ちいさな恋のうた。

春瀬さくら

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第一章*はつこい*

時は満ちて②

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―くぅう…。





それまでの甘い雰囲気が、一瞬で粉砕された。


アリルの目は点と化し、セリアの顔は赤から青に変化した。




そう。




音の出所は、彼女のお腹からだったのだ。




くぅう…。


「「………」」


静寂の湖畔に静かに鳴り響く。
他に音が無いせいか、無情にも余計に鳴り響いた。

異口同音とは、この事かと言うべきか。

もっとも、その場に立つ二人は何も言葉を発していない。


正確には、「口を開けたものの言葉が出なかった」のだが。



「…っく。くくく…」


先に沈黙を破ったのはアリルだった。


堪えきれない笑い声を遂に我慢しきれずに吹き出した。



「ちょっ…!



アリル神っ!酷いじゃないのっ!


笑うなんて…!」


続いてセリアも、堪り兼ねて抗議の声を上げる。
只でさえ、年頃の少女が異性の前で腹の虫を鳴らすなど、耐え難い羞恥だ。

しかも、幾ら恋人同士では無いとはいえ、あの雰囲気で、だ。
少し位、察してくれても良い筈なのに…!


恥ずかしさで消えてしまいたい。
赤面で睨み付けるセリアに対し、アリルもまた違う意味で赤面していた。


「はっ、あはははははっ!!

ゴメッ、ごめんごめんっ」


尚も笑うアリルだが、さすがに暫しの後、笑い声を押さえた。


「もうっ!酷いじゃない!」


「ごめんごめんっ。

いや、陛下のお腹にも、腹の虫がいらしたとは…」


「当たり前じゃない…!

それに、今日は忙しくて夕飯食べれなかったし…」


恥ずかしさと、アリルに大笑いされたショックでしょんぼり肩を落とすセリア。
年頃の少女からすれば、こんな失態を犯したのだ。
無理もない。


「ははは、でも、やっぱりと言うべきかな?とても可愛らしい声音の虫だね?」


「…それ、弁解してるつもりなの?」


アリルの言葉は、どうせ苦し紛れのフォローなんだろうとジロリと睨む。

睨まれても、凄味よりも愛らしさが勝ってしまうのかアリルは未だニコニコと機嫌が良い。


「いやいや、ホントだよ?ぼくなんか、もっと鈍い音だし、響くからね?」


「…アリル神も、お腹がなるの?」


「おいおい、ぼくたちは幾ら神族とはいえ、身体の構造は人間と一緒なんだぞ?

