天使ノ探求者

はなり

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第三章 幽愁暗恨

第31話 付喪荒玉

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メイは涼香と同じく皇室の扉を開けた。というより蹴り壊した。
 
「あはは、ははは!最初から壊すなんてすごくバカな人っぽいよ、お姉ちゃん。でもそれが正解」
 
「だーれが、バカや!それより何者や!」
 
「私はルナ、お姉ちゃんは引っ掛からなかったね。一番引っかかりやすそうなのにね」
 
「なんの話や?ところでお前は敵やな」
 
「敵だよ」
 
「なら、おねんねしときや、子供は!」
 
ルナに攻撃をしかけようとするが何かに当たって、攻撃は届かなかった。
 
「なんだ!?」
 
「妹には手を出さないよ」
 
ルナの座っている玉座の後ろからルカに似た女が現れる。ルナの下にはクマの人形が落ちていた。
 
「ルミ姉さん、ありがとう!」
 
ルナは側にいるルミに笑顔で抱きつく。
 
「姉妹愛、素晴らしいね!でも母さん、シャオを返してもらうで」
 
「シャオっていう人なら、今この宮廷の奥で兵士や皇王と眠っているよ」
 
「やっぱり、お前らの仕業やったか。何が目的や?」
 
「お前に話す気は全くない。それより私がお前の相手をしてやる。妹には手をだすなよ」
 
「手は出したくないけど、シャオ達を返してもらわないと困るんやけどな」
 
メイは頭を抱えて悩む。
 
「そうだ!じゃあさ、じゃあさ!姉さんに勝てたら、解放してあげるよ」
 
「おいルナ!」
 
「いいじゃん!いいじゃん!だって姉さんは負けないでしょ」
 
「それでええで!」
 
「お前が決めるな。はぁ、まぁいいだろう」
 
「よしきた!」
 
メイは早速構える。
 
(一対一なら好都合!妹の方は能力はわからんがトラップ系かもしれないし。あっちの姉の方ならまだいけるかも)
 
「こい」
 
「じゃあ遠慮なく」
 
メイは駆け出した。拳を振り上げ大振りでルミに襲いかかる。
 
「バカな攻撃だな。腹がガラ空きだ」
 
ルミの拳がメイの鳩尾に向かうが当たる寸前で手に痺れを覚えるルミ。
 
「なんだ?痺れる」
 
「はっはん!かかったな!腹に電気を集中させて手の動きを封じる!新しいうちの頭の良い戦術さ!」
 
かかっか!とメイは高らかに笑う。
 
「たしかに、痺れて手というか腕が使えなくなったが問題はない」
 
「まーた、強がっちゃって!この先どう戦うんや?」
 
「私は元々、格闘技は得意じゃ無いんだ。だからこうする」
 
そう言うとルミは懐からクマの人形を取り出して、メイに掘り投げる。
 
「なになに?爆弾か?避けるだけやで!」
 
メイは避けようとしたが人形はメイが避けた方向に飛んでくる。
 
「な!?」
 
「バカが」
 
人形が迫ってきて、メイに拳で打ってくる。クマの人形なら攻撃力も弱いと思ったメイは顎に強烈な一撃もらったがなんとか耐える。
 
「バカだがタフネスだな。バカらしいが」
 
「どういうことや?そのぬいぐるみ、パンチ力ありすぎじゃない?お化けか」
 
「それは五十年使われたクマの人形。拳が硬いのは怨念の重さだよ。私は人によって使われた物に魂をふきこみ使い魔にできる能力、付喪荒玉。そしてこの子達もそう」
 
ルミの周りにはいつのまにか様々な人形が居た。目を光らせメイを睨みつける。
 
「怖いわ。一応神様なんかそれ?」
 
「この子達はいわば付喪神だね。人に使われ無惨にも捨てられた怨念でこの子達は動く。そんな神様をそれ呼ばわりは良く無いよ」
 
すると一斉にメイに襲いかかる。
 
「おっと、まじか!」
 
メイは再び駆け出した。今度は人形から逃げまわる。しかしメイは逃げ回りながら電撃を放ちながら人形を無力化する。何も呑気に三ヶ月を過ごしていなかった。彼女は糸音と何度もで合わせして強くなったのだ。
 
「わあー!鬼ごっこだ!」
 
ルナは嬉しそうに笑う。
 
「思っていたより器用なやつだな」
 
「ふぅー、これで全部かな」
 
メイは最後の一匹を無力化すると一息つく。
 
「さて、もう終わりか?」
 
「まさか」
 
ルミは懐から銃を取り出すと再び宙に投げた。
 
「今度は銃か」
 
「ピストルだって、恨みを持つだろう」

銃が一人でに弾を撃ちだすが弾を見切りルミに接近するとメイは宙に浮いている銃を手に取ってルミに向かって撃つ。
 
「なんやて!?」
 
しかしメイが撃ち出した弾は逆流して自身の手を貫通して銃が砕けた。
 
「動きは良かったが、撃ったのは間違いだな。私の異能で付喪神になった物は私を攻撃できないし、ターゲットは初めから敵のみ」
 
メイは逆流した弾を反射でかわし致命傷はさけたが出血はかなり酷かった。

「やっちゃたな、へへへ、でも銃は無くなったで。どうするんや?」
 
「そうだな。お前は手負いだし、その出血だと長くは持たんからだろうな。だからそろそろ私がやるよ」
 
「やっとかいな、楽しくなってきたで!」
 
「はぁ、疲れる。お前と戦っていると」
 
「そりゃどうも」
 
先に動き出したのはルミの方だった。メイは警戒し後退する。ルミは懐から手袋を取り出すが今度は投げなかった。接近しながら手袋をはめるとメイに拳を打ち込む。
 
「なんや今度は!」
 
先ほどの最初の動きとはまるで違う動きをするルミ。拳が次から次へとメイにヒットする。
 
「どうだ、殺し屋の打撃は!これはある殺し屋の愛用していた皮のグローブらしい。そいつは拳一つで殺しを行ったと言われているんだ。そんなグローブに私の力を与えてこの世に顕現させた。いい忘れてたが、私の能力は何も使役するだけではない。命を吹き込み、その物に宿る記憶を再生させることオートで動けるんだ、こういう風にね」
 
手刀がメイの腹を裂く。
 
「くっ!なるほどね。動きがまるで違うと思ったわ」
 
「終わりだな。お得意の電撃ももう使えないだろ、その傷じゃ」
 
(まじで、どうしよかな)
 
メイはこの状況の切り抜け方を考えていた。
その時ルミは謎の寒気を感じた。

「ん?なんだか冷えてきたな」
 
メイは察して笑みを浮かべる。
 
「残念やけど、うちの負けやな。後は頼んだで姉さん」
 
「あなたの姉ではないですけどね」
 
ルミは声のする方を振り返ると玉座の横に涼香が立っていた。
 
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