9 / 51
13番目の苔王子に嫁いだらめっちゃ幸せになりました 【side A】
9 お城のお金ってどうなっているの?
しおりを挟む
朝食後、新しい使用人を募集する為の詳細をバートンと一緒に練っていった。
確認するところ、やはり常駐するメイドはデイジー一人だし、コックはあのイケメン一人だった。
庭師はデイジーの父親トムと、話す事のできないオリバーのみ。
それはオリバーが喋れなくて不憫だから…という理由で雇ったらしいのだが。
そこで
(あら?…コレットってどこにいるのかしら?)
とちらりと思ったが、
(まあいいわ、あとで聞きましょう)
と質問する機会を失ってしまった。
後は必要な時など期間限定で雇ったり、ボランティアを募ったりして街や近隣に民に手を借りながら、屋敷の管理に務めていたらしい。
(うーん。この広大な屋敷の管理をするには…)
わたしは
「最低あとメイドは十人、事務員を三人、庭師も五人、厨房も三人は雇ってほしいわ」
とバートンに頼んだ。
「仕事をルーティンでもきちんとこなせる人間を雇うよにね」とも伝える。
忠誠心も大事だが、今はお給金に見合った仕事をきちんと遂行できる人間が必要だ。
(全ての人間がデイジーやバートンの様に無償の精神で働ける人ばかりではないのよね)
募集要項の詳細をバートンと決めると、厨房のコックの選抜はイケメンに任せた方が良いだろうという事になった。
あとで厨房へ行き、コックに相談しようということになった。
わたしは薄暗い灯りの食堂の椅子に座った。
「じゃあ、次は帳簿を確認させて頂くわね」
「……こちらでございます」
わたしが帳簿のチェックを始めようとすると、何故かバートンの言葉に元気がない。
忠臣バートンの態度が気になりつつも積み重なった帳簿の書類の束を開く。
わたしがここ数年の帳簿の収支を確認したところ、すぐに気になる項目が出てきた。
城から直接出される支出には不審な点は見当たらない。
(人件費、食費、施設の管理費、光熱費諸々…城の人間が直接払って使うお金の事である)
けれど
(あら…どういう事?これ…)
多額の収入とともに差っ引かれる(支出金の一部ではあるが)経費とやらが正体不明である。
「この莫大な『経費』って…誰が管理してるの?」
王宮から運ばれるお金や貴金属の中からも含めた収入の中から、経費という形で金品や宝石が別に引かれている。
(これ、ピンハネされているじゃないの)
「――書類をもう一度見せてください」
書面を確認するとなんとこの経費だけは別に担当がいて、なんとお金に汚くて有名な貴族の役人ではないか。
そのやり口のえげつなさもわたしはお父様から聞いて知っている。
発覚すれば大変な、詐欺紛いの事もやっているらしい。
書類を再度見直した途端わたしは怒りがこみ上げて来て、思わず椅子から立ち上った。
ピンハネが始まったのは何と十年も前から――丁度ジョシュア様のお母様がお亡くなりになってからだった。
書類の細かい処までは少年のジョシュア様には、分からなかったのだろう。
十三歳の少年が悲しみに沈んでいるのをいいことに上手く丸め込んだに違いない。
バートンは後で気が付いたのだろう。
――この王宮からの送金の金額の不当性を。
+++++++++++++++++
「この事、ジョシュア様は知って…」
バートンは更に項垂れてしまった。
「――――いるのね…」
「どうしようもないのです」
ジョシュア様にはもう後ろ立ては無く、継承権も無きに等しい。
抗議は何度か最初のうちは貴族本人や王宮にもしていた。
書面による抗議も行った。
しかし何故か、すべてその途中で有耶無耶になってしまう。
ジョシュア様もバートンも悟った。
利用価値のない第十三王子の為に、誰がその貴族に対抗するべく、骨を折るというのか。
母が既に亡くなった後、母方の縁者の貴族に連絡を取ったが時すでに遅し、没落し離散状態であった。
王宮にも、身内にも頼れる味方は居ない――身を以て知った。
「…分かったわ。…わたしにその件は預けてくれる?」
わたしはバートンに頼んで、ここ十年の王宮からの様々な支度金や生活保証金に関する書類をかき集めるように頼んだ。
それからヘイストン侯爵家に遣いを送る準備も。
+++++++++++++++++++++
「さて、…後は税金対策とこの城の産業ね……」
一つは昨日の時点で考えている。
そう――トリュフである。
希少価値の高い――金と同様に取引されるものだから、ある程度は城の財政を潤してくれるに違いない。
(ただ季節や自然のものだから、確実性が無いのよね…)
腕を組みうーんうーんと考えていると、バートンが
「奥様…。少し休憩なさっては…」
と声をかけてくれた。
「そうね…」
「それでは、お茶の支度を…」
バートンが言いかけたのと同時にわたしは立ち上がっていた。
「それじゃあ、気分転換に…」
「――お城を探検させて頂戴♡」
確認するところ、やはり常駐するメイドはデイジー一人だし、コックはあのイケメン一人だった。
庭師はデイジーの父親トムと、話す事のできないオリバーのみ。
それはオリバーが喋れなくて不憫だから…という理由で雇ったらしいのだが。
そこで
(あら?…コレットってどこにいるのかしら?)