腹の虫位、鳴るさ。

…酷いな~」


「あっ、そ…、そうよね。…ごめんなさいっ」



ワザとらしく額に手を当て嘆くアリルに、律儀に謝るセリア。


「ふふっ。


…なら。

お詫びの印…って訳で、コレを受け取って下さいませんか?」


さして傷付いた様子も無く、アリルは小さな包みを手渡した。

それは、まだホンノリ暖かかった。


「…これ、は?」


「…ぼく、さ。

考え事したい時や、仕事が煮詰まった時に気分転換を兼ねて料理やお菓子を作るんだ。

…夕方、ちょっと煮詰まっててね。

作ったんだよ。
陛下の…セリアの口に合うかわかんないけど、良かったら食べてよ?」


「あ、ありがとう…」


差し出された包みを両手で落とさぬ様に受け取り、そっと顔を近付ける。
どうやら、中はクッキーの様だ。


「良い香り…。
アリル神って、料理上手なのね」


「あの、さ」


クッキーの香りを楽しむセリアに、徐に話すアリル。

「?」と小首を傾げる彼女に、やや照れた様な表情で続けた。


「せめて、ふたりだけの時ぐらいは敬称や敬語を止めないか?
折角なんだし…。

それに、このままだと仕事の気分が抜けないんだよね…」


意外過ぎるアリルの言葉を聞き、パチクリと瞬きする。


が、無論異存も無いので、すぐに快諾した。


「美味しいっ」


差し出された焼き菓子を一口頬張るなり、出た言葉。


サックリしている癖に、後味はふんわり甘い。


それでいて、パサパサして無くどことなくシットリしている。


「ど…どうやって作ったの?これ…」


今まで食べた、どんなお菓子よりも美味しかった。


「どうっ…て。
別に、普通に作っただけだよ?」


「うそっ!普通に作って、こんなに美味しく出来ないわよ!…わたしが焼いたらこんなにサクサクしてないもん…」



「…セリア。もしかして牛乳とバターを少なくしてない?」



「…何でわかったの?」


「や、何と無くだけど」


「固めの焼き菓子が好きだから、なるべく水分を抜いてるの」


「……多分、それだね」


はは、と、やや乾いた笑いを浮かべる。

反対にセリアは、むぅ、と口を尖らせる。


「…アリルは顔もカッコいいし、頭も良いし強いし。

…料理まで出来ちゃったら、無敵じゃない…!」


「無敵って…。
別にそれ程、大した事は無いよ?」



「…大した事、あるもんっ」


(…もしかして、拗ねてる?)


いつもの、凛と前を向いている彼女が、今は座り込み口を尖らせている。

見た事の無い、子供染みた仕草に、思わず笑みが零れた。


「ふふっ」


「あーっ!また笑ってるっ!」


またしても笑われるのかと、抗議の声をあげる。

が、今回は小馬鹿にした笑い声ではなく、月の光の如く柔らかい笑みだった。







「ー…っ!」


至近距離でアリルの美麗な笑みを見つめてしまい、目を反らすしか無かった。

さながら、ボンッと音を立て爆発でもしたかの様な赤面具合だ。


「…どうした?」


「な、何でもない…」


早鐘の心臓をなだめようにも、どうにも言う事を聞かない。ドキドキが落ち着かない。


(あ、あんなカオ…!ズルい…!)


セリアがアリルの笑顔に悩殺されているのを、知ってか知らずか。
当の本人が徐に口を開く。


「…いつか」


「え?」


不意に紡がれた言葉は、穏やかな風と共にセリアの耳に届き、心地良い温度で溶けて行く。


「いつか機会があったら、ぼくが料理を教えてあげるよ」


「ホント?」


「うん。

…まぁ、流石に二人きりって言うのは難しいけど…ね?」


「ありがとう!嬉しいな…」


「セリア、いつも頑張ってるからね?ご褒美。

…ね?約束っ」


言いながら、すっと左の小指を差し出した。


「うんっ!約束ね?」


そして、セリアも自身の左の小指を差し出し、アリルのそれに絡める。


種族は違えど、誰もが使う、子供の頃からの約束の魔法。


互いに照れながらも、約束の儀を行った。


「…ちゃんと、仕事もするんだよ?」


「わかってるわよ?

…あっ、アリルってオムライスポムタは作れる?」



オムライスポムタは、ぼくの侍女が得意で、彼女から伝授して貰ってるからね?お手の物だよ」


「あのね、あのね?わたし、オムライスポムタが大好きなの!…今度、作って欲しいなぁ…」


「ふふっ、陛下直々にオネダリされたら拒否は出来ないな?」


「ありがとう!やったぁ!」


本当に嬉しそうに、ピョンピョンと飛び跳ねる。


(…可愛いなぁ)


そんな彼女の様子を、穏やかな気持ちで目を細め見つめていた。



*** 


「さて、もう遅いし、そろそろ帰ろうか?

明日も早いしね」


気が付けば深夜。


湖畔に着いた時に見た時よりも、月は傾いていた。


「ぁ…。そ、そう、ね…」


言われて、それまで頭の隅に追いやっていた明日の予定が復活した。


朝礼、午前の謁見の後は、昼を挟み終日会議だ。

因みに、この会議はエリュージャル人のみで行うので、当然アリル達はいない。


「…アリルは、明日も忙しいの?」


「明日は、朝から創世神ヴェスパさまに、ご会見頂く。

その後は、我らがヴァリス家の軍と会議かな?

