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第12.5章 "隠された真実"と"真なる王"

運命の歯車、狂い出す

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 私は____死んでもいいって思っていた。

 けど、それは何も変えられなかった。


 ガーランドは変えようとして、私を産み落とし、育てた。ダーインスレイヴはそんな私を支えようとした。



 全部、点と線が繋がるように私の中で結びついた。ダーインスレイヴは知っていた。ガーランドも知っていた。だから何も言わなかったんだ。



 初代龍神は私が死んでも体を乗っ取る。
 初代龍神は私が生きても意識を縛る。

 契約者のラフェエルは必ず殺され、私が死んだら仲間も殺すという。



 なら。




 「………………嫌だ、欲張る」



 「アルティア様……………しかし、しきたりが……………」


 「しきたりなんてどうでもいい!………最初からうだうだ考える必要なんてなかった。ラフェーが死ぬとか、自分が死ぬとかそんなんばっかり!

 でも!それじゃ何も変わらない!

 そりゃ、どうすりゃいいかなんてわかんないよ!けど!


 ………………ダーインスレイヴが言ったこと、私もそう思う」




 「生きて、いれば…………?」



 フランは目を見開きながら呟くように言う。アルティアは自分の掌を見ながら頷く。




 「うん、私、行ってくる。行ってあの女に聞いてくる」



 「聞いて、変わる?」



 「わかんない。けど、…………私の物語、くだらないものならここで終わらせる」



 「………………おい」



 アルティアがそう言うと、平静を取り戻したラフェエルがやっと口を開いた。


 「何よ、止めても行くわよ」


 「……………お前だけじゃない。これは、私の物語でもあるんだ。

 死んでも、いいと思っていた。死ねばなにかが変わると思っていた。

 でも、そうでないのなら___私も聞くべきだ。そして………自分で、自分の生き方を決める」



 ラフェエルはそう言って私を見る。
 ……………同じことを考えてた。

 死んでもいいと思っていた。
 死ねばラフェエルが生きれると思っていた。

 だけど、そうでないのなら…………………



 「_____行こう」


 「ああ」



 私達は、全員で………………扉に手をかけた。




 *  *  *




 扉の向こうは、外だった。遺跡の頂上。その上空に大きな石が2つ浮いていた。妙な形をしている。人1人分の大きさの石。


 そして、その真ん中に。



 女____2代目龍神・アリアドネがいた。


『____決まりましたか?龍神の意識を消すか、契約者の命を喰らうか』



 「その前に___教えろ。

 私が龍神になったら、初代龍神を完全に消せるのかを」



 アルティアは先程と打って変わって力強く聞いた。アリアドネはふ、とまた笑う。



『初代龍神様の意識は不滅です。龍神の魂を奪い、縛り、生き長らえる……………選ばれし龍神の魂を蝕み、契約者の器で死神と闇の精霊を受け止める。

 現龍神は心が強く、また5000年しか経ってませんので初代龍神様は苦戦していらっしゃるけれど、時間の問題ですね』



 「………………………」



 どうやら、私が関わっていたガーランドは、ちゃんとガーランドだったようだ。そこだけは安心した。


 アリアドネは続ける。


『初代龍神様は人間への罰。人間の罰が消えることなどない。…………永遠に』



 「永遠に、って………………」




『人間は生きているだけで罪深いのです。欲が深く愚かしく…………醜い生き物。初代龍神様はいつだってその全てを消し去ってしまいたいのです。


 その為により強い龍神を好む。より強い穢らわしい器を望む。…………永遠に、不変な存在……………次代の龍神の魂さえも飲み込み全てを自分のものへ………契約者の魂は塵と消え、輪廻転生の輪からはずされます』


 「これでは……………龍神様がその初代龍神から解放される時はないのですか!契約者は輪廻転生さえも…………希望すら与えないのですか!」



『与えません。人間如きに神が慈悲を与えるわけがないでしょう?』



 「ッ、ふざけ『巫山戯るな!』__!」



 私が前に出ようとする前に、再び思いが残像を生み出した。剣を持ったダーインスレイヴだ。












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