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第二章 妙縁邂逅
第18話 歯車
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一
ある雨の夜、サイレンが鳴り響く夜、帰り道ツグハは倒れている人物を見つけ駆け寄って抱きかかえる。
「もし、大丈夫ですか?」
その人物の顔を見るとツグハは驚いた。
「まさか!」
その子は四年前にツグハの使える家から突如消えた主人の忘れ形見だった。
「糸音様!!どうしてこんな!」
ツグハは急ぎ病院へ連れて行った。
これは糸音が学園に通う三ヶ月前の話
ニ
「昏睡状態ですか」
志貴はツグハの連絡を受け、仕事を早々に片付けヘルフェブルの夕凪が市営する病院に駆けつけた。そして夕凪家の専属医エオーレからは
「あぁ、彼女は今かなり危険な状態だ、私の異能でも治らない。こんなのは初めてだ」
「君でも無理なのか」
「悔しいがそうだな。今は目覚めるのをひたすら待つだけだね、誰か側にいてやりな」
エオーレは病室を去り、病室には重い空気が漂う。
「志貴様、涼香様達には」
「連絡はしておいたよ、涼香の方は明日にでも一度戻るそうだ、火憐も同様、あの二人は常に一緒だからな。風見の方は連絡がつかなかったが涼香に聞いた話によると大陸に渡ったらしい」
「大陸ですか」
「アイツだけは風来坊だからな。自由にさせるのが一番だよ」
「そうですか」
「学園を長く空けておくのはまずいから僕はそろそろ戻るよ。今後は交代で糸音の側にいよう」
「わかりました」
志貴は病室を去り、再び静寂が病室に訪れる。
「糸衛さん、見つかりましたよ。糸音をお守りください」
それから二ヶ月間、何事もなく日常が過ぎていき。ある冬の夜、事件が起こる。
三
「ここが例の病院か」
暗闇の中で男達数人が病院の前で蠢く。
そんな有象無象の前にツグハは立ちはだかる。
「無粋ですね」
「ほう、アンタはたしか夕凪のメイドだな」
「あなた達は何者ですか?」
「俺たちは夕凪家当主様の弱点があると聞きつけた者でして、それを連れ去りにきました」
「弱点?」
「この病院にいるのでしょう、件の人物が」
「どこからの情報ですか?、それは」
「アンタに教える義理はないね!」
男達は一斉に動き出しツグハに刃がふりかかる。しかしツグハは徒手空拳で男達を一網打尽にする。
「雑魚どもが、恥を知りなさい」
「くそ!」
男が一人逃げようとしたところで首にメスが刺さる。
「カッッ!」
男は死に、ツグハは持っていた紐で残党を縛り上げる。
「全く物騒だね」
暗闇の中からエオーレが現れる。
「医者が殺していいんですか?」
「そりゃ駄目だろ。でも今は殺し屋エオンだからね。で何者なんだいコイツら」
「わかりません。病院内に侵入者ですかね」
「そいつは困ったね。まぁこっちでもそれとなく調べてみるよ」
「よろしくお願いします。こちらは捕らえた賊を志貴に引き渡して拷問して聞き出します」
「火憐が帰ってきてるのか?なら行っておいてくれ検診に来いと」
「わかりました。伝えておきましょう」
それから夜が明け朝方の交代の時間の病室に志貴がやってきた。
「交代の時間ってこれはなんだ?」
志貴が病室の中で縛られている男達を見やる。
「コイツらは志貴様の弱点がどうとかで、昨夜病院の襲撃を企てた者達です」
「まじか、どこから漏れた。いや、病院への出入りは見られていたから恐らくそこからか。どちらにせよ一度コイツらを持って帰って火憐に吐かせてもらう」
「病院の方に侵入者が居ないかエオーレさんにも調べてもらっています」
「世話かけるな。糸音の事といい、また何かお礼をせんとな」
ある雨の夜、サイレンが鳴り響く夜、帰り道ツグハは倒れている人物を見つけ駆け寄って抱きかかえる。
「もし、大丈夫ですか?」
その人物の顔を見るとツグハは驚いた。
「まさか!」
その子は四年前にツグハの使える家から突如消えた主人の忘れ形見だった。
「糸音様!!どうしてこんな!」
ツグハは急ぎ病院へ連れて行った。
これは糸音が学園に通う三ヶ月前の話
ニ
「昏睡状態ですか」
志貴はツグハの連絡を受け、仕事を早々に片付けヘルフェブルの夕凪が市営する病院に駆けつけた。そして夕凪家の専属医エオーレからは
「あぁ、彼女は今かなり危険な状態だ、私の異能でも治らない。こんなのは初めてだ」
「君でも無理なのか」
「悔しいがそうだな。今は目覚めるのをひたすら待つだけだね、誰か側にいてやりな」
エオーレは病室を去り、病室には重い空気が漂う。
「志貴様、涼香様達には」
「連絡はしておいたよ、涼香の方は明日にでも一度戻るそうだ、火憐も同様、あの二人は常に一緒だからな。風見の方は連絡がつかなかったが涼香に聞いた話によると大陸に渡ったらしい」
「大陸ですか」
「アイツだけは風来坊だからな。自由にさせるのが一番だよ」
「そうですか」
「学園を長く空けておくのはまずいから僕はそろそろ戻るよ。今後は交代で糸音の側にいよう」
「わかりました」
志貴は病室を去り、再び静寂が病室に訪れる。
「糸衛さん、見つかりましたよ。糸音をお守りください」
それから二ヶ月間、何事もなく日常が過ぎていき。ある冬の夜、事件が起こる。
三
「ここが例の病院か」
暗闇の中で男達数人が病院の前で蠢く。
そんな有象無象の前にツグハは立ちはだかる。
「無粋ですね」
「ほう、アンタはたしか夕凪のメイドだな」
「あなた達は何者ですか?」
「俺たちは夕凪家当主様の弱点があると聞きつけた者でして、それを連れ去りにきました」
「弱点?」
「この病院にいるのでしょう、件の人物が」
「どこからの情報ですか?、それは」
「アンタに教える義理はないね!」
男達は一斉に動き出しツグハに刃がふりかかる。しかしツグハは徒手空拳で男達を一網打尽にする。
「雑魚どもが、恥を知りなさい」
「くそ!」
男が一人逃げようとしたところで首にメスが刺さる。
「カッッ!」
男は死に、ツグハは持っていた紐で残党を縛り上げる。
「全く物騒だね」
暗闇の中からエオーレが現れる。
「医者が殺していいんですか?」
「そりゃ駄目だろ。でも今は殺し屋エオンだからね。で何者なんだいコイツら」
「わかりません。病院内に侵入者ですかね」
「そいつは困ったね。まぁこっちでもそれとなく調べてみるよ」
「よろしくお願いします。こちらは捕らえた賊を志貴に引き渡して拷問して聞き出します」
「火憐が帰ってきてるのか?なら行っておいてくれ検診に来いと」
「わかりました。伝えておきましょう」
それから夜が明け朝方の交代の時間の病室に志貴がやってきた。
「交代の時間ってこれはなんだ?」
志貴が病室の中で縛られている男達を見やる。
「コイツらは志貴様の弱点がどうとかで、昨夜病院の襲撃を企てた者達です」
「まじか、どこから漏れた。いや、病院への出入りは見られていたから恐らくそこからか。どちらにせよ一度コイツらを持って帰って火憐に吐かせてもらう」
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