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第一章*はつこい*
充ちる月夜②
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「こんばんは」
彼は思った通りに、シンプルながらお洒落だった。
「こんばんは。
…アリル、あのね」
「うん?」
「…ううん。
なんでもない」
『こんな格好で、一緒に出歩いて恥ずかしく無いか』と聞きたかったが、別にデートでは無いのだ。
アリルは只の護衛だ。
ー…そう。
仕事なのだ。
胸の奥がツン、と痛くなった。
「女王?」
会ってスグに様子がおかしい。
何かを言いかけて止めて、俯いている。
「なにか、あった?」
具合が悪いなら、外に連れ出すべきではない。
医師を呼び、すぐに休ませるべきだ。
すぐ傍で真剣に覗き込んで来るアリルに、セリアの胸は益々苦しくなる。
(ー…かれは、仕事の一環として心配してくれてるだけなのに)
友人でも何でも無い。
用事が無ければ、気にとめて貰えない。
その程度のものだ。
ー…パタ。
「え」
パタパタパタ。
音もなく、静かにセリアの両目から大粒の涙が溢れ落ちた。
「女王…」
「ち、ちがうの!
これ、は…!
その、」
呆れられてしまう。
常に女王として厳しく律している事を求められている。
こんな、小さな事で不用意に泣いたりしたら!
必死に涙を止めようとしても、一度溢れた涙は止められなかった。
ただ、「ごめんなさい、すぐに止めるから。何でも無いから」と懇願する様に目を押さえながら謝るセリアを見て、戸惑いを隠せずにいた。
「セリア…?」
何かあったのは間違いない。
こんな時に、満足な言葉をかけられないのは情けなく思う。
「ー…」
何を思ったのか。
隣で心配そうに見つめていたアリルは、スッと立ち上がると部屋の奥に歩いて行った。
「ありる…?」
大粒の涙を溢し、目を真っ赤にしながらも顔を上げ必死に後を追う。
折角、忙しい時間を割いて来てくれているのに、ベソベソ泣いているから呆れてしまったのだろう。
かと言って、責任感の強い彼の事だ。
無下に見捨てて帰れる訳も無く、仕方無しに部屋の奥へ行き私が落ち着くまで時間を潰しているのかもしれない。
「アリル…!
ごめんなさい、私…!!」
返事もなく、戻って来る気配もない。
怒らせてしまっているに違いない。
サー…っと血の気が引いたセリアをよそに、少ししたらアリルは戻ってきた。
「お待たせ」
「え…?」
見ると、アリルはお盆に乗せたティーポットとティーカップを持っている。
「アリル、それ…?」
「あぁ、ごめん。
勝手にキッチン借りたよ?
何か悩んでるみたいだから、温かい紅茶を飲めば、落ち着くかな?って思ってさ」
「怒って無い?呆れて無いの…?」
「いや?何で怒るのさ?」
「…!そっか、良かったぁ…!」
泣き腫らした目で、心底安心した様に笑う。
漸く笑った彼女に、アリルも安心して顔を綻ばせた。
「どうして、泣いたの?
ー…良かったら、教えてくれないか?」
2人で並んで座って、紅茶を飲む。
湯気が運ぶ香りを楽しみつつ、涙の訳を訪ねた。
決して深く立ち入るつもりは無いが、それでも敬愛する女王を心配する気持ちに嘘は吐けない。
…果たして本当に、それが『敬愛する女王への心配』なのか自分でも怪しく思う。
ーー…もしかしたら。
他の連中よりも一歩近くにいるのであろう優越感から気になっているだけかもしれない。
「…わ、笑わない?」
当の本人は漸く落ち着き、改めて泣き出した事が恥ずかしかったのか頬を紅潮させモジモジしている。
(可愛いな…)
こうやって、幾度かの逢瀬を重ねる事によって、より裸に近い女王の素顔を見ていた。
そこには、昼間の彼女には無い幼さがある。
年相応の少女の表情を見ると可愛らしくて仕方がない。
「笑わないよ。笑うわけ無いじゃないか」
本心からの言葉を紡ぐ。
勿論、そこには嘘は無かった。
「ホント?
