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13番目の苔王子に嫁いだらめっちゃ幸せになりました 【side A】

9 お城のお金ってどうなっているの?

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 朝食後、新しい使用人を募集する為の詳細をバートンと一緒に練っていった。

 確認するところ、やはり常駐するメイドはデイジー一人だし、コックはあのイケメン一人だった。

 庭師はデイジーの父親トムと、話す事のできないオリバーのみ。

 それはオリバーが喋れなくて不憫だから…という理由で雇ったらしいのだが。

 そこで
 (あら?…コレットってどこにいるのかしら?)
 とちらりと思ったが、
(まあいいわ、あとで聞きましょう)
 と質問する機会を失ってしまった。


 後は必要な時など期間限定で雇ったり、ボランティアを募ったりして街や近隣に民に手を借りながら、屋敷の管理に務めていたらしい。

(うーん。この広大な屋敷の管理をするには…)

 わたしは
「最低あとメイドは十人、事務員を三人、庭師も五人、厨房も三人は雇ってほしいわ」
 とバートンに頼んだ。

「仕事をルーティンでもきちんとこなせる人間を雇うよにね」とも伝える。

 忠誠心も大事だが、今はお給金に見合った仕事をきちんと遂行できる人間が必要だ。

(全ての人間がデイジーやバートンの様に無償の精神で働ける人ばかりではないのよね)

 募集要項の詳細をバートンと決めると、厨房のコックの選抜はイケメンに任せた方が良いだろうという事になった。

 あとで厨房へ行き、コックに相談しようということになった。

 わたしは薄暗い灯りの食堂の椅子に座った。

「じゃあ、次は帳簿を確認させて頂くわね」

「……こちらでございます」

 わたしが帳簿のチェックを始めようとすると、何故かバートンの言葉に元気がない。
 忠臣バートンの態度が気になりつつも積み重なった帳簿の書類の束を開く。

 わたしがここ数年の帳簿の収支を確認したところ、すぐに気になる項目が出てきた。

 には不審な点は見当たらない。
(人件費、食費、施設の管理費、光熱費諸々…城の人間が直接払って使うお金の事である)

 けれど
 (あら…どういう事?これ…)

 多額の収入とともに差っ引かれる(支出金の一部ではあるが)とやらが正体不明である。

「この莫大な『経費』って…誰が管理してるの?」

 王宮から運ばれるお金や貴金属の中からも含めた収入の中から、経費という形で金品や宝石が別に引かれている。

(これ、じゃないの)

「――書類をもう一度見せてください」

 書面を確認するとなんとこの経費だけは別に担当がいて、なんとお金に汚くて有名な貴族の役人ではないか。

 そのやり口のえげつなさもわたしはお父様から聞いて知っている。
 発覚すれば大変な、詐欺紛いの事もやっているらしい。

 書類を再度見直した途端わたしは怒りがこみ上げて来て、思わず椅子から立ち上った。

 ピンハネが始まったのは何と十年も前から――丁度ジョシュア様のお母様がお亡くなりになってからだった。

 書類の細かい処までは少年のジョシュア様には、分からなかったのだろう。

 十三歳の少年が悲しみに沈んでいるのをいいことに上手く丸め込んだに違いない。

 バートンは後で気が付いたのだろう。
 
 ――この王宮からの送金の金額の不当性を。

 +++++++++++++++++

「この事、ジョシュア様は知って…」

 バートンは更に項垂れてしまった。
「――――いるのね…」

「どうしようもないのです」
 ジョシュア様にはもう後ろ立ては無く、継承権も無きに等しい。

 抗議は何度か最初のうちは貴族本人や王宮にもしていた。
 書面による抗議も行った。

 しかし何故か、すべてその途中で有耶無耶になってしまう。

 ジョシュア様もバートンも悟った。

 利用価値のない第十三王子の為に、誰がその貴族に対抗するべく、骨を折るというのか。

 母が既に亡くなった後、母方の縁者の貴族に連絡を取ったが時すでに遅し、没落し離散状態であった。

 王宮にも、身内にも頼れる味方は居ない――身を以て知った。

「…分かったわ。…わたしにその件は預けてくれる?」

 わたしはバートンに頼んで、ここ十年の王宮からの様々な支度金や生活保証金に関する書類をかき集めるように頼んだ。

 それからヘイストン侯爵家に遣いを送る準備も。

 +++++++++++++++++++++


「さて、…後は税金対策とこの城の産業ね……」

 一つは昨日の時点で考えている。

 そう――トリュフである。

 希少価値の高い――金と同様に取引されるものだから、ある程度は城の財政を潤してくれるに違いない。

(ただ季節や自然のものだから、確実性が無いのよね…)

 腕を組みうーんうーんと考えていると、バートンが
「奥様…。少し休憩なさっては…」
 と声をかけてくれた。

「そうね…」

「それでは、お茶の支度を…」
 バートンが言いかけたのと同時にわたしは立ち上がっていた。
「それじゃあ、気分転換に…」

「――お城を探検させて頂戴♡」

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