天使ノ探求者

はなり

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第五章 忘却再生

第96話 報告

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「相変わらずでかいし、広い建物だ」
 
紅羽はカンナギの館の前に居た。門番に軽く会釈して中へと入る。
 
「たしか、このまま真っ直ぐだったかな」
 
紅羽は広い庭を抜けると館の中に入る。中では館で働く皇王のお付きのもの達が働いていた。しばらく歩いていると大きな扉が出てくる。そして一呼吸おいてノックをする。
 
「誰だ?」
 
「俺ですよ。俺」
 
「その失礼な言動と声でわかった。紅羽だな、入れ」
 
扉が開き中へと入る紅羽。中では広い部屋にお付きの者が一人と椅子に座って書類に判子を押している若い皇王のみというなんとも寂しい感じだった。しかし書類があちこちに山積みとなっているおかげでその寂しさも少しはマシになっている。
 
「相変わらずの書類の山だな」
 
「そうだろう、大変なんだ街の長というのは。それでいつ帰ったんだ?」
 
「昨日だな。早速報告させてもらうぜヘイオーでの出来事をよう」
 
「待て待て、一旦、わしも休憩するから茶でも飲みながら聞く」
 
「了解、じゃあ庭で待ってるわ」
 
紅羽は手を振りながら部屋を去っていく。
 
「はぁ、全く相変わらず礼儀のなってない奴だ」
 
紅羽は庭をうろうろしていた。庭には池と花が所々に咲いており、美しい風景を彩っている。その池の真ん中に屋根付きの休憩所があったのでそこに座りしばらく庭園を観察する。
 
「落ち着く庭だ」
 
「そうだろ」
 
前から皇王がゆっくりと茶菓子を持った側近と共に歩いてくると紅羽の向かいに座る。
 
「さて、聞かせてくれ、お前の旅の話を」
 
「あぁ」
 
紅羽は自分がヘイオーで見てきた、全ての事を皇王に話す。吸血鬼の事、ルクスリアの事、結末と今後についてを話す。それを何も聞かずただ黙々と聞いていた。
 
「なるほどな、たいへんだったな。交流というのなら是非ともお願いしたい。一度ルクスリア殿ともお話しがしたいし、落ち着いたらまずはこちらから使いを出そう。お前の鳩で手紙を届けれるか?」
 
「いけるぜ」
 
「ならそれでよろしく頼む、一報は後日、書いて使いの者に届けさせるから家で待て」
 
「了解」
 
「それにしても、たったの四人で国を変えるとはな、街を納める者としては恐ろしい話だ。まぁ何はともあれ、無事に帰ってこれて良かったな」
 
「あぁ」
 
その後は少し談笑していると、館から使いの者が走ってきて側近に耳打ちする。
 
「皇王様、そろそろ」
 
「あぁ、そんな時間か。すまないが紅羽、仕事に戻らせてもらうよ」
 
「たいへんだな、まぁ交流の件よろしく頼む」
 
「あぁ」
 
皇王は側近と共に館へと消えて行った。
 
「さて、俺も行くか」
 


「いやー、面白かったー、やっぱり喜劇だよね」
 
「初めて観たけど、なかなかいけるな」
 
「おっ!いいね、また行こうね糸音」
 
「あぁ」
 
三人は演劇を観終えると外にあった小さな団子屋さんで団子を頼むと店前の椅子に座って団子を頬張る。
 
「演劇後は絶対この団子屋さんなんだー」
 
「美味しいな」
 
「でしょ!」
 
「おっ!ここに居たか三人共」
 
「あっ、兄さん!」
 
椿は団子を口に放り込むと今し方歩いてきた紅羽へ抱きつく。
 
「椿が演劇観てる頃かなと思ってな」
 
「あったりー、お仕事は終わり?」
 
「あぁ、ここからは俺も一緒だ」
 
「やったー、じゃあ次は魚釣りに北栄へ行こー」
 
四人は北栄の港へと向かう。
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