良かった!実はね…」
アリルの優しさに委ね、セリアは胸中を吐露した。
友人が今までいなかった事。
オシャレな私服を持っていなくて、満月の夜のお出かけに行く時にアリルに申し訳ない事。
何よりアリルが、シンプルなのにオシャレな事!!
最後を、特に力説して語るセリアに流石のアリルも崩れ落ちた。
「笑わないって言ったじゃない!!」
笑いを堪える所か、崩れ落ちて爆笑するアリルに顔を真っ赤にし憤慨する。
「ご、ごめ…!そんなつもりじゃ…!」
さっきまで兎の様に目を真っ赤にしていたのに、今は顔を真っ赤にしている。
こんなに表情をコロコロと変える娘だったんだなと、アリルは目を細めた。
「ははは、…あぁごめん。
決してバカにしたとかじゃ無いから。
これはジャミルからの受け売りなんだけど」
コホン、と小さく咳払いをして改める。
セリアを見つめる瞳は、とても優しい。
「友達って、なろうと思ってなれるモノじゃなくて。
気付いた時には既になってるんだよ」
「…」
「ぼくもだけど、四大聖神はセリアの友達と思ってるよ。
リオン辺りは特にね?
ー…まぁ。表立って友人って名乗るのは難しいけど、気持ちの上ではそう思ってるんじゃ無いかな?」
「本当に?」
あぁ、勿論。と頷くアリルを見て、セリアの声は弾む。
「嬉しい…!」
「多分、レイチェルもそう思ってるんじゃ無いかな?」
「うふふ、ありがとうアリル!」
本当に、本当に嬉しそうに笑うから。
思わず抱き寄せ、「きゃ」と小さく上げる声に引き寄せられる様に。
涙の痕に「ちゅ、」と小さく口付けをした。
ー…してしまった。
「「ー…」」
言葉は無いが、2人とも口をぽかんと開け、目を見開いて固まっている。
「ー…ご、ごめん!!
そんなつもりじゃ無くて!!」
軽々しく女王を抱き締めて、目尻とはいえ口付けしたなんて!!
状況が飲み込み切れないのか、未だボンヤリした表情のセリアに対し、事の重大さに顔を蒼白させるアリル。
「ぇと、これは…別に良いんだけど、」
セリアはボンヤリしながらも、少しずつ言葉を紡ぐ。
「前もそうだけど、アリルって誰にでも簡単にこういう…。
…その、キスとかする…の?」
「いやいやいや!!
そんな事は無い!!
そんな軽薄な男じゃ…ない…はず」
セリアに必死に否定し、盛大に頭を振るが。
「軽薄な男じゃ無い」には自信が失われたのか、語尾がシオシオとトーンダウンして行く。
それはもう、切ない程に。
「誰にでも、簡単にとかは無いよ。
どうでも良い相手には触りもしないよ」
「…え…」
「セ、セリアが…。
余りにも可愛かったし。
泣いてたから、…その、元気付けたかったし…」
「…アリル…」
抱き寄せた体は、幾ら離れたとはいえ同じソファに座っているから。
まだ近くにいる。
視線は再び絡まれば、言葉も不要になる。
「げ、元気出たわ…」
沈黙に耐えられず、視線を反らしながら苦し紛れに声を出す。
「うん…。
セリアは、どんな服を着ていても…。
ー…可愛いよ」
逃げ腰な手を取ると、優しく引き寄せると。
優しく、甘くキスをした。
***
「今回は、満月見られなかったわね」
カチャリ、とテラスの戸を開け外に出る。
少ししてからアリルが続く。
「うん。
また、次の機会だね」
テラスの手すりにもたれたセリアの隣に、同じ様にもたれるアリル。
「…」
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
ふと、視線をアリルに投げていたが、問われパッとはぐらかす。
(何とも思わない人には触らないって言ってたし、キス…されてるって言う事は…)
悶々と考えるも、自分で「キス」と言う単語を脳内に浮かべると自動的に先程のキスを思い出し瞬間湯沸し器の如く頭が沸騰しそうになる。
(キス…!
