天使ノ探求者

はなり

文字の大きさ
上 下
7 / 199
第一章 報仇雪恨(見)

第6話 仮面の女

しおりを挟む


朝起きた糸音は一階のリビングにて珍しい光景を目の当たりにする。いつも一人なのだが今日は兄さんがいた。あまり家にいる事がない兄さんだが今日はどうやら休みのようだ。
  
「おはよう糸音」
  
「おはよう兄さん。今日は休みなのか?」
  
「休みではないが、午前は珍しく予定がないからね。それにこうして二人で食事するのもたまにはいいものかなってね。」
  
「ところで今日はツグハが見えないけど。」
  
「ツグハには使いを頼んであってね。二、三日は戻らないと思うよ」
  
「そう」
  
ツグハは夕凪家専属のメイドで何でもこなしてしまう有能なメイド。たまに兄の仕事を手伝っているらしい。
  
「そうだ、もう街へ出かけても問題ないよ。事件解決の報告を、今朝受けてね。真宵って子がうちの生徒にいるんだが訳あって僕の仕事を少し手伝ってもらっているんだ。そのうち会えると思うよ。明日あたりには学園にいるんじゃないかな」
  
「気が向いたら会ってみるよ」
  
私は朝食を済ませて部屋を後にした。
  
  
さて今日はどうしようか。街に行ってみるのも悪くないが、学園の探索の続きをするのもいいな。
そう思い糸音が門を開けて外に出ると
  
「お出かけですかい?お嬢さん」
  
「槍士か。何の用だ?」
  
「何の用って、そりゃあ糸音ちゃんをお誘いしようと思ってね。街へどうですかい、お嬢さん?」
  
糸音は少しだけ考えて
  
「いいよ」
  
ヘルフェブルは正直初めて来たのであったが、ここ数年で大都会となって、若者向けの店が建ち並ぶ地区と高層ビルが建ち並ぶオフィス地区と別れている。近年この街の問題の一つとなっているのが廃ビル問題である、と言うのも古いビルはそのまま残された地区があるのだがそこは街のギャングやら逸れ者たちが集まる場となっている。
それが街の犯罪計数を上げている原因だそうなのだが、対策をしようとこの街のお偉いさんは躍起になったそうだが何度も暴動が起こっているそうだが一向に解決しないらしい。
兄さんにも依頼がきたらしいが若気の至りだと言って相手にしなかったらしい。割と薄情な兄である。
  
「糸音ちゃんはさぁ、先生の妹だろ。なら殺し屋ってことなのか?」
  
「いいや、今は殺し屋じゃないよ」
  
「今は、ってことは昔は殺し屋って事かい?」
  
「わからないが、多分そうだ。すまないが私にはここに来る前の記憶が曖昧なんだ」

「そうなのか、そいつは悪い事聞いちまったな。すまねぇ」

「いいよ別に」
 
実際、人を殺した記憶が無いが殺した事がある自覚がある。

「気を取り直してゲーセンでもいくか」

「あぁ」
 


迷ってしまった、というか槍士と逸れてしまった。ゲーセンというところで色々見ていたら興味深い物があったんでそれを見ていたら槍士がいなくなっていた。
もう夜だしそのまま帰宅してもよかったんだけど、今日は槍士に誘われた手前、流石にほって帰るわけにもいかず探すことにした。