とちらりと思ったが、
(まあいいわ、あとで聞きましょう)
と質問する機会を失ってしまった。
後は必要な時など期間限定で雇ったり、ボランティアを募ったりして街や近隣に民に手を借りながら、屋敷の管理に務めていたらしい。
(うーん。この広大な屋敷の管理をするには…)
わたしは
「最低あとメイドは十人、事務員を三人、庭師も五人、厨房も三人は雇ってほしいわ」
とバートンに頼んだ。
「仕事をルーティンでもきちんとこなせる人間を雇うよにね」とも伝える。
忠誠心も大事だが、今はお給金に見合った仕事をきちんと遂行できる人間が必要だ。
(全ての人間がデイジーやバートンの様に無償の精神で働ける人ばかりではないのよね)
募集要項の詳細をバートンと決めると、厨房のコックの選抜はイケメンに任せた方が良いだろうという事になった。
あとで厨房へ行き、コックに相談しようということになった。
わたしは薄暗い灯りの食堂の椅子に座った。
「じゃあ、次は帳簿を確認させて頂くわね」
「……こちらでございます」
わたしが帳簿のチェックを始めようとすると、何故かバートンの言葉に元気がない。
忠臣バートンの態度が気になりつつも積み重なった帳簿の書類の束を開く。
わたしがここ数年の帳簿の収支を確認したところ、すぐに気になる項目が出てきた。
城から直接出される支出には不審な点は見当たらない。
(人件費、食費、施設の管理費、光熱費諸々…城の人間が直接払って使うお金の事である)
けれど
(あら…どういう事?これ…)
多額の収入とともに差っ引かれる(支出金の一部ではあるが)経費とやらが正体不明である。
「この莫大な『経費』って…誰が管理してるの?」
王宮から運ばれるお金や貴金属の中からも含めた収入の中から、経費という形で金品や宝石が別に引かれている。
(これ、ピンハネされているじゃないの)
「――書類をもう一度見せてください」
書面を確認するとなんとこの経費だけは別に担当がいて、なんとお金に汚くて有名な貴族の役人ではないか。
そのやり口のえげつなさもわたしはお父様から聞いて知っている。
発覚すれば大変な、詐欺紛いの事もやっているらしい。
書類を再度見直した途端わたしは怒りがこみ上げて来て、思わず椅子から立ち上った。
ピンハネが始まったのは何と十年も前から――丁度ジョシュア様のお母様がお亡くなりになってからだった。
書類の細かい処までは少年のジョシュア様には、分からなかったのだろう。
十三歳の少年が悲しみに沈んでいるのをいいことに上手く丸め込んだに違いない。
バートンは後で気が付いたのだろう。
――この王宮からの送金の金額の不当性を。
+++++++++++++++++
「この事、ジョシュア様は知って…」
バートンは更に項垂れてしまった。
「――――いるのね…」
「どうしようもないのです」
ジョシュア様にはもう後ろ立ては無く、継承権も無きに等しい。
抗議は何度か最初のうちは貴族本人や王宮にもしていた。
書面による抗議も行った。
しかし何故か、すべてその途中で有耶無耶になってしまう。
ジョシュア様もバートンも悟った。
利用価値のない第十三王子の為に、誰がその貴族に対抗するべく、骨を折るというのか。
母が既に亡くなった後、母方の縁者の貴族に連絡を取ったが時すでに遅し、没落し離散状態であった。
王宮にも、身内にも頼れる味方は居ない――身を以て知った。
「…分かったわ。…わたしにその件は預けてくれる?」
わたしはバートンに頼んで、ここ十年の王宮からの様々な支度金や生活保証金に関する書類をかき集めるように頼んだ。
それからヘイストン侯爵家に遣いを送る準備も。
+++++++++++++++++++++
「さて、…後は税金対策とこの城の産業ね……」
一つは昨日の時点で考えている。
そう――トリュフである。
希少価値の高い――金と同様に取引されるものだから、ある程度は城の財政を潤してくれるに違いない。
(ただ季節や自然のものだから、確実性が無いのよね…)
腕を組みうーんうーんと考えていると、バートンが
「奥様…。少し休憩なさっては…」
と声をかけてくれた。
「そうね…」
「それでは、お茶の支度を…」
バートンが言いかけたのと同時にわたしは立ち上がっていた。
「それじゃあ、気分転換に…」
「――お城を探検させて頂戴♡」
1
お気に入りに追加
676
あなたにおすすめの小説
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる