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第一章 ハロウィン禁止命令‐偏狭な辺境伯は仮装を許さない‐
6 生意気な娘
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「この娘を地下牢に入れろ!」
その大声に、廊下にいた衛兵がドアを開けた。が、アデルを見ると皆尻込みした。彼らはベイカーの店のアデルを知っていた。
一方、アデルはいくら怒っているからと言って地下牢に入れろはないだろうと思った。ちょっとどころか、かなり変だ、この人。こんな変な人に仮装は禁止だと命じられたなんて、納得できない。
「領主のくせに嘘ついたんですか! なんなりと望むものを申せと仰せだったから、望みを申し上げたのに」
「いくらなんでもそんな望みを言う奴がいるか」
「大ウソつき。なんて、心の狭い奴」
「心が狭いだと! 調子に乗りおって!」
ロバートはアデルの襟首をつかまんばかりに近づいた。アデルは両手を組んで、指を鳴らした。望むところだ。勤め始めの頃、嫌味なことを言う他の店の職人を投げ飛ばしたこともあるのだ。
医師とカバン持ちは二人から後ずさりして離れた。
「やめい!」
小さな身体の老臣クレイの身体から出た大きな声がロバートの足を止めた。アデルも指を鳴らすのをやめた。
「殿様、小娘の言うことに腹を立てるのは見苦しうございます。しかもこの娘は命の恩人。なんなりと望みを申せと言っておいて、舌の根も乾かぬうちに牢に入れろとは、少々御短慮が過ぎます。アデル、そなたも少しは口を慎め。客商売をやっておるなら、もう少し口のききようがあるであろう」
クレイの言うことは正論だった。だが、アデルの腹立ちは収まらなかった。
「だって、殿様はうちのお得意様じゃありませんし」
「当然だ。誰が作ったかわからぬ菓子を口にできるか」
ロバートは城の厨房の者か母親の作ったものしか食べない。
「誰が作ったかわからないって、領地に住む私たちよ。領民を信じられないの? それでも御領主様?」
「おのれえ」
ロバートは腰に差していた剣の柄に手をかけた。生意気にもほどがある。黙って聞いていれば調子に乗りおって。
「おやめください」
静観していた衛兵達が部屋になだれ込んで、ロバートとアデルの間に割って入った。
ロバートには信じられない事態だった。衛兵が領主にやめろとは。
「なぜ止める?」
衛兵達は口々に叫んだ。
「アデルの作った菓子はうまいからです」
「ベイカーの店の菓子を好きな娘に贈ったらうまくいくと評判なんです」
「アデルを殺したら、鉱山の労働者が騒ぎます」
アデルはちょっとそれは大袈裟だと思う。ベイカーの店の菓子は四人の職人が協力して作っているのだ。アデルだけで作っているわけではない。鉱山労働者が騒ぐというのも誇大な妄想だ。
「殺しなどせぬ」
ロバートはそう言って、柄から手を離した。確かにここでこの生意気な娘に剣を突きつけて言葉を撤回せよと言っても、言うことをきくとは思えない。だからといって女に剣を振るえば、物笑いの種になりかねない。ロバートは衝動的な振舞をしてしまった己を恥じた。赤みを帯びていた顔が平常時に近い色になっていた。
「いくら脅しでも剣を使うのはあまりよいことではありません。それに命の恩人ですぞ」
クレイはそう言うと、衛兵達に殿様の御前である、わきまえよと命じた。衛兵達は部屋から出た。医師とカバン持ちも外に出した。
クレイは二人を向かい合わせにソファに座らせた。
「アデルとやら、職人のそなたにとって仕事が大事なのはわかる。だが、殿様がお触れを出したのには理由があるのだ。話を聞いて、それでも納得できねば怒るがよい」
アデルはそういえば理由を聞いていないと気付いた。お触れを出すには何か理由があるはずである。
クレイはロバートに発言を促すかのように目配せした。
先ほどより冷静になったロバートは目の前の少女を見た。目はしっかりとこちらを見据えている。菓子職人ふぜいにしては、態度が大きい。職人は誇り高いと聞いているが、見習いでもこれほどとは思っていなかった。
ならば、こちらもマカダム家の誇りを懸けて説得せねばなるまい。
「このランバートの地は隣国と国境を接している。また、鉄鉱石の鉱山がある。ゆえに隣国からの侵略を幾度も受けてきた。我がマカダム家は辺境伯として、国境を越えて来る隣国の軍勢と幾度となく戦ってきた。わかるな」
「はい。子どもの頃に習いました」
国の歴史を習ったということ学校に行っていたということである。それなら話は早いと、ロバートは続けた。
「我が先祖は戦いから多くの教訓を得て、家訓として我ら子孫に伝えた。平時こそ戦時に備えよ、平時の油断は命取り、風紀の緩みは心の緩み等、余はそれを信じてランバートを治めてきた。少しの油断でも隣国に侵略する隙を与えるのだ。故に、仮装を伴う祭は許すわけにはいかぬのだ。国境の警備を厳しく行っているとはいえ、もし仮装の祭のことを知れば、隣国の者が侵入し仮装に紛れて家々を襲い、城を攻めるかもしれぬ。仮装は危険極まりないのだ」
「ちょっと待ってください。仮装をするのは子どもです」
アデルはさすがにその想定はないと思った。
ロバートは眉を顰めた。
「甘い。昨年、城下では若い者が自宅に仮装の仲間を集めてパーティをしたというではないか。余が王都にいる頃も、万聖節に仮面舞踏会なる乱痴気騒ぎをしていた貴族がいた。物珍しい都の風俗が入ってくれば真似したくなるのは人の性。軽佻浮薄な振舞に走る者がいても不思議ではない。子どもだけでなく大人までも仮装をするかもしれぬ。現に城下の商店ではパーティ用にワインが売れているというではないか。子どもがワインを大量に飲むか。古着も子ども向けではないものも売れていると聞く。もし、これに隣国が乗じればどうなる? 仮装してランバートが侵略されれば、隣接するノルト伯爵領、バートリイ公爵領等も攻め込まれよう。王国と隣国の全面戦争となったら、いかがする? 平時の油断は命取りと伝えた祖先の知恵を蔑ろにできようか」
よくもまあ、いろいろと調べ上げたものだとアデルは思った。商店の売り上げまで調べていたとは。
だが、アデルも負けてはいられない。
「この祭には大司教様のお許しもいただいているのです。教会が認めているのです」
「ランバートの政治を司るのは教会ではない。国王陛下から辺境伯に任じられたマカダム家だ。それにそなたら菓子屋が菓子を売るのを禁じたわけではない。だが、仮装は駄目だ。子どもであっても仮装で練り歩き、菓子を家々にねだって歩くなど、見苦しいことこの上ない」
「菓子を買えない貧しい家庭の子どもにとっては、楽しみなのに」
「そのために教会があるのではないか。教会は寄進を受けて、それで貧しい者に食事を与えている。他の祭では菓子を配っているではないか」
ああ言えばこう言う、ロバートという男は食えない男だとアデルは歯ぎしりしそうになった。が、あることを思い出した。
「二年前に隣国の姫君が国王陛下の第三王子と婚約なさったではありませんか。それなのに隣国が攻め込むというのですか」
ロバートは鼻で笑った。
「あくまでも婚約だ。十八歳の姫君と十九歳の第三王子はまだ式を挙げていない。婚約で我が国を油断させているのかもしれぬ。開戦したら婚約解消するつもりであろう」
ここまで疑わねば辺境伯というのは国を守れないのであろうか。アデルはこれは簡単な話ではないと思った。
クレイは二人の考えはまったく相容れぬと判断した。
「殿様はこのように領地だけでなく王国全体のことを考えて、お触れを出したのだ。ここは堪えてくれぬか。菓子を売るのを禁じているわけではないのだ」
「殿様の考えはわかりました」
アデルは言った。
「これは私一人ではどうにもできぬようです。店に戻って主に相談します。商店街でも今頃は騒ぎになっているはずです。改めてお触れについて商店街の意見をまとめます」
商店街代表でもないのにでかいことを言うとロバートは思った。生意気にもほどがある。
「そうか。店に戻れたらそうするがいい」
「戻れたらって……」
アデルは嫌な予感を覚えた。まさか、手打ちにするというのか。
「先ほど余を狙撃した者がまだ捕まっておらぬ。城内にいることは確かだ。このような場合、城は門を閉ざし、中にいる者は外に出さぬことになっている。外の者も中に入れぬ」
ロバートの言葉にアデルは息を呑んだ。
「つまり戻れないってこと……」
「曲者が捕まれば戻っても構わん。だが、それまでは城内にいてもらう。安心しろ。城内にはいつでも籠城できるように食糧が備蓄してある。そなた一人増えたくらいで食糧がすぐに尽きることはない」
そう言うとロバートはクレイに命じた。
「部屋割りを頼む。代官たちとは離れた場所にせよ、一応御婦人だ」
「御意」
ロバートは騎士団長や衛兵隊長と話し合うために部屋を出て行った。
「アデル、そういうことだから、しばらく堪えてくれぬか。曲者が見つかれば戻れる」
クレイに申し訳なさそうに言われても、アデルは納得できなかった。あんまりだ。領主は自分の考えを押し通そうとするばかりだ。商店街のことなど考えてもいない。領地や王国のことを考えていると言うが、商店主らも領民であり国民なのだ。
それにベイカーはアデルが城にいることを知らない。今頃店に戻らぬアデルを案じているのではないか。お触れのこともある。ベイカーやおかみさん、店の仲間達の心中はいかばかりか。
その大声に、廊下にいた衛兵がドアを開けた。が、アデルを見ると皆尻込みした。彼らはベイカーの店のアデルを知っていた。
一方、アデルはいくら怒っているからと言って地下牢に入れろはないだろうと思った。ちょっとどころか、かなり変だ、この人。こんな変な人に仮装は禁止だと命じられたなんて、納得できない。
「領主のくせに嘘ついたんですか! なんなりと望むものを申せと仰せだったから、望みを申し上げたのに」
「いくらなんでもそんな望みを言う奴がいるか」
「大ウソつき。なんて、心の狭い奴」
「心が狭いだと! 調子に乗りおって!」
ロバートはアデルの襟首をつかまんばかりに近づいた。アデルは両手を組んで、指を鳴らした。望むところだ。勤め始めの頃、嫌味なことを言う他の店の職人を投げ飛ばしたこともあるのだ。
医師とカバン持ちは二人から後ずさりして離れた。
「やめい!」
小さな身体の老臣クレイの身体から出た大きな声がロバートの足を止めた。アデルも指を鳴らすのをやめた。
「殿様、小娘の言うことに腹を立てるのは見苦しうございます。しかもこの娘は命の恩人。なんなりと望みを申せと言っておいて、舌の根も乾かぬうちに牢に入れろとは、少々御短慮が過ぎます。アデル、そなたも少しは口を慎め。客商売をやっておるなら、もう少し口のききようがあるであろう」
クレイの言うことは正論だった。だが、アデルの腹立ちは収まらなかった。
「だって、殿様はうちのお得意様じゃありませんし」
「当然だ。誰が作ったかわからぬ菓子を口にできるか」
ロバートは城の厨房の者か母親の作ったものしか食べない。
「誰が作ったかわからないって、領地に住む私たちよ。領民を信じられないの? それでも御領主様?」
「おのれえ」
ロバートは腰に差していた剣の柄に手をかけた。生意気にもほどがある。黙って聞いていれば調子に乗りおって。
「おやめください」
静観していた衛兵達が部屋になだれ込んで、ロバートとアデルの間に割って入った。
ロバートには信じられない事態だった。衛兵が領主にやめろとは。
「なぜ止める?」
衛兵達は口々に叫んだ。
「アデルの作った菓子はうまいからです」
「ベイカーの店の菓子を好きな娘に贈ったらうまくいくと評判なんです」
「アデルを殺したら、鉱山の労働者が騒ぎます」
アデルはちょっとそれは大袈裟だと思う。ベイカーの店の菓子は四人の職人が協力して作っているのだ。アデルだけで作っているわけではない。鉱山労働者が騒ぐというのも誇大な妄想だ。
「殺しなどせぬ」
ロバートはそう言って、柄から手を離した。確かにここでこの生意気な娘に剣を突きつけて言葉を撤回せよと言っても、言うことをきくとは思えない。だからといって女に剣を振るえば、物笑いの種になりかねない。ロバートは衝動的な振舞をしてしまった己を恥じた。赤みを帯びていた顔が平常時に近い色になっていた。
「いくら脅しでも剣を使うのはあまりよいことではありません。それに命の恩人ですぞ」
クレイはそう言うと、衛兵達に殿様の御前である、わきまえよと命じた。衛兵達は部屋から出た。医師とカバン持ちも外に出した。
クレイは二人を向かい合わせにソファに座らせた。
「アデルとやら、職人のそなたにとって仕事が大事なのはわかる。だが、殿様がお触れを出したのには理由があるのだ。話を聞いて、それでも納得できねば怒るがよい」
アデルはそういえば理由を聞いていないと気付いた。お触れを出すには何か理由があるはずである。
クレイはロバートに発言を促すかのように目配せした。
先ほどより冷静になったロバートは目の前の少女を見た。目はしっかりとこちらを見据えている。菓子職人ふぜいにしては、態度が大きい。職人は誇り高いと聞いているが、見習いでもこれほどとは思っていなかった。
ならば、こちらもマカダム家の誇りを懸けて説得せねばなるまい。
「このランバートの地は隣国と国境を接している。また、鉄鉱石の鉱山がある。ゆえに隣国からの侵略を幾度も受けてきた。我がマカダム家は辺境伯として、国境を越えて来る隣国の軍勢と幾度となく戦ってきた。わかるな」
「はい。子どもの頃に習いました」
国の歴史を習ったということ学校に行っていたということである。それなら話は早いと、ロバートは続けた。
「我が先祖は戦いから多くの教訓を得て、家訓として我ら子孫に伝えた。平時こそ戦時に備えよ、平時の油断は命取り、風紀の緩みは心の緩み等、余はそれを信じてランバートを治めてきた。少しの油断でも隣国に侵略する隙を与えるのだ。故に、仮装を伴う祭は許すわけにはいかぬのだ。国境の警備を厳しく行っているとはいえ、もし仮装の祭のことを知れば、隣国の者が侵入し仮装に紛れて家々を襲い、城を攻めるかもしれぬ。仮装は危険極まりないのだ」