やはり連絡手段が無ければ困るな、今度兄さんかツグハに聞いて携帯とやらを買おう。

そうこうして歩いているとガラの悪いチンピラ二人にからまれてしまった。

「お嬢ちゃん、一人かい?ちょっと俺らと遊んでいかないか?」

「キョロキョロしてたから人探しかな?」

「・・お前らには興味ないし忙しいからどけ」

「えらく強気なお嬢ちゃんじゃないか」

そういうと男は糸音の手を掴み取る。
糸音は男の手を振り解こうとすると。

「よく無いな。可愛い女の子を乱暴にして」
 
振り向くとそこには謎の仮面を被った人物がいた。

「なんだてめぇは!ふざけた格好しやがって!」

「別にふざけてはいないよ!大真面目さ!」

「舐めんなー!」

すると私を掴んでた男は仮面の人に走り出し殴りかかる。

「馬鹿者め!」

仮面の人は男の攻撃を軽くいなして蹴り飛ばす。

「ッッ!なんて蹴り、、だ」

男はそのまま気絶してしまった。そしてもう一人が男を連れて立ち去る。
人が集まりだしたので糸音達もその場を去り、人の少ない路地裏に入る。

「全く情けない男共だ。大丈夫かお嬢さん」

「あぁ、ありがとうございます」

「なーに礼には及ばないよ。私は糸見だ」

「私は糸音です。」

「糸音か。君は正義とは何かわかるか」

唐突にそんなことを聞かれた糸音は

「正義ですか。そうですね人助けですかね」

「いい答えだ。それもそうだが、もっと言えば平和を守り平穏を取り戻すこと、偽りの正義を振り翳すものには制裁をって、私は思うのだよ」

偽りの正義その言葉に私は何故か引っ掛かりを覚えた。

「偽りの正義ですか」

「そう。君は多分強いんだろうけど弱いね。そんな人と昔一緒にいたころもあった。君はとても似ているよ、その人に。」

「はぁ、そうですか。何はともあれ助けてくださりありがとうございました。」

「当たり前のことをしたまでさ!それでは私は先を急ぐのでこれにて!」

そう言うと糸見は雑踏の中に消えて行った。
不思議な人だ、だけどあの人の名前どこかで聞き覚えがあったような。

「気のせいか。とりあえず今は槍士を探して帰ろう」
 
再び槍士探しを再開した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

いつか『幸せ』になる!

峠 凪
ライト文芸
ある日仲良し4人組の女の子達が異世界に勇者や聖女、賢者として国を守る為に呼ばれた。4人の内3人は勇者といった称号を持っていたが、1人は何もなく、代わりに『魔』属性を含む魔法が使えた。その国、否、世界では『魔』は魔王等の人に害をなすとされる者達のみが使える属性だった。 基本、『魔』属性を持つ女の子視点です。 ※過激な表現を入れる予定です。苦手な方は注意して下さい。 暫く更新が不定期になります。

秘密部 〜人々のひみつ〜

ベアりんぐ
ライト文芸
ただひたすらに過ぎてゆく日常の中で、ある出会いが、ある言葉が、いままで見てきた世界を、変えることがある。ある日一つのミスから生まれた出会いから、変な部活動に入ることになり?………ただ漠然と生きていた高校生、相葉真也の「普通」の日常が変わっていく!!非日常系日常物語、開幕です。 01

ユメ/うつつ

hana4
ライト文芸
例えばここからが本編だったとしたら、プロローグにも満たない俺らはきっと短く纏められて、誰かの些細な回想シーンの一部でしかないのかもしれない。 もし俺の人生が誰かの創作物だったなら、この記憶も全部、比喩表現なのだろう。 それかこれが夢であるのならば、いつまでも醒めないままでいたかった。

ボイス~常識外れの三人~

Yamato
ライト文芸
29歳の山咲 伸一と30歳の下田 晴美と同級生の尾美 悦子 会社の社員とアルバイト。 北海道の田舎から上京した伸一。 東京生まれで中小企業の社長の娘 晴美。 同じく東京生まれで美人で、スタイルのよい悦子。 伸一は、甲斐性持ち男気溢れる凡庸な風貌。 晴美は、派手で美しい外見で勝気。 悦子はモデルのような顔とスタイルで、遊んでる男は多数いる。 伸一の勤める会社にアルバイトとして入ってきた二人。 晴美は伸一と東京駅でケンカした相手。 最悪な出会いで嫌悪感しかなかった。 しかし、友人の尾美 悦子は伸一に興味を抱く。 それまで遊んでいた悦子は、伸一によって初めて自分が求めていた男性だと知りのめり込む。 一方で、晴美は遊び人である影山 時弘に引っ掛かり、身体だけでなく心もボロボロにされた。 悦子は、晴美をなんとか救おうと試みるが時弘の巧みな話術で挫折する。 伸一の手助けを借りて、なんとか引き離したが晴美は今度は伸一に心を寄せるようになる。 それを知った悦子は晴美と敵対するようになり、伸一の傍を離れないようになった。 絶対に譲らない二人。しかし、どこかで悲しむ心もあった。 どちらかに決めてほしい二人の問い詰めに、伸一は人を愛せない過去の事情により答えられないと話す。 それを知った悦子は驚きの提案を二人にする。 三人の想いはどうなるのか?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...