そうよ、私、さっきキスしたのよね…!
アリルと…!!)
叫びそうになる衝動を必死に抑え、冷静を装う。
そう。
人生初のキスを、隣に立つアリルとしてしまった。
自分の事を友達とも言ってくれた、優しい彼。
「友達…」
「うん?」
「えへへ。私、アリルとお友達なんだなぁって!」
嬉しそうに、照れ臭そうに笑いながら応えるセリアを見て(参ったなぁ…)と考える。
決して、軽い気持ちでキスをした訳では無い。
が、何と言うべきか。
後すこしで、引き戻れなくなりそうな気がしてならなかった。
昼間の毅然とした凛々しき女王。
夜の帳が隠す、幼さの残る彼女。
どちらも同じセリアだ。
だが、昼夜では『守りたい』の意味合いが変わるのだ。
昼間は忠臣として守るべき主君。
夜は男として守りたい子。
無論自分にはティニアがいる。
セリアに男として接する訳にはいかない。
そんな事は承知しているが、それでも同じ時を過ごす程に、もっと奥深くまで触れてしまいたくなる。
(重症だな…。
ぼくは、人間では無いのに。
何を考えているんだ…)
本来なら、触れる事など許されない身分なのに。
緩く頭を振り、変な考えを追い払う。
「…あのさぁ」
「きゃ!」
不意に、アリルがセリアの小さな鼻を摘まむ。
予期しない攻撃に、思わず目を瞑る。
「な、何よぅ!」
解放された鼻を両手で覆いながら、精一杯の抗議をする。
「何で、そんな可愛いんだよ」
「…へ」
「…!!」
思わずポロリと溢れた本音。
口に出してしまったと自覚した瞬間、今度はアリルが爆発的に赤面した。
口を手で覆い、己の間抜けさを呪う。
「も、もう今日は帰る!」
何かもう、色々ボロボロ過ぎる!
そんな思いを吐き出す様に叫ぶ。
「そ、そうね。もう夜も遅いものね」
セリア自身も、思う所があるのかアリルの意見に同意した。
「ー…じゃあ、また次の満月に」
「今日は、お話を聞いてくれてありがとう。
気をつけて、帰ってね?」
「お休み、セリア」
「お休みなさい、アリル」
挨拶を交わし、アリルは帰途の術を唱えた。
キラキラと光の粒を霧散させ、姿を消す。
(ー…帰っちゃった…)
そりゃ、ここに住んでいる訳では無いから、時間が来れば帰るのは分かっている。
でも、あの甘い時間を共に過ごしたのが嘘みたいに帰ってしまった。
短く息を吐くと、セリアは部屋に入る。
変に意識しない様に、「友達」として恥にならない様に頑張ろう。
まずは、そこからだ。
ー…一方。
アリルの夜は、まだ終わりそうに無かった。
***
「ー…帰って来ちゃったな…」
天界の結界を潜り、時間がら閑散とした通りを歩く。
通りを一本入り、誰もいない事を確認すると、その場に座り込んだ。
本来の目的ー…満月を愛でに湖畔へ行く…ーを無視して女王の部屋で時を過ごした。
それも…。
何も色を知らぬ少女に、2回もキスをしてしまった…!!
「こんな事して良いのかなぁ…」
右手で前髪をかき上げながらボヤく。
いや男としても大人としてもダメだよなぁ。と独り言を加えながらヨロヨロと立ち上がる。
「もう、帰って寝よう…」
脳裏には、様々なセリアの表情を思い起こす。
怒った顔、泣いた顔、驚いた顔、笑った顔、照れた顔。
全て、自分だけに向けられた顔だ。
大切で、守らなければならない方。
可愛くて、ずっと傍にいたい子。
ふわふわに柔らかくて。
そっと触れなければ壊してしまいそうだった。
それを考えただけで、アリルの胸の奥はチリチリと甘く痛んだ。
少し離れただけなのに、もう会いたい。
今まで、こんな気持ちになった事など無かった。
ー…この気持ちは何と言うのだろう。
また近い内に彼女にはエリュージャル王城で会う。
その時は、女王と臣下だ。
こんな惚けた考えなど隠さないといけない。
そうでなければ、絶対にボロが出る。
自律と言う名の箱に閉じ込めた、感情を出せるのは満月の夜だけだ。
そう結論付け、1つ頷くとスッと踵を返し帰路についた。
「よぅ。お帰り、色男」
突如、背後から投げ掛けられた声に、文字通り跳ねた。
「…ヴ、ヴェスパさま…!」
「“なんでココに?”って、モロに顏に書いてあるぞ?アリル」
心底楽しそうに、ヴェスパはアリルの様子を探る。
(先程迄、確かに誰の気配も無かった筈…!なのに、何故…!?)
