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13番目の苔王子に嫁いだらめっちゃ幸せになりました 【side A】
5 起きれない言い訳& おめかしディナー
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「…分かりました。では旦那様には夜お会いした時に、ご挨拶させていただく事にしますわ」
わたしの言葉にバートンは頷いた。
しかし一つ気がかりな事があった。これは是非伝えておかなければ。
「あの…わたくし、一度眠ってしまうと何があっても目が覚めないのです」
わたしはバートンに思い切って伝えた。
「なんと…起きないと…?」
「はい。ですから旦那様…ジョシュア様がいらしても目覚めないかもしれません」
「ええと、そうでございますか…」
バートンは複雑な顔をして頷いていた。
「ですから気張って起きる様には頑張りますが、もしかして眠ってしまいますと…ええと、ジョシュア様がいらしてもご挨拶出来ない可能性がある事をお伝えしていただきたくて。…あの、決して嫌とか悪気があるものではないのですが…」
「はい…わかりました。その様にご主人様にはお伝えしておきます」
そう言うと、デイジーと名乗ったメイドだけ残してバートンとオリバーは部屋を退出した。
「では奥様…とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「あ、ええ。わたしもデイジーと呼ばせてもらうわ」
デイジーは終始ニコニコしながら荷物の片づけを始めながら話をしていた。
自分が生まれた時からこの屋敷にいる事、母親がここでメイド長をしていた事、父親がいま庭師で同じ屋敷で働いている事等だ。
「そうなの…」
わたしは頷いたが、この大きな城をたった数人でなんとか管理している事が分かった。
(いやいや…大変というか、重労働じゃないの?)
侯爵家のお嬢様とはいえ、領地経営の勉強までしていたわたしだ。
この大きな城の管理に人件費や管理費が嵩むのはすぐに分かった。
だから従業員を減らしているのだろうが、これでは通常業務に支障がでるのでは?――と、不安になる。
「後で…そうね、夕食後でもいいわ。バートンとお話がしたいの」
「分かりました。伝えておきますね」
管理するために、多少持参金を使っても仕方がない。
この大きい城をこんな少人数で管理なんか出来っこないはずだ。
もし出来ていたとしたら――。
「街や村から定期的にボランティアがやってくるので手伝ってもらっています」
デイジーはわたしの髪を梳かして、金細工の髪留めを着けながら言った。
「とってもお綺麗です。アリシア様…」
「…ありがとう。デイジー」
夕食のテーブルに着く前に外出着から晩餐に相応しいドレスに着替えたのだ。
髪色に合わせた色調の淡いピンク色のシルクの生地に、繊細な蔦模様の金と銀糸の刺繍がしてあり、上品かつ華美にならない豪華さがあるお気に入りの一着である。
(わたしのストロベリーブロンドとグレーの瞳に合わせたものだしね)
わたしは、あまり直接綺麗と言われたことがないので、ちょっと気恥ずかしさがあったのだが。
「あまりいわれたことが無いから…恥ずかしいわ」
「ええー!?でもすっごくお綺麗ですよ?びっくりしましたもの。
こんなにお綺麗な方が沢山お金も持って嫁いで来られるなんて…」
わたしは思わず苦笑してしまった。
察するにどうやらデイジーは、結婚ができない位の不細工なお嬢様が持参金にモノを言わせて輿入れする、と思っていた様である。
わたしの隣にはいつも美しいシャルルがいたので、自分の容姿についてはすっかり諦めていたのだが。
(…もしかしてだけどイケてるんじゃないの?)
そう分かったのは、ここに着いて初めての嬉しい驚きでもあった。
しかし夕食の席に着いて――いや、食事の間に入る前からこんなに着飾ったことを後悔をしていた。
わたしの言葉にバートンは頷いた。
しかし一つ気がかりな事があった。これは是非伝えておかなければ。
「あの…わたくし、一度眠ってしまうと何があっても目が覚めないのです」
わたしはバートンに思い切って伝えた。
「なんと…起きないと…?」
「はい。ですから旦那様…ジョシュア様がいらしても目覚めないかもしれません」
「ええと、そうでございますか…」
バートンは複雑な顔をして頷いていた。
「ですから気張って起きる様には頑張りますが、もしかして眠ってしまいますと…ええと、ジョシュア様がいらしてもご挨拶出来ない可能性がある事をお伝えしていただきたくて。…あの、決して嫌とか悪気があるものではないのですが…」
「はい…わかりました。その様にご主人様にはお伝えしておきます」
そう言うと、デイジーと名乗ったメイドだけ残してバートンとオリバーは部屋を退出した。
「では奥様…とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「あ、ええ。わたしもデイジーと呼ばせてもらうわ」
デイジーは終始ニコニコしながら荷物の片づけを始めながら話をしていた。
自分が生まれた時からこの屋敷にいる事、母親がここでメイド長をしていた事、父親がいま庭師で同じ屋敷で働いている事等だ。
「そうなの…」
わたしは頷いたが、この大きな城をたった数人でなんとか管理している事が分かった。
(いやいや…大変というか、重労働じゃないの?)
侯爵家のお嬢様とはいえ、領地経営の勉強までしていたわたしだ。
この大きな城の管理に人件費や管理費が嵩むのはすぐに分かった。
だから従業員を減らしているのだろうが、これでは通常業務に支障がでるのでは?――と、不安になる。
「後で…そうね、夕食後でもいいわ。バートンとお話がしたいの」
「分かりました。伝えておきますね」
管理するために、多少持参金を使っても仕方がない。
この大きい城をこんな少人数で管理なんか出来っこないはずだ。
もし出来ていたとしたら――。
「街や村から定期的にボランティアがやってくるので手伝ってもらっています」
デイジーはわたしの髪を梳かして、金細工の髪留めを着けながら言った。
「とってもお綺麗です。アリシア様…」
「…ありがとう。デイジー」
夕食のテーブルに着く前に外出着から晩餐に相応しいドレスに着替えたのだ。
髪色に合わせた色調の淡いピンク色のシルクの生地に、繊細な蔦模様の金と銀糸の刺繍がしてあり、上品かつ華美にならない豪華さがあるお気に入りの一着である。
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わたしは、あまり直接綺麗と言われたことがないので、ちょっと気恥ずかしさがあったのだが。
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