あぁ、夕方は、ジャミルと稽古をするんだった。



ー…まぁ、明日は比較的、のんびり出来るかな?」


(…のんびり、って言うの?それ…)


余りのんびり出来そうな雰囲気では無いのでは、と心の中で突っ込みを入れるも、無論口には出さず。


…きっと、言わないだけで様々な大小の仕事がある。


それは自分も同じ身ではあるが。


「アリル、今日はホントにありがとう!

楽しかったわ。

…忙しいのに、時間を作ってくれてありがとうね?」




「それは、お互い様だろ?

ぼくも楽しかったし、満月はキレイだし。

文句なんか、無いよ」


改めて月を見上げれば、今にも零れそうな艶やかで儚げな光を湛えていた。


そして、それは何だか自分を現しているかの様で。


「…今日の月は、まるでセリアみたいだね」


「…え?」


何だか、考えていた事が見透かされた様で、思わずドキリとする。


「とても気高く美しい。

それでいて、…どこか寂しそうだ」


「さみし、そう?」


「うん。…それが、ぼくから見たセリアかな?」


「…アリル…」


思いもよらなかった言葉を聞くも、それに対する良い返事が思い浮かばず、ただただアリルを見つめる事しか出来ない。


「セリアがいつも気丈に頑張っているのは知っている。
そしてそれは、ぼくを含めて周りが望んでいる事だ。

…でも、きみはまだ17才なんだよな…」


「ア、リル?」


自分を見つめる真摯な瞳。
今、目の前にいる彼は…。

水神ヴァリスであって、水神ヴァリスでは無い。

セリアは、跳ねる鼓動を抑える事も出来ず、目も話を逸らす事も出来なかった。

無論、逸らして良い内容では無い事も承知の上だ。


「本当は、もう少しのんびりさせてあげたいんだけどね?

いつも厳しくしてばかりで…。

…ゴメンね…」


「い、良いのよ!

気にしないで?
アリルがやってくれている事は、正しいと思うもの。

…何より、私を信じて着いて来てくれている人達の為にも、1日でも早く立派な女王になりたいと思っているの。

だから、辛くも無いし、大丈夫!
…ありがと。

アリルがそう言ってくれただけで、嬉しいわ?」


屈託の無い笑みと共に、そう告げる。


それを聞き、アリルもどこか安心した様子だ。


「それじゃ、帰りましょ?」


「そうだね。

きみの従順なる部下を心配させては申し訳ないしな?」


アリルのその一言で、思わず泣きそうになる。
心配させて申し訳ない気持ちは、十二分にあるのだから。


「レイチェル…。まだ起きてるかしら…」


「うーん…。

会えたら、謝らないとな。


さっきは言い過ぎたし…」


「レイチェルなら、話せばわかってくれるわよ」


「だと良いけど…。
あぁ。

セリア、ほら」


「あっ…。


えっ…良い、の?」


「夜道は危ないからね?気をつけて」


差し出された手に自らの手を重ねる。


ごく自然な流れで、互いの指を絡めて手を繋ぐ。


繋いだ指先から彼の体温に触れ、ドキドキが止まらない。

成人男性の体温は、比較的低いものだと認識していたセリアは、予想外に温かい彼の手は、まるで彼そのものの様に思えた。


(なんだろ、この感じ…)


ずっとこうしていたい。


不意に胸に沸いた感情が、上手く飲み込めずにいた。

ややもすれば赤面し、挙動不審になりかねないので、それを回避するべくアリルの顔を見つめる。


前を真っ直ぐに見つめる双眸。



だが、何故かアリルも頬が僅かに紅潮していた。





(?なんで…?)






「アリル?顔…、赤いけど。…どうかしたの?」



先程まで、そんな素振りは無かったのが不思議に思うくらい、アリルの顔は赤かった。



「まさか、風邪?大丈夫??」


具合が悪いのに、自分に付き合ってくれたのかと、泣きそうな勢いで食って掛かる。


そんなセリアを制止するのでアリルは精一杯だ。





「ちがっ…!


