルクスリアは匂いを頼りに椿を捜索していた。
 
「この辺りで匂いが消えているな」
 
辺りを見渡すと森しかなかったがしばらく歩いていると崖が出て来た。
 
「まさか、落ちたのか」
 
ルクスリアは崖の下へと降りていくと木に引っかかっていた椿を発見した。
 
「居た!おい、しっかりしろ」
 
ルクスリアは椿を木から下ろすと呼びかける。しばらくして椿が目を開けた。
 
「あ、、ルクスリアさん、ごめん、、ね、うっ!」
 
「どうした!ん?」
 
椿の体を見ると足を怪我していた。
 
「折れて、、歩けないや」
 
「任せろ、私が連れて帰るよ」
 
「ありがとう」
 
ルクスリアは椿を担いで、かなりの高さがあった崖を一っ飛びで元いた場所まで戻る。
 
「すごい、ね」
 
「大丈夫か?」
 
「うん」
 
「!?」
 
ルクスリアが正面を向くとそこには大きな熊が立ちはだかっていた。
 
「あ、さっきの熊、、」
 
「さっきの?なんだコイツから逃げていたのか」
 
「そう、、それで落ちちゃって」
 
「なるほどな」
 
ルクスリアは熊に警戒しながら椿を近くの木の根元でおろす。
 
「ちょっとだけ、大人しくここにいろ、すぐに終わる」
 
ルクスリアは熊に向き直ると熊へと近づいていく。熊は威嚇を始めて、ルクスリアが手の届く範囲まで来ると立ち上がり、鋭く尖った爪で攻撃をしてくる。しかし、熊の爪はルクスリアに届くことはなかった。ルクスリアはは目にも止まらぬ速さで熊の胴体を真っ二つにした。
 
「すごい、、」
 
それを見ていた椿は感嘆の声をもらした。
 
「お待たせ、じゃあ帰ろうか」
 
「うん」
 
ルクスリアは椿を再び背負うと来た道を戻る。その道中、紅羽と糸音に会った。
 
「椿!」
 
二人は椿を背負ったルクスリアへ駆け寄る。
 
「足が折れているみたいだ。このまま私がおぶって帰るよ」
 
「全く、お騒がせな妹だ。でも見つかって良かったよ。ルクスリア、すまないな」
 
「いいよ」
 
「とりあえず、帰ってミナモさんに見てもらおう。ミナモさんは元医者だからな」
 
「そうだったのか」
 
三人は椿を背負って洋館へと帰っていった。洋館へと到着するとミナモに椿を任せて、三人は料理にラップをかけて冷凍室にしまった。
そして、リビングで椅子に座り一息つく。
 
「でかい熊に襲われたそうだ」
 
「熊?」
 
「森でよく椿と遊んでいたが熊なんて見たこと無かったぞ」
 
「だろうな、熊なんてこの辺にはいなかったはずだから」
 
「明日、私が森へ出て他に何か居ないか調べてみるよ」
 
「すまないな、明日、俺とルクスリアは館へ行かないといけないから一緒には行けない。無茶はするなよ」
 
「任せろ、私を誰だと思っている」
 
「そうだな。私は風呂へ入ってもう寝るよ、ルクスリア、明日またゆっくり話そう。歓迎もやり直しだ」
 
「あぁ、また明日な」
 
糸音はリビングを去っていった。
 
「はぁ、全く心臓に悪いぜ。ルクスリアが居てくれて助かったよ」
 
「無事で良かったよ。あの崖の高さから落ちて骨折で済んだのは幸いだったな」
 
「当分は一人で森へ行くのは禁止にしないとな。まぁ、最近は糸音も一緒だから大丈夫か」
 
「どうだ、糸音は?」
 
「あぁ、椿とよく遊んでいるよ。殺しとは関係のない日常を送っている。このまま何もなく平和に暮らせたら糸音は普通の幸せな生活を送れるだろうな」
 
「そうか、なら良かった」
 
「今日は椿をありがとうな、お前も疲れたろ、ミナモさんの部屋にベッドが二つあるから使っていいぞ。しっかり許可は取ってある」
 
「じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらうよ。明日はよろしく頼む、おやすみ紅羽」
 
「ああ、おやすみ」
 
一人残された紅羽はリビングのソファに横になるとそのまま目を閉じて眠りについた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

