天使ノ探求者

はなり

文字の大きさ
上 下
58 / 199
第四章 捲土重来

第57話 見えない敵

しおりを挟む


「おや、かくれんぼは終わりですかお嬢様」
 
糸見が男の前に現れた。
 
「あぁ、そういえば名前を聞いていなかったな」
 
「失礼、申し遅れました。私はゴルドーと申します。以後、お見知りおきを」
 
「いや、もう見ることはない」
 
「おやおや、強気ですね」
 
「すぐに終わるからな」
 
「そうですね」
 
ゴルドーはコインを飛ばしてきた。さっきよりも速く、弾丸と同等の威力があるであろうコインが飛んでくる、しかし糸見は動かなかった。
 
「な、なにー!?」
 
糸見は飛ばされたコインを避けずにゴルドーが飛ばしたコインの軌道の上に糸を飛ばす。
そしてコインが当たる寸前で急所を外して肩を貫通する。そして糸見から放たれた糸はゴルドーの手に絡みつく。
 
「こんな糸、すぐに、!?」
 
気づいた時には遅かった、ゴルドーの頭上には糸見がいた。そして糸見は糸をゴルドーの首に絡めて、片手で引っ張り、もう片方で心臓の当たりに拳を打った。
 
「うっ!!」
 
ゴルドーは悶えることなく即死した。
糸見はゴルドーの体を支える。
 
「すまない、スーツの人。この人を頼む」
 
糸見は近くにいたスーツの男にゴルドーを預ける。
 
「まずは一人だな」
 
「ブラボー、ガールは強いし賢いねー」
 
糸見とゴルドーの戦いをカメラで見ていたゴトーが手を叩いて喜んでいた。
 
「ゴルドーのことは残念だけど、どうやって殺したんだあれ」
 
同じ部屋にいる真っ黒い忍びの男に問いかけた。
 
「一発目の糸、あれはおそらく噂に聞く異能殺しの糸、糸で首を締め上げ、心臓に打撃を加え一瞬で心臓を止めた、高度な暗殺術ですね」
 
「お前の相手になりそうかい?」
 
「あぁ、楽しめそうだ」
 
男はそう言うと闇に消えていった。
 
「まったく、一体どういう原理なのやら。さてと、こっちの二人はどうかな」


 
「ボスからのメール見たか?フィ」
 
「あぁ、敵は三人か。とりあえずボスを待とう」
 
二人は地下で若者から情報収集をしていた。その途中で糸見から連絡きて、中断してシーバはソファに座り待っていた。
 
「油断するなよシーバ、敵は誰かわからない、近づく者には警戒しろ。後ルールのこともあるからとりあえずはプレイヤーとわかるまでは攻撃するなよ」
 
「あぁ、わかってるよ」
 
そうこうしていると若者が一人、シーバに近づいてきた。
 
「お兄さん、がたいいいね。ちょっと触らせてよ」
 
「ガキ、今忙しいんだ、あっち行ってろ」
 
「ええ、いいじゃん。ちょっとだけ」
 
若者は勝手にシーバに触れる、するとシーバが振り解こうとすると
 
「シーバ!!!」
 
フィが大声をあげ威圧する。
すると若者は驚いて、逃げ去っていく。

「気をつけろ、どんな行動がルールに抵触するかわからん」
 
「すまねぇ」
 
二人は静かに待つ。しかし数分たっても一向に来ない糸見を案じて、二人が動きだす。
 
「おかしいぞ、時間がかかり過ぎている」
 
「もしかして敵と交戦中かもしれんな」
 
「ならば、我々が上へ行こう、階段は一つで出入り口はそこだけだからすれ違いもないだろう」
 
二人は階段へと歩きだす。そして、彼らの背後から先ほどの若者が走ってきていた。
 
「ん?なんだ」
 
シーバは振り返り若者と激突した。その若者の手にナイフが握られていた。
 
「いってぇ」
 
シーバは刺されたが、さすがの肉体。刃物は筋肉によって臓器には達していなかった為、致命傷にはならなかった。
 
「いけるか、シーバ」
 
「ああ、しかしこれは、、」
 
「なんかヤバそうだな」
 
見ると、二人の周りには血走った目をした若者が数人手に武器を持ってこちらを見ていた。さらには階段から同じ様に手に武器をもった若者が数人降りてきた。
 
「シーバ、手を出してはダメだ。この中には敵はいない、おそらく何かで操っているのだろう。本体を見つけるまで逃げるぞ」
 
二人は走りだした、若者の間をすり抜けて、一先ず逃げる、幸いにも地下のフロアは広かったので、逃げる場所はいくつかある。逃走しながらフィは思考する。
 
(ルールを利用した、やり方だな。見た感じざっと十人ほどか、これ以上は増えないと思いたいが。それに若者達の目、あれは完全に正気ではなかった。ルールとして客に危害を加えてはならない、このルールに基づくなら若者達は精神まで完全に操られているわけではないのか。それならあの目は何だ、あの危機迫るような、まるで命の危機に瀕しているかの様な、、、)
 
