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第一章 報仇雪恨(見)
第16話 後日談①
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一
「ほいよ、おけー!じゃあ約束のマネー振り込んどいてね。私は当分、身を隠しながらチマチマやるんで、よろしく」
二人の戦いを観戦し終えた人物が一人、波風紫織が木の影で依頼主への報告を終えたところだった。
「いやー、すごいね。それに糸音、生きてたんだね。久しぶりに会いたいけど今は我慢っと、それにしても凄いもの見つけちゃったよ、私って運だけはいいからなー、まぁ果たしてあれが本当に運が良いものなのかだけどね」
ニ
夢を見た。
降り始めた雨の中、一人で街頭で立っていた。それはすぐに止んで次は雪が降るそれが繰り返し繰り返し、世界が廻る。その中で私だけが置いていかれる。
「違う置いて行っているのは私だ」
目覚めると糸音は病室に居た。傍にメイが珍しく静かに座りながら寝ていた。
(コイツは、いつも寝てるな。でも無事で良かった)
「目覚めたか」
声のする方を見ると窓際に腰を掛けている真っ赤な髪の女性が居た。糸音は知っているその赤を。
「咲夜遊さん」
「ふん、覚えていたか。いや思い出したのか。いずれにせよ嬉しいよ」
「はい。皆んなは?」
「そうだな。まずは順番に話そうか。状況は最悪だが皆んな生きているよ」
「良かった。でも事が最悪とは?」
「あぁ、奪われたんだ。異能の配分、天与核がな」
「天与核?」
「知らないのも無理はない。志貴や糸衛が教えなかったからな。この事を知っている人物は少ない。ところで糸音、異能ってなんで使えるか知っているか?」
「わからないです。私は気づいたら使えてました」
「中にはそういう人間もいる。だが、もしそれが与えられたものとしたら?」
「まさか、それが天与核ですか」
「そう。あれは夕凪の先代の頃からあったものだ。先代はそれを私利私欲の為に使おうと独占していた。そして志貴や糸衛、お前の姉達は力を与えられていた。先代の目的は異能軍隊を作り国家そのものを作り上げようと野望をいだいていた。まぁこれは糸衛率いる俺たちで終わらせたがな。その後、志貴を当主として、残ったのがお前たち姉妹だ、他は未凪やらに落ち延びたりしているらしいがな。天与核はその後志貴の管理の下、望める森のある場所に管理されていた」
「クーデターは知っていますが。天与核については初耳です。なら守っていたそこが破られたと?」
「ああ、しかし普通は破れないんだ。この力は人類にとっても脅威だからな。今回バッドがすぎたんだ。まず吸血鬼の出現、未凪の裏切り、襲撃、さらに異能殺しで志貴が異能を使えなくなった。最後のが大打撃だった。核を守っているのが志貴の力だからだ」
「待ってください。兄さんなら自分の力がもし使えなくなる時、または封じられた時の為に布石を、打っているでしょう」
「賢いな。たしかに志貴は打っていたさ、だがそれも破られたんだ。それが問題なんだ、本来、破ることはできないはずなんだ。ある呪い師の家系の知り合いがいてそいつに頼んだらしい。その呪いは俺や志貴ですら太刀打ちできない強力なものらしい。それを破った者がいる。それにあそこはかなり入り組んでいる場所で入るのは容易だが帰りは複雑になっているはずなんだ、それら全てをすり抜け逃走できるほどの人物がいる」
「相当の手だれがいるという事ですね」
「何者かは知らんが、その力を必ず使うだろうな。ここからは荒れるだろうな」
「咲夜さん、この話を私にするって事は」
「そうだな。糸音、無理は言わない。だが聞いての通り、世界はもうじき荒れるだろう、その時抑止力として俺達が守り取り返さねば人間社会は崩壊する。今すぐにとは言わない。俺たちも情報を集める必要があるからな。でも手を貸して欲しい時は必ずやってくるだろう。俺たち大人の都合で子供を巻き込むのは不本意だが、その時は頼めるか?」
糸音は少し考える、今の状況、メイ達学園のこと、糸見のあのセリフ、これから世界はもとい人間社会が崩壊を迎える。師匠は、夕凪糸衛の言葉を思い出す。そして糸音は答えをだした。
「そう言えば昔、師匠に本物の正義ってあるのかなって言われたことがあったんです。その時、私は子供だったから本当の意味わからなかったんですけど、こう答えました。無いならつくればいいじゃんって。馬鹿ですよね、でも本物の正義とは一体何なのかを、これからの人生で証明していきたいです」
遊は微笑んで糸音の頭を撫でる。
「そうと決まれば情報収集だな。また連絡する。あ!そこの寝ている奴にも事情は説明してある。いいダチをもったな糸音」
「ありがとう」
遊は病室を去り、病室は静寂に包まれる。