「い、いつの間に…?」
「あん?別に良いだろ?いつでもよ。余程楽しい一時を過ごしたみたいだな?…ナニしてたんだ?下界で」
「…ナニ…って。今宵は満月です。それをガディル湖まで、見に行ったまでですが…」
「…女王と、か?」
「―…!」
ヴェスパの一言で、アリルは自身の魂が凍りつくのを感じた。
(どうしてそれを…!)
「どうした?顔色が悪いな?」
「…ぅ…。
…い、え、…べつに…。
…陛下とはお会いしていませんが…?
何を急に…」
苦し紛れに、呻き声に近い返事しか出ない。
ヴェスパ神には、恐らく誤魔化しは通じない。
寧ろ、バレバレだろう。それだけアリルの表情は、全てを物語っていた。
「…ふん。まぁ、良い。
オレは眠いし、そこまで暇じゃねぇんだよ」
暫しの沈黙の後、ふいに興醒めしたかの様な口調でアリルから視線を外す。
いつしか、夜が明け始めたのか、辺りが純白の光を孕む。
「女王の護衛も良いが、ティニアも構ってやれよ?寂しがってるぞ?」
「…心得ております(…やはりバレていたか…)」
ヴェスパが帰城する気配を感じ、やや安堵の息を吐く。
先程の回答も、ただの茶番でしか無かったらしい。
自身の部下の滑稽な姿を垣間見て、呆れて言葉も出なかったか。
「じゃあな、アリル。お前も早く休め」
「ありがとうございます。
ー…お言葉に甘え、早々に帰城したく思います」
深々と一礼するアリルの脇を通り抜ける筈が、何故かアリルの眼前で足を止める。
「…?ヴェスパさま…?」
「あぁ、そうそう。
言い忘れていた」
「はい?」
不思議そうに首を傾げるアリルの肩をポンッと叩き、耳元で告げる。
「お前も、あの娘も、常に俺に“見られている”事を忘れるなよ…?」
「―…!!」
千里眼を持つ創世神は、常に万物を見通す力を持つ。
その為、エリュージャル王国に異変があれば、すぐに四大聖神を派遣し対応させるのだ。
当然、アリルとセリアのやり取りも見ていた事になるのだ。
何故、気付かなかった…!と心中で激しく舌打ちするも、既に後の祭だ。
それだけ、自分が浮かれていた証拠だ。
「ヴェスパさま…」
誤解だ、と救いを求める声で主君を呼ぶも、ヴェスパはどす黒い笑みだけ残し、既に歩いていた。
(―…ダメだ、ダメだ!