「とりあえず、まいたか」
 
「あぁ、しかしどうするよ」
 
二人は大きい謎のゲーム機の影に身を潜めた。
 
「一体、親玉はどこなんだ」
 
「シーバ、若者達は完全には操られていないはずだ。だから対話はできる」
 
「だがよ、一方的に攻撃をしてくる奴に会話が通じるとは思えないぞ」
 
「少し時間を稼いでくれ、考える」
 
「しゃあねぇな」
 
シーバはゲーム機の影から出て、若者達の目を引かせ、走りだす。
 
「うまく逃げ切ってくれシーバ」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

秘密部 〜人々のひみつ〜

ベアりんぐ
ライト文芸
ただひたすらに過ぎてゆく日常の中で、ある出会いが、ある言葉が、いままで見てきた世界を、変えることがある。ある日一つのミスから生まれた出会いから、変な部活動に入ることになり?………ただ漠然と生きていた高校生、相葉真也の「普通」の日常が変わっていく!!非日常系日常物語、開幕です。 01

いつか『幸せ』になる!

峠 凪
ライト文芸
ある日仲良し4人組の女の子達が異世界に勇者や聖女、賢者として国を守る為に呼ばれた。4人の内3人は勇者といった称号を持っていたが、1人は何もなく、代わりに『魔』属性を含む魔法が使えた。その国、否、世界では『魔』は魔王等の人に害をなすとされる者達のみが使える属性だった。 基本、『魔』属性を持つ女の子視点です。 ※過激な表現を入れる予定です。苦手な方は注意して下さい。 暫く更新が不定期になります。

ユメ/うつつ

hana4
ライト文芸
例えばここからが本編だったとしたら、プロローグにも満たない俺らはきっと短く纏められて、誰かの些細な回想シーンの一部でしかないのかもしれない。 もし俺の人生が誰かの創作物だったなら、この記憶も全部、比喩表現なのだろう。 それかこれが夢であるのならば、いつまでも醒めないままでいたかった。

ボイス~常識外れの三人~

Yamato
ライト文芸
29歳の山咲 伸一と30歳の下田 晴美と同級生の尾美 悦子 会社の社員とアルバイト。 北海道の田舎から上京した伸一。 東京生まれで中小企業の社長の娘 晴美。 同じく東京生まれで美人で、スタイルのよい悦子。 伸一は、甲斐性持ち男気溢れる凡庸な風貌。 晴美は、派手で美しい外見で勝気。 悦子はモデルのような顔とスタイルで、遊んでる男は多数いる。 伸一の勤める会社にアルバイトとして入ってきた二人。 晴美は伸一と東京駅でケンカした相手。 最悪な出会いで嫌悪感しかなかった。 しかし、友人の尾美 悦子は伸一に興味を抱く。 それまで遊んでいた悦子は、伸一によって初めて自分が求めていた男性だと知りのめり込む。 一方で、晴美は遊び人である影山 時弘に引っ掛かり、身体だけでなく心もボロボロにされた。 悦子は、晴美をなんとか救おうと試みるが時弘の巧みな話術で挫折する。 伸一の手助けを借りて、なんとか引き離したが晴美は今度は伸一に心を寄せるようになる。 それを知った悦子は晴美と敵対するようになり、伸一の傍を離れないようになった。 絶対に譲らない二人。しかし、どこかで悲しむ心もあった。 どちらかに決めてほしい二人の問い詰めに、伸一は人を愛せない過去の事情により答えられないと話す。 それを知った悦子は驚きの提案を二人にする。 三人の想いはどうなるのか?

雪町フォトグラフ

涼雨 零音(すずさめ れいん)
ライト文芸
北海道上川郡東川町で暮らす高校生の深雪(みゆき)が写真甲子園の本戦出場を目指して奮闘する物語。 メンバーを集めるのに奔走し、写真の腕を磨くのに精進し、数々の問題に直面し、そのたびに沸き上がる名前のわからない感情に翻弄されながら成長していく姿を瑞々しく描いた青春小説。 ※表紙の絵は画家の勅使河原 優さん(@M4Teshigawara)に描いていただきました。

処理中です...