「ちょっと待ってください。仮装をするのは子どもです」
アデルはさすがにその想定はないと思った。
ロバートは眉を顰めた。
「甘い。昨年、城下では若い者が自宅に仮装の仲間を集めてパーティをしたというではないか。余が王都にいる頃も、万聖節に仮面舞踏会なる乱痴気騒ぎをしていた貴族がいた。物珍しい都の風俗が入ってくれば真似したくなるのは人の性。軽佻浮薄な振舞に走る者がいても不思議ではない。子どもだけでなく大人までも仮装をするかもしれぬ。現に城下の商店ではパーティ用にワインが売れているというではないか。子どもがワインを大量に飲むか。古着も子ども向けではないものも売れていると聞く。もし、これに隣国が乗じればどうなる? 仮装してランバートが侵略されれば、隣接するノルト伯爵領、バートリイ公爵領等も攻め込まれよう。王国と隣国の全面戦争となったら、いかがする? 平時の油断は命取りと伝えた祖先の知恵を蔑ろにできようか」
よくもまあ、いろいろと調べ上げたものだとアデルは思った。商店の売り上げまで調べていたとは。
だが、アデルも負けてはいられない。
「この祭には大司教様のお許しもいただいているのです。教会が認めているのです」
「ランバートの政治を司るのは教会ではない。国王陛下から辺境伯に任じられたマカダム家だ。それにそなたら菓子屋が菓子を売るのを禁じたわけではない。だが、仮装は駄目だ。子どもであっても仮装で練り歩き、菓子を家々にねだって歩くなど、見苦しいことこの上ない」
「菓子を買えない貧しい家庭の子どもにとっては、楽しみなのに」
「そのために教会があるのではないか。教会は寄進を受けて、それで貧しい者に食事を与えている。他の祭では菓子を配っているではないか」
ああ言えばこう言う、ロバートという男は食えない男だとアデルは歯ぎしりしそうになった。が、あることを思い出した。
「二年前に隣国の姫君が国王陛下の第三王子と婚約なさったではありませんか。それなのに隣国が攻め込むというのですか」
ロバートは鼻で笑った。
「あくまでも婚約だ。十八歳の姫君と十九歳の第三王子はまだ式を挙げていない。婚約で我が国を油断させているのかもしれぬ。開戦したら婚約解消するつもりであろう」
ここまで疑わねば辺境伯というのは国を守れないのであろうか。アデルはこれは簡単な話ではないと思った。
クレイは二人の考えはまったく相容れぬと判断した。
「殿様はこのように領地だけでなく王国全体のことを考えて、お触れを出したのだ。ここは堪えてくれぬか。菓子を売るのを禁じているわけではないのだ」
「殿様の考えはわかりました」
アデルは言った。
「これは私一人ではどうにもできぬようです。店に戻って主に相談します。商店街でも今頃は騒ぎになっているはずです。改めてお触れについて商店街の意見をまとめます」
商店街代表でもないのにでかいことを言うとロバートは思った。生意気にもほどがある。
「そうか。店に戻れたらそうするがいい」
「戻れたらって……」
アデルは嫌な予感を覚えた。まさか、手打ちにするというのか。
「先ほど余を狙撃した者がまだ捕まっておらぬ。城内にいることは確かだ。このような場合、城は門を閉ざし、中にいる者は外に出さぬことになっている。外の者も中に入れぬ」
ロバートの言葉にアデルは息を呑んだ。
「つまり戻れないってこと……」
「曲者が捕まれば戻っても構わん。だが、それまでは城内にいてもらう。安心しろ。城内にはいつでも籠城できるように食糧が備蓄してある。そなた一人増えたくらいで食糧がすぐに尽きることはない」
そう言うとロバートはクレイに命じた。
「部屋割りを頼む。代官たちとは離れた場所にせよ、一応御婦人だ」
「御意」
ロバートは騎士団長や衛兵隊長と話し合うために部屋を出て行った。
「アデル、そういうことだから、しばらく堪えてくれぬか。曲者が見つかれば戻れる」
クレイに申し訳なさそうに言われても、アデルは納得できなかった。あんまりだ。領主は自分の考えを押し通そうとするばかりだ。商店街のことなど考えてもいない。領地や王国のことを考えていると言うが、商店主らも領民であり国民なのだ。
それにベイカーはアデルが城にいることを知らない。今頃店に戻らぬアデルを案じているのではないか。お触れのこともある。ベイカーやおかみさん、店の仲間達の心中はいかばかりか。
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