もう、こんな事は続けてはいけない。
彼女を護る為にも、もうあんな行為は慎まなくては…)
何故か、そう決め込んだ途端に胸中に寂しさが溢れる。
ただ「以前の様に」戻るだけだ。
たかだかほんの数回、仕事以外であっただけ、なのに。
先刻のやり取り、セリアの笑顔、怒った顏、泣きそうな顏、そして―…。
「ダメだ。諦めろ。所詮、ぼくは神族だ。人間とは深く関わってはダメなんだ…!」
未練がましい想いを振り払う様に頭を振る。
(なんだ、この感情は…)
今まで感じた事の無い、ジリジリと焼き付く様な焦燥感に、アリルは苛立ちを隠せなかった。
それと同時に、セリア個人に対する感情を、厚い扉の奥に閉じ込め、硬く施錠を施していた。
再び顏を上げた時、もはや迷いは微塵も存在しなかった―…。
彼は思った通りに、シンプルながらお洒落だった。
「こんばんは。
…アリル、あのね」
「うん?」
「…ううん。
なんでもない」
『こんな格好で、一緒に出歩いて恥ずかしく無いか』と聞きたかったが、別にデートでは無いのだ。
アリルは只の護衛だ。
ー…そう。
仕事なのだ。
胸の奥がツン、と痛くなった。
「女王?」
会ってスグに様子がおかしい。
何かを言いかけて止めて、俯いている。
「なにか、あった?」
具合が悪いなら、外に連れ出すべきではない。
医師を呼び、すぐに休ませるべきだ。
すぐ傍で真剣に覗き込んで来るアリルに、セリアの胸は益々苦しくなる。
(ー…かれは、仕事の一環として心配してくれてるだけなのに)
友人でも何でも無い。
用事が無ければ、気にとめて貰えない。
その程度のものだ。
ー…パタ。
「え」
パタパタパタ。
音もなく、静かにセリアの両目から大粒の涙が溢れ落ちた。
「女王…」
「ち、ちがうの!
これ、は…!
その、」
呆れられてしまう。
常に女王として厳しく律している事を求められている。
こんな、小さな事で不用意に泣いたりしたら!
必死に涙を止めようとしても、一度溢れた涙は止められなかった。
ただ、「ごめんなさい、すぐに止めるから。何でも無いから」と懇願する様に目を押さえながら謝るセリアを見て、戸惑いを隠せずにいた。
「セリア…?」
何かあったのは間違いない。
こんな時に、満足な言葉をかけられないのは情けなく思う。
「ー…」
何を思ったのか。
隣で心配そうに見つめていたアリルは、スッと立ち上がると部屋の奥に歩いて行った。
「ありる…?」
大粒の涙を溢し、目を真っ赤にしながらも顔を上げ必死に後を追う。
折角、忙しい時間を割いて来てくれているのに、ベソベソ泣いているから呆れてしまったのだろう。
かと言って、責任感の強い彼の事だ。
無下に見捨てて帰れる訳も無く、仕方無しに部屋の奥へ行き私が落ち着くまで時間を潰しているのかもしれない。
「アリル…!
ごめんなさい、私…!!」
返事もなく、戻って来る気配もない。
怒らせてしまっているに違いない。
サー…っと血の気が引いたセリアをよそに、少ししたらアリルは戻ってきた。
「お待たせ」
「え…?」
見ると、アリルはお盆に乗せたティーポットとティーカップを持っている。
「アリル、それ…?」
「あぁ、ごめん。
勝手にキッチン借りたよ?
何か悩んでるみたいだから、温かい紅茶を飲めば、落ち着くかな?って思ってさ」
「怒って無い?呆れて無いの…?」
「いや?何で怒るのさ?」
「…!そっか、良かったぁ…!」
泣き腫らした目で、心底安心した様に笑う。
漸く笑った彼女に、アリルも安心して顔を綻ばせた。
「どうして、泣いたの?
ー…良かったら、教えてくれないか?」
2人で並んで座って、紅茶を飲む。
湯気が運ぶ香りを楽しみつつ、涙の訳を訪ねた。
決して深く立ち入るつもりは無いが、それでも敬愛する女王を心配する気持ちに嘘は吐けない。
…果たして本当に、それが『敬愛する女王への心配』なのか自分でも怪しく思う。
ーー…もしかしたら。
他の連中よりも一歩近くにいるのであろう優越感から気になっているだけかもしれない。
「…わ、笑わない?」
当の本人は漸く落ち着き、改めて泣き出した事が恥ずかしかったのか頬を紅潮させモジモジしている。
(可愛いな…)
こうやって、幾度かの逢瀬を重ねる事によって、より裸に近い女王の素顔を見ていた。
そこには、昼間の彼女には無い幼さがある。
年相応の少女の表情を見ると可愛らしくて仕方がない。
「笑わないよ。笑うわけ無いじゃないか」
本心からの言葉を紡ぐ。
勿論、そこには嘘は無かった。
「ホント?
良かった!実はね…」
アリルの優しさに委ね、セリアは胸中を吐露した。
友人が今までいなかった事。
オシャレな私服を持っていなくて、満月の夜のお出かけに行く時にアリルに申し訳ない事。
何よりアリルが、シンプルなのにオシャレな事!!
最後を、特に力説して語るセリアに流石のアリルも崩れ落ちた。
「笑わないって言ったじゃない!!」
笑いを堪える所か、崩れ落ちて爆笑するアリルに顔を真っ赤にし憤慨する。
「ご、ごめ…!そんなつもりじゃ…!」
さっきまで兎の様に目を真っ赤にしていたのに、今は顔を真っ赤にしている。
こんなに表情をコロコロと変える娘だったんだなと、アリルは目を細めた。
「ははは、…あぁごめん。
決してバカにしたとかじゃ無いから。
これはジャミルからの受け売りなんだけど」
コホン、と小さく咳払いをして改める。
セリアを見つめる瞳は、とても優しい。
「友達って、なろうと思ってなれるモノじゃなくて。
気付いた時には既になってるんだよ」
「…」
「ぼくもだけど、四大聖神はセリアの友達と思ってるよ。
リオン辺りは特にね?
ー…まぁ。表立って友人って名乗るのは難しいけど、気持ちの上ではそう思ってるんじゃ無いかな?」
「本当に?」
あぁ、勿論。と頷くアリルを見て、セリアの声は弾む。
「嬉しい…!」
「多分、レイチェルもそう思ってるんじゃ無いかな?」
「うふふ、ありがとうアリル!」
本当に、本当に嬉しそうに笑うから。
思わず抱き寄せ、「きゃ」と小さく上げる声に引き寄せられる様に。
涙の痕に「ちゅ、」と小さく口付けをした。
ー…してしまった。
「「ー…」」
言葉は無いが、2人とも口をぽかんと開け、目を見開いて固まっている。
「ー…ご、ごめん!!
そんなつもりじゃ無くて!!」
軽々しく女王を抱き締めて、目尻とはいえ口付けしたなんて!!
状況が飲み込み切れないのか、未だボンヤリした表情のセリアに対し、事の重大さに顔を蒼白させるアリル。
「ぇと、これは…別に良いんだけど、」
セリアはボンヤリしながらも、少しずつ言葉を紡ぐ。
「前もそうだけど、アリルって誰にでも簡単にこういう…。
…その、キスとかする…の?」
「いやいやいや!!
そんな事は無い!!
そんな軽薄な男じゃ…ない…はず」
セリアに必死に否定し、盛大に頭を振るが。
「軽薄な男じゃ無い」には自信が失われたのか、語尾がシオシオとトーンダウンして行く。
それはもう、切ない程に。
「誰にでも、簡単にとかは無いよ。
どうでも良い相手には触りもしないよ」
「…え…」
「セ、セリアが…。
余りにも可愛かったし。
泣いてたから、…その、元気付けたかったし…」
「…アリル…」
抱き寄せた体は、幾ら離れたとはいえ同じソファに座っているから。
まだ近くにいる。
視線は再び絡まれば、言葉も不要になる。
「げ、元気出たわ…」
沈黙に耐えられず、視線を反らしながら苦し紛れに声を出す。
「うん…。
セリアは、どんな服を着ていても…。
ー…可愛いよ」
逃げ腰な手を取ると、優しく引き寄せると。
優しく、甘くキスをした。
***
「今回は、満月見られなかったわね」
カチャリ、とテラスの戸を開け外に出る。
少ししてからアリルが続く。
「うん。
また、次の機会だね」
テラスの手すりにもたれたセリアの隣に、同じ様にもたれるアリル。
「…」
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
ふと、視線をアリルに投げていたが、問われパッとはぐらかす。
(何とも思わない人には触らないって言ってたし、キス…されてるって言う事は…)
悶々と考えるも、自分で「キス」と言う単語を脳内に浮かべると自動的に先程のキスを思い出し瞬間湯沸し器の如く頭が沸騰しそうになる。
(キス…!
そうよ、私、さっきキスしたのよね…!
アリルと…!!)
叫びそうになる衝動を必死に抑え、冷静を装う。
そう。
人生初のキスを、隣に立つアリルとしてしまった。
自分の事を友達とも言ってくれた、優しい彼。
「友達…」
「うん?」
「えへへ。私、アリルとお友達なんだなぁって!」
嬉しそうに、照れ臭そうに笑いながら応えるセリアを見て(参ったなぁ…)と考える。
決して、軽い気持ちでキスをした訳では無い。
が、何と言うべきか。
後すこしで、引き戻れなくなりそうな気がしてならなかった。
昼間の毅然とした凛々しき女王。
夜の帳が隠す、幼さの残る彼女。
どちらも同じセリアだ。
だが、昼夜では『守りたい』の意味合いが変わるのだ。
昼間は忠臣として守るべき主君。
夜は男として守りたい子。
無論自分にはティニアがいる。
セリアに男として接する訳にはいかない。
そんな事は承知しているが、それでも同じ時を過ごす程に、もっと奥深くまで触れてしまいたくなる。
(重症だな…。
ぼくは、人間では無いのに。
何を考えているんだ…)
本来なら、触れる事など許されない身分なのに。
緩く頭を振り、変な考えを追い払う。
「…あのさぁ」
「きゃ!」
不意に、アリルがセリアの小さな鼻を摘まむ。
予期しない攻撃に、思わず目を瞑る。
「な、何よぅ!」
解放された鼻を両手で覆いながら、精一杯の抗議をする。
「何で、そんな可愛いんだよ」
「…へ」
「…!!」
思わずポロリと溢れた本音。
口に出してしまったと自覚した瞬間、今度はアリルが爆発的に赤面した。
口を手で覆い、己の間抜けさを呪う。
「も、もう今日は帰る!」
何かもう、色々ボロボロ過ぎる!
そんな思いを吐き出す様に叫ぶ。
「そ、そうね。もう夜も遅いものね」
セリア自身も、思う所があるのかアリルの意見に同意した。
「ー…じゃあ、また次の満月に」
「今日は、お話を聞いてくれてありがとう。
気をつけて、帰ってね?」
「お休み、セリア」
「お休みなさい、アリル」
挨拶を交わし、アリルは帰途の術を唱えた。
キラキラと光の粒を霧散させ、姿を消す。
(ー…帰っちゃった…)
そりゃ、ここに住んでいる訳では無いから、時間が来れば帰るのは分かっている。
でも、あの甘い時間を共に過ごしたのが嘘みたいに帰ってしまった。
短く息を吐くと、セリアは部屋に入る。
変に意識しない様に、「友達」として恥にならない様に頑張ろう。
まずは、そこからだ。
ー…一方。
アリルの夜は、まだ終わりそうに無かった。
***
「ー…帰って来ちゃったな…」
天界の結界を潜り、時間がら閑散とした通りを歩く。
通りを一本入り、誰もいない事を確認すると、その場に座り込んだ。
本来の目的ー…満月を愛でに湖畔へ行く…ーを無視して女王の部屋で時を過ごした。
それも…。
何も色を知らぬ少女に、2回もキスをしてしまった…!!
「こんな事して良いのかなぁ…」
右手で前髪をかき上げながらボヤく。
いや男としても大人としてもダメだよなぁ。と独り言を加えながらヨロヨロと立ち上がる。
「もう、帰って寝よう…」
脳裏には、様々なセリアの表情を思い起こす。
怒った顔、泣いた顔、驚いた顔、笑った顔、照れた顔。
全て、自分だけに向けられた顔だ。
大切で、守らなければならない方。
可愛くて、ずっと傍にいたい子。
ふわふわに柔らかくて。
そっと触れなければ壊してしまいそうだった。
それを考えただけで、アリルの胸の奥はチリチリと甘く痛んだ。
少し離れただけなのに、もう会いたい。
今まで、こんな気持ちになった事など無かった。
ー…この気持ちは何と言うのだろう。
また近い内に彼女にはエリュージャル王城で会う。
その時は、女王と臣下だ。
こんな惚けた考えなど隠さないといけない。
そうでなければ、絶対にボロが出る。
自律と言う名の箱に閉じ込めた、感情を出せるのは満月の夜だけだ。
そう結論付け、1つ頷くとスッと踵を返し帰路についた。
「よぅ。お帰り、色男」
突如、背後から投げ掛けられた声に、文字通り跳ねた。
「…ヴ、ヴェスパさま…!」
「“なんでココに?”って、モロに顏に書いてあるぞ?アリル」
心底楽しそうに、ヴェスパはアリルの様子を探る。
(先程迄、確かに誰の気配も無かった筈…!なのに、何故…!?)