秘密部 〜人々のひみつ〜

ベアりんぐ
ライト文芸
ただひたすらに過ぎてゆく日常の中で、ある出会いが、ある言葉が、いままで見てきた世界を、変えることがある。ある日一つのミスから生まれた出会いから、変な部活動に入ることになり?………ただ漠然と生きていた高校生、相葉真也の「普通」の日常が変わっていく!!非日常系日常物語、開幕です。 01

いつか『幸せ』になる!

峠 凪
ライト文芸
ある日仲良し4人組の女の子達が異世界に勇者や聖女、賢者として国を守る為に呼ばれた。4人の内3人は勇者といった称号を持っていたが、1人は何もなく、代わりに『魔』属性を含む魔法が使えた。その国、否、世界では『魔』は魔王等の人に害をなすとされる者達のみが使える属性だった。 基本、『魔』属性を持つ女の子視点です。 ※過激な表現を入れる予定です。苦手な方は注意して下さい。 暫く更新が不定期になります。

ユメ/うつつ

hana4
ライト文芸
例えばここからが本編だったとしたら、プロローグにも満たない俺らはきっと短く纏められて、誰かの些細な回想シーンの一部でしかないのかもしれない。 もし俺の人生が誰かの創作物だったなら、この記憶も全部、比喩表現なのだろう。 それかこれが夢であるのならば、いつまでも醒めないままでいたかった。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ボイス~常識外れの三人~

Yamato
ライト文芸
29歳の山咲 伸一と30歳の下田 晴美と同級生の尾美 悦子 会社の社員とアルバイト。 北海道の田舎から上京した伸一。 東京生まれで中小企業の社長の娘 晴美。 同じく東京生まれで美人で、スタイルのよい悦子。 伸一は、甲斐性持ち男気溢れる凡庸な風貌。 晴美は、派手で美しい外見で勝気。 悦子はモデルのような顔とスタイルで、遊んでる男は多数いる。 伸一の勤める会社にアルバイトとして入ってきた二人。 晴美は伸一と東京駅でケンカした相手。 最悪な出会いで嫌悪感しかなかった。 しかし、友人の尾美 悦子は伸一に興味を抱く。 それまで遊んでいた悦子は、伸一によって初めて自分が求めていた男性だと知りのめり込む。 一方で、晴美は遊び人である影山 時弘に引っ掛かり、身体だけでなく心もボロボロにされた。 悦子は、晴美をなんとか救おうと試みるが時弘の巧みな話術で挫折する。 伸一の手助けを借りて、なんとか引き離したが晴美は今度は伸一に心を寄せるようになる。 それを知った悦子は晴美と敵対するようになり、伸一の傍を離れないようになった。 絶対に譲らない二人。しかし、どこかで悲しむ心もあった。 どちらかに決めてほしい二人の問い詰めに、伸一は人を愛せない過去の事情により答えられないと話す。 それを知った悦子は驚きの提案を二人にする。 三人の想いはどうなるのか?

雪町フォトグラフ

涼雨 零音(すずさめ れいん)
ライト文芸
北海道上川郡東川町で暮らす高校生の深雪(みゆき)が写真甲子園の本戦出場を目指して奮闘する物語。 メンバーを集めるのに奔走し、写真の腕を磨くのに精進し、数々の問題に直面し、そのたびに沸き上がる名前のわからない感情に翻弄されながら成長していく姿を瑞々しく描いた青春小説。 ※表紙の絵は画家の勅使河原 優さん(@M4Teshigawara)に描いていただきました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...