窓から吹く風が戦いの始まりを後押しをしているように感じた。
「屋上に行ってみるか」
「ほいよ、おけー!じゃあ約束のマネー振り込んどいてね。私は当分、身を隠しながらチマチマやるんで、よろしく」
二人の戦いを観戦し終えた人物が一人、波風紫織が木の影で依頼主への報告を終えたところだった。
「いやー、すごいね。それに糸音、生きてたんだね。久しぶりに会いたいけど今は我慢っと、それにしても凄いもの見つけちゃったよ、私って運だけはいいからなー、まぁ果たしてあれが本当に運が良いものなのかだけどね」
ニ
夢を見た。
降り始めた雨の中、一人で街頭で立っていた。それはすぐに止んで次は雪が降るそれが繰り返し繰り返し、世界が廻る。その中で私だけが置いていかれる。
「違う置いて行っているのは私だ」
目覚めると糸音は病室に居た。傍にメイが珍しく静かに座りながら寝ていた。
(コイツは、いつも寝てるな。でも無事で良かった)
「目覚めたか」
声のする方を見ると窓際に腰を掛けている真っ赤な髪の女性が居た。糸音は知っているその赤を。
「咲夜遊さん」
「ふん、覚えていたか。いや思い出したのか。いずれにせよ嬉しいよ」
「はい。皆んなは?」
「そうだな。まずは順番に話そうか。状況は最悪だが皆んな生きているよ」
「良かった。でも事が最悪とは?」
「あぁ、奪われたんだ。異能の配分、天与核がな」
「天与核?」
「知らないのも無理はない。志貴や糸衛が教えなかったからな。この事を知っている人物は少ない。ところで糸音、異能ってなんで使えるか知っているか?」
「わからないです。私は気づいたら使えてました」
「中にはそういう人間もいる。だが、もしそれが与えられたものとしたら?」
「まさか、それが天与核ですか」
「そう。あれは夕凪の先代の頃からあったものだ。先代はそれを私利私欲の為に使おうと独占していた。そして志貴や糸衛、お前の姉達は力を与えられていた。先代の目的は異能軍隊を作り国家そのものを作り上げようと野望をいだいていた。まぁこれは糸衛率いる俺たちで終わらせたがな。その後、志貴を当主として、残ったのがお前たち姉妹だ、他は未凪やらに落ち延びたりしているらしいがな。天与核はその後志貴の管理の下、望める森のある場所に管理されていた」
「クーデターは知っていますが。天与核については初耳です。なら守っていたそこが破られたと?」
「ああ、しかし普通は破れないんだ。この力は人類にとっても脅威だからな。今回バッドがすぎたんだ。まず吸血鬼の出現、未凪の裏切り、襲撃、さらに異能殺しで志貴が異能を使えなくなった。最後のが大打撃だった。核を守っているのが志貴の力だからだ」
「待ってください。兄さんなら自分の力がもし使えなくなる時、または封じられた時の為に布石を、打っているでしょう」
「賢いな。たしかに志貴は打っていたさ、だがそれも破られたんだ。それが問題なんだ、本来、破ることはできないはずなんだ。ある呪い師の家系の知り合いがいてそいつに頼んだらしい。その呪いは俺や志貴ですら太刀打ちできない強力なものらしい。それを破った者がいる。それにあそこはかなり入り組んでいる場所で入るのは容易だが帰りは複雑になっているはずなんだ、それら全てをすり抜け逃走できるほどの人物がいる」
「相当の手だれがいるという事ですね」
「何者かは知らんが、その力を必ず使うだろうな。ここからは荒れるだろうな」
「咲夜さん、この話を私にするって事は」
「そうだな。糸音、無理は言わない。だが聞いての通り、世界はもうじき荒れるだろう、その時抑止力として俺達が守り取り返さねば人間社会は崩壊する。今すぐにとは言わない。俺たちも情報を集める必要があるからな。でも手を貸して欲しい時は必ずやってくるだろう。俺たち大人の都合で子供を巻き込むのは不本意だが、その時は頼めるか?」
糸音は少し考える、今の状況、メイ達学園のこと、糸見のあのセリフ、これから世界はもとい人間社会が崩壊を迎える。師匠は、夕凪糸衛の言葉を思い出す。そして糸音は答えをだした。
「そう言えば昔、師匠に本物の正義ってあるのかなって言われたことがあったんです。その時、私は子供だったから本当の意味わからなかったんですけど、こう答えました。無いならつくればいいじゃんって。馬鹿ですよね、でも本物の正義とは一体何なのかを、これからの人生で証明していきたいです」
遊は微笑んで糸音の頭を撫でる。
「そうと決まれば情報収集だな。また連絡する。あ!そこの寝ている奴にも事情は説明してある。いいダチをもったな糸音」
「ありがとう」
遊は病室を去り、病室は静寂に包まれる。
窓から吹く風が戦いの始まりを後押しをしているように感じた。
「屋上に行ってみるか」
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