「い、いつの間に…?」
「あん?別に良いだろ?いつでもよ。余程楽しい一時を過ごしたみたいだな?…ナニしてたんだ?下界で」
「…ナニ…って。今宵は満月です。それをガディル湖まで、見に行ったまでですが…」
「…女王と、か?」
「―…!」
ヴェスパの一言で、アリルは自身の魂が凍りつくのを感じた。
(どうしてそれを…!)
「どうした?顔色が悪いな?」
「…ぅ…。
…い、え、…べつに…。
…陛下とはお会いしていませんが…?
何を急に…」
苦し紛れに、呻き声に近い返事しか出ない。
ヴェスパ神には、恐らく誤魔化しは通じない。
寧ろ、バレバレだろう。それだけアリルの表情は、全てを物語っていた。
「…ふん。まぁ、良い。
オレは眠いし、そこまで暇じゃねぇんだよ」
暫しの沈黙の後、ふいに興醒めしたかの様な口調でアリルから視線を外す。
いつしか、夜が明け始めたのか、辺りが純白の光を孕む。
「女王の護衛も良いが、ティニアも構ってやれよ?寂しがってるぞ?」
「…心得ております(…やはりバレていたか…)」
ヴェスパが帰城する気配を感じ、やや安堵の息を吐く。
先程の回答も、ただの茶番でしか無かったらしい。
自身の部下の滑稽な姿を垣間見て、呆れて言葉も出なかったか。
「じゃあな、アリル。お前も早く休め」
「ありがとうございます。
ー…お言葉に甘え、早々に帰城したく思います」
深々と一礼するアリルの脇を通り抜ける筈が、何故かアリルの眼前で足を止める。
「…?ヴェスパさま…?」
「あぁ、そうそう。
言い忘れていた」
「はい?」
不思議そうに首を傾げるアリルの肩をポンッと叩き、耳元で告げる。
「お前も、あの娘も、常に俺に“見られている”事を忘れるなよ…?」
「―…!!」
千里眼を持つ創世神は、常に万物を見通す力を持つ。
その為、エリュージャル王国に異変があれば、すぐに四大聖神を派遣し対応させるのだ。
当然、アリルとセリアのやり取りも見ていた事になるのだ。
何故、気付かなかった…!と心中で激しく舌打ちするも、既に後の祭だ。
それだけ、自分が浮かれていた証拠だ。
「ヴェスパさま…」
誤解だ、と救いを求める声で主君を呼ぶも、ヴェスパはどす黒い笑みだけ残し、既に歩いていた。
(―…ダメだ、ダメだ!
もう、こんな事は続けてはいけない。
彼女を護る為にも、もうあんな行為は慎まなくては…)
何故か、そう決め込んだ途端に胸中に寂しさが溢れる。
ただ「以前の様に」戻るだけだ。
たかだかほんの数回、仕事以外であっただけ、なのに。
先刻のやり取り、セリアの笑顔、怒った顏、泣きそうな顏、そして―…。
「ダメだ。諦めろ。所詮、ぼくは神族だ。人間とは深く関わってはダメなんだ…!」
未練がましい想いを振り払う様に頭を振る。
(なんだ、この感情は…)
今まで感じた事の無い、ジリジリと焼き付く様な焦燥感に、アリルは苛立ちを隠せなかった。
それと同時に、セリア個人に対する感情を、厚い扉の奥に閉じ込め、硬く施錠を施していた。
再び顏を上げた時、もはや迷いは微塵も存在しなかった―…。
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