天使ノ探求者

はなり

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第一章 報仇雪恨(見)

第5話 詩

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糸音は疑問に思った。糸音が聞いた話しだと学校とは大人数で学ぶものだと聞いたが今教室にいるのは二人だけだった。
   
「では糸音、自己紹介を」
   
ツグハが先生モードになっていた。
   
「夕凪糸音です」
   
シンプルだしこれでいいだろ。
   
「ん?それだけ」
   
教室で唯一の男子生徒が言った。
   
「まぁシンプルでいいじゃん」
   
メイが笑って答えた。
   
「なんだメイは知ってんのかこの子のこと?」

「知ってるも何も、もう友人だし」

 勝手に友人にされていた。まぁいいけど。
   
「じゃあメイのダチってことは俺のダチってことで俺は槍士、よろしくさん」
   
「よろしく」

「では自己紹介も終わったところで授業に移りましょうか」
   
どうやらこの学園は少人数制らしい。
メイと槍士の他に二人生徒はいるらしいがこの二人は今日はいないみたいだ。いずれ会える日を楽しみにしよう。
授業は何をするかと言うと一般教養を学ぶらしい。そこはどこにでもある普通の学舎と同じだ。そしてゆるりと授業は終わって行く。
   
「ふぅー、終わったー。疲れたよー」
   
「疲れたってオメェは寝てただけじゃねーかよ」
   
「でも疲れるんだよ」
   
メイは授業の大半は寝ていた。ツグハも注意しないのでほぼ爆睡だった。あんだけ朝、大の字で寝てたのにどれくらい寝るのだろう。
それに比べ、槍士は意外にも勉学には熱心に取り組んでいた。
なんでも聞くところによると実家を継ぐためにはこういうことも必要だとかで。
見た目はそんな感じしないのに意外にしっかりしている。
  
「さぁてどっか行くかこの後?」
   
「今は外出禁止って先生言うてたやんか」
   
「だけどよー。せっかく転入生も来たんだしパッとどっか行きてぇよなー」
   
「まぁ、たしかにせやな。また今度やな」
   
「そうなりますか」
   
しぶしぶ二人は諦めて教室から姿を消した。私はというと教室に一人残されたのでやる事も特に無いので何となく構内を彷徨くことにした。 
   
校舎は二階建で中庭を囲む様な作りだ。寮が完備してあり今日いなかった二人の生徒が住んでいるという事らしい。槍士とメイは屋外にある別の寮で暮らしているとのことだ。そうこうしているうちに私はある部屋の前で立ち止まった。

そういえばメイとの戦いの後のあの現象。もしかしたらここに何か手掛かりになる物があるかも知れない。
   
そうして私は図書室の扉を開けた。
  


色々手に取り見てみたがやはり兄さんの趣味に偏ってはいた。ここにある物は古い文献から新しい物まで全て取り揃えられている。故人が残した研究結果や中には呪いの話やら霊魂の話。オカルトな物が多い中で、ある一族についてやらとか、種族についてやらとか。こうして見ると図書室というよりかは書庫に近いのかもしれない。
   
「ん?これは」
   
私は一冊のボロボロの本を見つけた。
何故か妙に惹かれるその本を手に取り見てみると表紙には何もなく本というにはあまりにも薄い、冊子のようだった。
中を見てみるとこう書いてあった。
 
  森に囲われた場所に行きましょう
  羽に魅入られ 共に行きましょう
  探しても見つからない
  隠してもう見つからない
  鍵は一つもない 合わせて開ける
  救済を待つ者
  
続きは所々掠れて読めない。羽とは書いてあるが何のことかまるでわからない。手掛かりは無しだな。
糸音は読むのを断念して本を棚に戻す。
  
「あ」
  
突然弱々しい声が聞こえて振り向くといつの間にか横に女の子が立っていた。
  
「ん?」
  
「いいえ、何も。その、、本」
  
女の子は私が戻した本を指さす。
  
「これか?」
  
「うん。それ」
  
「ほら」
   
糸音は何となく察して女の子に本を渡す。
  
「ありがとう、、」
  
「あぁ」
  
女の子はその場を去ろうとしたが足を止めて振り返り。
  
「わた、わたしは譲葉。」
  
譲葉?たしか朝、兄さんが言ってた名前と同じだ。
ならこの子が今日いなかった二人の内の一人か。

「私は糸音だ」
  
「糸音さん、あの、、また来ますか」
  
「あぁ、また寄らせてもらうかもな」
  
「そう」
  
譲葉は少しだけ嬉しそうにしてその場を去る。
  
「不思議なやつだな」
  
気づけば日も傾いていた。
糸音はこれ以上何もないと思い図書室を出て帰路についた。
  
自室に戻ると今日の出来事を思い返す。家を出てメイと戦い、謎の夢を見て授業を受けて書庫で探し物をした。
  
「中々濃い一日だったな」
  
それにしてもあれは何だったんだ。色々考えても仕方ないし、今は寝よう。
  
糸音は眠りについた。
   


ヘルフェブルの街は夜でも明るい摩天楼で人口も多い上に建物も多い。そんな高いビル群の中、一際高いビルの上で一人の少年が今日も変わらぬ監視をしていた。
  
「今日も以上なし」
  
夕凪志貴の命を受けた真宵は無線の相手に報告する。
  
「おい応答しろ未凪の者」
  
「ツー、ツー、ツー、」
  
無線の主は応答しない。
  
「まずいな何かあったのか」
  
真宵は目を凝らして辺りを見る。
  
「あれは」
  
丁度、今いるビルと真横のビルとの間に今まさに襲われそうになっている人を見つける。
  
「こういうのを灯台元暮らしっていうのかな」
  
真宵は手に持っているライフルを構えると真下の怪物に照準を合わせる。
  
「さようなら吸血鬼さん」
  
ドン!!
  
銃口から放たれた弾は真下に一直線に落ち吸血鬼の体を頭蓋から貫く。
  
吸血鬼は真っ二つに割れて、襲われた人物は逃げ出す。
  
「あーあ、お礼もないのかね。まぁいっか」
  
真宵はビルを降りていった。
  

現場には吸血鬼の死体が残っていた。
  
「こういうのって砂とかになって消えるものじゃないのかな。これ後始末ってどうしたらいいんだ、未凪さんも無線繋がらないし、一体どうしたもんか、」
  
ドカ!

突然真宵は頭に強い衝撃をおぼえる。
  
「な、なんだ、まだ仲間がいたのか?ってあんたは!!」
  
真宵はその場で気を失ってしまった。
  
「全くガキ一人を攫って後二人ガキを殺さないといけないなんて面倒くさい話だ」

闇の中に男と真宵は消えていった。
  
  
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