違うよ!その…。

ぼくだって緊張するんだよ。
セリアと二人きりで手を繋ぐなんて…。

さっきから心臓がキドキして止まらないんだよっ」




「…へ…」




全く予想だにしなかった返事に、マトモな返事が出来ない。


慌てて、口元を手で押さえる。


何だか恥ずかしい反面、嬉しかった。
いつも、余裕があって動揺する事なんか無い彼なのに、自分と手を繋いで緊張するなど…!



「うふふ、何だか嬉しいな。
アリルが私と同じ気持ちなんて」


「…何か、照れるね」


互いを見る視線も、どこか照れ臭さが含まれているかの様でくすぐったかった。


そうこうしながら、来た道をそのまま戻り、程無くして城に着く。



「…帰りは早いのよねぇ…」


「ま、楽しい事は早く過ぎるものだしね?」


「うん…」




衛兵の監視をくぐり抜け、自室に辿り着くと、窓辺から外を見つめる人影に気付く。



「レイチェル…!」


「お帰りなさいませ。セリアさま、アリルさま。

ご無事で何よりです」


「遅くなってゴメンなさい。
今まで待っててくれたの?」

「セリアさまにお仕えする事こそ、このレイチェルにとって、掛け替えの無い大切なお役目。

お帰りを待つのも苦ではございません」


「レイチェル。

さっきはすまなかった。

きつく言い過ぎてしまったね?」


「とんでもございません…!

アリルさまに、有らぬ疑いをかけてしまった私が悪いのですから。

どうぞお気になさらないで下さいませ」



「ありがとう、レイチェル」


「…それより、夜風はお身体に障ります。

すぐに温かいお茶をご用意しますわね?」


楚々と立ち上がり、お茶の準備をしようとしているレイチェルを、慌てて制止する。


「あぁ、すまない。


レイチェル。ぼくはもう帰るよ。

もう遅いし、陛下は明日も早いからね?」


「あら、さようでございますか?
折角だし、ゆっくりなされば宜しいではありませんか」


「…(もう少し、って我が儘は言っちゃダメよね…)」


アリルとレイチェルのやりとりを、ぼんやりと見つめながら、考える。

自分が引き止めれば、それが恐らく鶴の一声と化すのは想像に難しくない。



だから、何も言えなかった。




「レイチェル、私が散々連れ回したせいでアリル神もお疲れだわ。
余りご無理を言ってはダメよ」



「そう、ですわね…。

アリルさま、重ね重ね申し訳ございません」


「いや、大丈夫。

陛下、お優しい心遣いをありがとうございます。
本日は、お言葉に甘えて、お暇させて頂きますね?」


「ええ。
本当に、ありがとう。
気を付けて帰ってね?」





…こうして、アリルとセリアの短くて長い夜は終わった。

***


「…ふぅ…」


天界の結界を潜り抜け、天兵の目の届かない場所まで行き着くと、漸くアリルは大きく息を吐き出した。


短い時間ながら、女王の素顔に触れられた。
自身の素顔も晒した。


あの場では、ごく普通の友人の様で、あの空間が酷く心地よかったのも事実だ。


知らずに口角が上がり、笑みが零れる。




「ふふ…っ(マズい、顏がニヤける…!)」



平時では、顏の締まりが無くならない様に気を付けねば…などと考えていた。

さて。
人に見つかる前に、早々に帰城しよう。
少しだけ仮眠を取ったら、セリアに話した通りの予定をこなそう。
これで自分が府抜けていたら。

彼女は自分を責めるかもしれないし、あの楽しい時間は無くなってしまうだろう。
何より、他の四大聖神に変に思われてしまう。


「あの子はもう寝たのかな…」


ポツリ、それだけ呟くと、ノロノロと居城へ向かい歩き始めるアリルであった。
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