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第9章 Go to home!

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「それは」

「難しい話しははしょるが新の髪の毛は母親と同じだ。安心しろ。お前は禿げないだろう」

「だろうって、深刻なんですよ!」

「そりゃぁ、じじいになってもフサフサは少ないだろ? 若いうちは禿げない。40~50迄は大丈夫だろうな」

「は、はぁ、でも何故?」

「遺伝の問題だ」

「遺伝」

「あぁ。それより熱があるんだから寝ているんだ。あたしは事務所で依頼人と会う。何処かでみた字面なんだが、誰だかわからない。まぁ、会えば分かる。しかし、朝しかダメとかなんなんだあの依頼人は……」

「依頼人様にそんな事言っちゃいけませんよ」

「言いたくもなる」

まぁ、そーだけど、そこまで大胆に言いますかね!?

心に思うがまた言わない。

「わかりました。寝てます。今日は事務員もよろしくお願いします」

「事務員の予備はいない。今日は事務員はぁ、休みだ。だから、事務仕事はあたしも、新も、阪田もやらない。さぁ、寝ろ。なんだったら子守唄でも唄うか?」

「だ、大丈夫です! お仕事頑張って下さい!」

と、新は逃げる様にその場を立ち去った。

「変な奴」

と愛は言って、フッと笑うのだった。

。・*・:♪

朝しか会えない、
夜の仕事の人間か?
いや、昼間でもいいだろ、むしろ昼間だろ。昼夜逆転だからなあれは。
まさか、

「警察官か?」

なわけない、

「ご名答。流石、探偵さん」

事務所の扉の外から声が聞こえた。

その声、まさか。

「枡田か? 入ってこいよ」

「失礼」

枡田と思しき人が事務所に入ってきた。

「なんの用だ。天下の国家公務員様が」

「その天下の国家公務員様をやめて売れない探偵稼業に転職したお前に会いに来てやったんだ、感謝しろ」

ドヤ顔で仁王立ちした青年が言い放つ。

「油売りに来たのか? あいにく油には困ってないんで他を当たるんだな」

愛はソファーに身を預け脚と腕を組んだ。

「相変わらずつれないねぇ、愛ちゃんは」

さっきとは打って変わった言い方だが表情かおは変わっていない。

「その呼び方は辞めろと言っただろうが」

「まぁまぁ、元同期、同僚じゃん?」

「そういうのがうざいんだ、で、なんだ。クビになったから雇ってくれと? 生憎、うちは人員が足りている。最低賃金で良いなら雇ってやらないでもないが」

「違う。依頼を持ってきてやったんだ」

「頼んでないぞ」

「頼まれてないからな」

「じゃあ、帰るんだ。Go to home!」

「嫌だね。俺が怒られちゃうもん」

「テメェの事情は知らない。早く帰れ。警察なら自分たちで解決しろ」

「だって俺、法務省だし? 警察関係だけど捜一みたいな捜査できないから」

「じゃあ、天下の国家公務員様が捜一に頭下げて捜査してもらうんだな、安心しろ。法務省からの依頼なら必死こいてくれる筈だ」

「やだよー! 今の管理官、元俺達の教官で俺の天敵なんだもーん」

「小林か?」

「そう小林のジジィ」

「あたしは嫌いじゃないぞ小林のオヤジ」

「そりゃ、愛ちゃんは女の子だし特別だったじゃん」

全く、喋り方の定まらない奴だ。
と、愛は思った。

「で、なんだ? 警察関係者が関与してるのか? その事件は」

「やっぱり興味はある?」

「論点を逸らすな」

「照れてるんだ」

「黙れ」

「まぁ、いいや。そ、簡単に言っちゃえばそう。Sが関与てるかもしれないそうだ。しかも上層部の昔からの付き合いのSだ」

「公安方面か? お前は法務省の人間だろ」

「んまぁ、世話になった上司に泣きつかれたんでね」

「お前にも情があったんだな」

「相変わらずの毒舌で」

「3~4年でそんなに口調は変わらないだろ」

「俺は変わったけど?」

「変わってないな」

「は?」

「さっきから砕けたり、偉そうになったりして喋り方が統一していないところとか」

「相変わらずの洞察力で」

「変わった筈だ、良い意味でな」

「ほぅ」

「で、要件は何だ。朝早く押しかけて。この後も調査はあるんだ」

「よし、じゃあ、教えてやろう!」

「あ、やっぱいい。お前の言い方はムカつくんだよ」

「つれないなぁ、愛ちゃん。良いじゃん」

「その呼び方もキモいからやめろ」

「んじゃあ、なんて呼べばいい」

「工藤でいいだろ。工藤で」

「だって可愛いくないじゃん」

「呼び方に可愛いも可愛くないもあるか。あたしだって、お前の事だった枡田かお前と呼ぶだろ」

「名前で呼んでくれても良いんだよ?」

「お前のファーストネームなんぞ知らない」

「嘘ッ !!」

「あたしは得しない嘘は吐かない」

じゃあ、得する嘘はつくんかい!

まぁ、探偵に嘘は必要だろう。

「はいはい、あいちゃ……工藤さん」

「アイツのメモによると、お前のファーストネームは健か」

「健って呼んで!」

「呼ばない、だから用がないから帰れ」

「わーったー! わーった! ごめん」

「で、内容」

「元、直属の上司の娘さんがSと付き合ってる」

「しらねぇーよ! 帰れ!」

「そう、怒んないでよ。家出したんだ」

「歳は」

「23歳」

「成人してるなら家出しても合法だ。知らない。他の探偵なら受けてくれるかもしれないがあたしは受けない」

「そんな!!」

「予定が詰まってるんだ。帰れ枡田。GO to home!」

「愛ちゃん……」
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